行政書士中村和夫の独り言

外国人雇用・採用コンサルティング、渉外戸籍、入管手続等を専門とする26年目の国際派行政書士が好き勝手につぶやいています!

数字に弱い行政書士にはご用心を?(シリーズ第6回)

2007-07-12 12:33:35 | 行政書士のお仕事

 仕事がら、クライアントの決算書、事業計画書を精査する機会が多いのです。えっ?行政書士が、決算書や事業計画書を精査?と思った方! おそらく行政書士に仕事をご依頼されたことのない方であろうと思います。

 例えば、ある企業が外国人のシステム・エンジニアと契約して、日本に来て貰いたいとの相談を受けた場合、その企業の貸借対照表、損益計算書は必ず見せて頂きます。特に、決算書のうち、売上と人件費の項目については、まずチェックします。それは、その企業に外国人エンジニアを雇用できるだけの売上があるのか、その売上は一過性のものでないのか、そして、その企業に人件費の余裕はあるのか、等々・・・です。設立したばかりの会社で、決算を迎える前であれば、担当税理士さんに、直近数ヶ月分の月次試算表を出して頂くこともあります。

 また、エスニック料理のコックをしていた外国人の方が、独立して自分の店を持ちたいというようなとき、事業計画書の作成をお手伝いします。例えば、開業費や宣伝費を検討して貰います。次に、基本メニュー構成から、1ヶ月の売上の中身の詳細を予測して貰い、それに伴う材料費や店舗賃料・アルバイト人件費・広告費などの諸経費を計算・作成して貰います。そして、最低でも、1年分の売上、諸経費の見通しを立てて貰います。それで出来上がった事業計画書を、投資経営という在留資格の変更申請の添付資料として入国管理局に提出します。

 事業計画書とは、その投資事業の設計図です。確かに、ビジネスはセンスですから、事業計画が立派であるからといって必ずしも成功する訳ではありません。しかし、綿密な計画があるということは、事業として、売上、諸経費等にそれなりの根拠を積み上げて検討している訳ですから、その綿密な計画の下で始めた事業は、失敗するケースが少ないのは当然です。だから、事業の安定性、継続性がこの計画書で疎明できるのです。場合によっては、この事業計画書で公的資金の融資を受けることも可能な場合があります。

 一般的な許認可のほとんどは、申請企業の財務内容に対して、色々な規制や基準が設けられています。例えば、旅行会社などは、一般の旅行者からツアー代金を先に預かるわけですから、経営上危ない企業に、行政庁である国土交通省や都道府県は、こういった旅行業者に登録をさせることはできないのです。仮に、登録業者による被害が多発すれば、行政庁は、無作為の場合を含めて損害賠償請求されかねないので、それなりの財務・経営基準を設けています。

 ある、旅行会社さんの場合、更新の相談に見えられ、決算書を拝見したところ、前年の赤字で、基準資産(計算式があります)が割り込んでいる為に、増資しないとクリアーできない旨をアドバイスし、即刻増資して頂いたケースもあります。

 確かに、法律に基づく事実証明書等(遺産分割協議書、契約書、同意書、議事録など)の文書を作成する場合には、経営・会計知識が必要ないこともありましょう。しかし、企業買収に関わる契約書の作成には資産、負債に関する事前の取り決めは最も重要なポイントであるはずです。また、企業経営者の相続確定の際に、その会社に資産が多いのか、或いは、負債が多いのかによって、相続すべきなのか、或いは、相続を放棄すべきかのアドバイスは異なってくることになります。

 もし、「わたくし、数字が苦手なもんで・・・」と云う、ご同業がいたら、皆さん要注意ですぞ!

コメント (6)
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