文学に描かれている温泉は結構あって、その温泉地に行って、文学碑を見て初めて知るようなこともしばしばです。文学の舞台に温泉が適しているのか、それとも文学者が温泉を愛するためなのか...。でも、温泉地で文学の場面を想像してみるというのも楽しいことなのです。
特に、近代文学でその作品が書かれた当時の状況をよくとどめている時には、自分が入っている温泉の様子と作品の一説がオーバーラップしてとても印象深いものです。本や案内などで見つけた温泉も含めて、近代文学に描かれた温泉をいろいろと訪ねてみたいものです。
〇近代文学に描かれたお勧めの温泉
(1)下風呂温泉「長谷旅館」(青森県下北郡風間浦村)――井上靖著小説「海峡」
北東北旅行の途中、下北半島へ行き、下風呂温泉に至りました。国道279号左手には、津軽海峡が広がり、今日は北海道も望めます。温泉街は国道から一本山側に入った旧道沿いに並んでいました。その、細長い町並みの、大畑寄りに、下風呂温泉のバス停があり、その前が「カクチョウ長谷旅館」です。屋号が記号のように長の字が四角で囲まれ、続いて長谷旅館と書かれていました。創業は明治4年(1871)とのことで、表は改装されていますが、玄関を入ると木造3階建の古いたたずまいで、昭和33年(1958)3月、井上靖が、逗留して小説「海峡」を書いた当時のままです。女将に案内を乞うと、入浴のみも可能とのことなので、さっそく入れさせてもらうことにしました。井上靖が宿泊した部屋はどこだったかを訪ねてみると、2階の参号室とのことで、快く見学させてもらうことができました。当時の調度のままにしてあり、窓からは津軽海峡が望めます。ただし、昔は、窓下に国道は走ってなく、護岸工事も施されていなかったので、そのまま海に連なっていたとのことですが...。それでも、当時の雰囲気がよく伝わってきて、井上靖は、どんな感じで机に向かっていたのだろうか、どうやって海峡を眺めていたのだろうかと想像をたくましくしてみました。その後、階下の浴槽に浸かったのですが、硫黄の臭いが立ちこめ、濁った熱めのお湯がとうとうと注ぎ込まれ、硫黄分が堆積していました。躯の内部から硫黄泉が滲み込んでくるそんな感じが実体験できました。湯に入りながら、小説の場面を思い浮かべ、追想してみるのも面白いものです。しかし、ほんとうに熱い湯で、長くは浸かっていられませんでしたが...。小説の執筆当時の状況を感じさせてくれる旅館は、そう多くはありません。そういう意味で、とても貴重な体験をしたと、女将に感謝して、下風呂温泉を後にして、恐山へと向かいました。
(2)鉛温泉「藤三旅館」(岩手県花巻市)――田宮虎彦著小説「銀心中」
ゴールデンウィークに2泊3日の秋田・岩手の旅に出て、鉛温泉へ立ち寄りました。ここは、花巻温泉郷の奥にある一軒宿の温泉で、開湯は今から約500年前とのこて。ここの温泉主・藤井家の遠祖が木こりをしているとき、一匹の白猿が桂の木の根本から湧出する泉で手足の傷を癒しているのを見て、温泉の発見につながったといいます。とても古い温泉で、建物も木造3階建の堂々たるもので、豊沢川の渓谷に沿い、高倉山の山容が美しい景観の地にあります。この温泉は田宮虎彦の小説『銀心中』の舞台となったことで知られていますが、その一説にあるのが、白猿の湯のことで、古めかしい湯治部の階段を下りた地下にあり、1階まで吹き抜けになっています。楕円形をした洗面器状の浴槽の深さは1.25mもあり、小柄な人は立っても首まで浸かってしまいそうです。立ったままの姿勢で入浴すると血液循環を促進させ、体機能を活性化すると言われています。ここの湯は引湯ではなく、浴槽の下から天然に適温の温泉が湧きだしているのです。男女混浴で脱衣所も浴場の中にあってまる見え、しかし、そんなことも気にならないほど不思議な雰囲気が漂っていて、おおらかに湯に浸かることができます。立ち泳ぎをしながら、浴槽内を移動する感じはまるでプールのようです。別に男女別の浴室も用意さ れていますが、やはり、名物のこの浴槽に入りたいものです。
(3)畑毛温泉「清琴楼」(栃木県那須郡塩原町)――尾崎紅葉著小説「金色夜叉」
塩原温泉郷めぐりで泊まったのは、塩原温泉郷の中の畑下温泉にある「清琴楼」という老舗旅館で、以前から泊まってみたかった温泉旅館の一つだったんです。というのも、明治の文豪、尾崎紅葉の「金色夜叉」に書かれていたのを読んだからです。この名文の中に、箒川沿いの自然豊かな宿の風景が目に浮かぶように感じたのです。実際に、尾崎紅葉は、1899年(明治32)6月上旬から1ヶ月余り逗留したとのことです。当時は、「佐野屋」という旅館名で、時の人気小説家尾崎紅葉が長期滞在していたにもかかわらず、旅館の方は全く気が付かなかったとのこと。ところが、読売新聞紙上に「金色夜叉」の続続編として掲載されたのを読んだ宿の主人が、これは自分の旅館のことにちがいないと、後で問い合わせてわかったという逸話が残されています。そして、旅館名も小説に出てくる「清琴楼」に変えたとか...。現在、本館は明治時代に建てられたままで残されており、尾崎紅葉の泊まった部屋が「紅葉の間」として保存され、見学できるのです。調度品や資料なども当時のままの物が展示されています。残念ながら、宿泊できるのは、棟続きの別館や新館の方だけで、私は、昭和初期に立てられた木造3階建の別館の方へ泊まりました。こちらもそうとうレトロな感じでしたが、窓から箒川の眺めは、「金色夜叉」の文章を彷彿とさせるものでとても気に入りました。せせらぎが聞こえ、川風が入ってきてとても気分がいいんです。建物の内部はきれいにしてあって、従業員のもてなしも良くてびっくりしました。ポットのお湯なんか何度も代えに来るし、布団の敷き方のとてもていねいなんですね。そして、露天風呂がとても良かった。前を流れる箒川の中州にあって、橋を渡っていきます。とても開放的で、見晴らしも良く、源泉掛け流しになっていて、すごく気持ちよく入浴できました。内湯もレトロな感じで、気に入りました。食事は、部屋へ運んでくれて、ズワイガニの足、ゆば、茹で豚、刺身、天ぷら、茶碗蒸しなど何品も出てきて、美味しくいただきました。後は、プロ野球の巨人阪神戦を見ながら、気持ちよく寝てしまいました。翌日は、カメラ片手に散歩しながら、「もみじの湯」という川沿いの露天風呂に入ったんです。箒川沿いにある開放的な混浴の露天風呂ですが、誰も入っていなくって、独占状態で、湯を楽しみました。戻ってきて朝食後、宿を立って、回顧の吊り橋の方へ向かいました。
(4)中棚温泉「中棚荘」(長野県小諸市)――島崎藤村著随筆「千曲川のスケッチ」
長野県の佐久地方への1泊2日の旅に出て、その途中、中棚温泉に立ち寄りました。ここは、小諸城跡から下った、千曲川を見下ろす丘の中腹にあり、1898年(明治31)創業の「中棚荘」だけの1軒宿の温泉です。そして、島崎藤村ゆかりの温泉として、広く知られていて、以前から行ってみたかったところでもありました。藤村は、1899年(明治32)4月、旧師木村熊二の招きで小諸義塾へ赴任し、英語・国語教師として、1905年(明治38)3月に退職するまで、6年間この地で過ごしました。その間、たびたびこの中棚温泉を訪れています。その時の様子が、随筆『千曲川のスケッチ』の中の「中棚」に描かれています。また、『千曲川旅情の詩』の一節「千曲川いざよう波の 岸近き宿にのぼりて 濁り酒濁れる飲みて……」の岸近き宿は、この「中棚荘」を詠ったものと言われています。現在でも、大正時代の客室が現存し、昔ながらの湯宿の情景を思い起こさせてくれます。尚、当初は温度の低い鉱泉でしたが、近年600m掘削して、新源泉の湧出に成功し、露天風呂も造られています。10月~4月は、内湯にリンゴが浮かべられ、「初恋リンゴ風呂」として親しまれています。ぷかぷかと浮かぶたくさんのリンゴからは、とてもいい香りが漂っていましたし、露天風呂からは、千曲川や北アルプスまで眺望でき、とても気分良く入浴できる温泉です。
(5)湯ヶ野温泉「福田家・共同浴場」(静岡県賀茂郡河津町)――川端康成著小説「伊豆の踊子」
湯ヶ野温泉には3度目の訪問になりましたが、昔ながらの風情を保った温泉街が残されています。特に、河津川の渓谷沿いは名作『伊豆の踊子』の情景を思い浮かべられるような状態のままです。今回は、「川端康成生誕100年祭」の行事の一つとして、“福田家旅館”が無料見学できました。最初に、女将にたのんで、入浴料金を払って、あの川端康成が好んで入ったという榧風呂に入浴させてもらいました。脱衣場から階段を下りた地階のような所に正方形の榧製の浴槽があり、湯がコンコンと注ぎ込まれています。静かに湯に浸かっていると、河津川のせせらぎの音がよく聞こえ、とても心地よいのです。閉ざされた空間の中で、心身をリラックスさせるにはもってこいだと思い、思索を重んじる小説家に好まれたのが良くわかる気がしました。湯から上がって、旅館内を見学させてもらいましたが、川端康成が『伊豆の踊子』を執筆した当時と変わらない建物が残されていて、2階にその泊まった部屋がそのままの姿であるのです。そこからは、河津川の渓谷が一望でき、対岸の共同浴場がよく見えます。1階には、いろいろな資料が展示してあり、今までに何度も映画化されたおりの主演者のパネルも見ることが出来ました。玄関前には、伊豆の踊り子の像があり、旅館の並びには、文学碑も建てられていて、まさに“伊豆の踊子”の宿といった風情で、とても感慨深い見学となりました。
(6)城崎温泉「御所の湯」(兵庫県城崎郡城崎町)――志賀直哉著小説「暗夜行路」
朝、家を出るまでは、どこに行くか決まっていなかったのですが、とりあえず、駅で兵庫県の城崎温泉までの切符を買い、志賀直哉の「暗夜行路」をたどって旅をすることにしました。東海道新幹線で京都駅まで出て、JR山陰本線の特急「きのさき」に乗り換えて、城崎温泉へ直行しました。駅前の観光案内所で紹介してもらって、1泊2食付き9,770円(込込)で、「なるや」に泊まることにしました。宿に向かう途中、「城崎町文芸館」で、志賀直哉をはじめ、多くの文人墨客の足跡について知見を新たにしました。その後、15時にチェックインしましたが、温泉街の中心、大谿川沿いにある5室しかない小さな和風旅館で、家庭的雰囲気が漂い、もてなしも良く、とても気に入りました。荷物を置くと、最初に大師山へロープウエイで上り、温泉寺を見学してから、外湯巡りへと向かいました。まずは、『暗夜行路』の主人公時任謙作の気分で「御所の湯」へ入浴、続いて、駅まで戻って、2000年7月にオープンした駅舎温泉「さとの湯」へ入浴してから宿へと戻りました。夕食には松葉ガニも出て、おいしくいただき、酒もすすんで、心地よく腹を満たしました。翌日は、JR山陰本線の普通列車に乗り、香住駅で下りて、これも時任謙作と同じように、大乗寺で丸山応挙を鑑賞しました。
(7)道後温泉「道後温泉本館」(愛媛県松山市)――夏目漱石著小説「坊ちゃん」
四国一周旅行の途中、JR予讃本線松山駅前に1泊朝食付3,000円という安宿をとり、伊予鉄道の路面電車で道後温泉へと向かいました。こういうので、ゴトゴトと揺られての温泉行きも情緒があっていいものです。終点で下りて、温泉街を5分も歩くと木造三層楼の堂々とした建物が見えてきました。それが、「坊ちゃん」も入ったという道後温泉本館です。明治27年(1894)の建造で、小説が書かれた頃はまだ新しかったのですが、今でも当時のままの建物で風格があり、黒光りしています。坊ちゃんのように上等の高い料金を払うことなく、一番安い料金で“神の湯”へ入湯しました。見事な湯釜があり、山部赤人の長歌が刻み込まれています。浴槽も広々としていて、浴客の少ないのを見計らって、坊ちゃんのように泳いでみましたが、少しだけにとどめ、他の客の迷惑にならないように遠慮しました。でも、当時のままに残されていることで、小説の場面を彷彿とさせることができるところなのです。3階には夏目漱石の愛用した坊ちゃんの間が残され、自由に見ることも可能ですし、観覧料を払えば、皇室専用浴室の又新殿も見学することが出来ます。
☆近代文学に描かれた温泉一覧
<北海道>
・朝日温泉「朝日温泉旅館」(北海道岩内郡岩内町) 水上勉著小説「飢餓海峡」
<東北>
・湯野川温泉「共同浴場」(青森県下北郡川内町) 水上勉著小説「飢餓海峡」
・下風呂温泉「長谷旅館」(青森県下北郡風間浦村) 井上靖著小説「海峡」
・浅虫温泉 浅虫温泉街(青森県青森市) 太宰治著小説「思い出」
・浅虫温泉 浅虫温泉街(青森県青森市) 太宰治著小説「津軽」
・嶽温泉 嶽温泉街(青森県弘前市) 石坂洋次郎著小説「草を刈る娘」
・大鰐温泉 大鰐温泉街(青森県南津軽郡大鰐町) 太宰治著小説「津軽」
・鉛温泉「藤三旅館」(岩手県花巻市) 田宮虎彦著小説「銀心中」
・岩手湯本温泉 ? (岩手県和賀郡西和賀町) 正岡子規著紀行文「はて知らずの記」
・湯田川温泉「湯田川温泉街・共同浴場」(山形県鶴岡市) 横光利一著小説「夜の靴」
・温海温泉「瀧の屋旅館」(山形県鶴岡市) 横光利一著小説「夜の靴」
・作並温泉「岩松旅館」(宮城県仙台市青葉区)正岡子規著紀行文「はて知らずの記」
・飯坂温泉 飯坂温泉街(福島県福島市) 正岡子規著紀行文「はて知らずの記」
<関東>
・畑毛温泉「清琴楼」(栃木県那須郡塩原町) 尾崎紅葉著小説「金色夜叉」
・湯宿温泉「金田屋旅館」(群馬県利根郡みなかみ町) 若山牧水著紀行文「みなかみ紀行」
・草津温泉「一井旅館」(群馬県吾妻郡草津町) 若山牧水著紀行文「みなかみ紀行」
・草津温泉「一井旅館」(群馬県吾妻郡草津町) 志賀直哉著小説「矢島柳堂」
・四万温泉「田村旅館」 (群馬県吾妻郡中之条町) 若山牧水著紀行文「みなかみ紀行」
・花敷温泉「関晴館」 (群馬県吾妻郡中之条町) 若山牧水著紀行文「みなかみ紀行」
・法師温泉「長寿館」 (群馬県利根郡みなかみ町) 若山牧水著紀行文「みなかみ紀行」
・伊香保温泉「金太夫」(群馬県北群馬郡伊香保町) 林芙美子著小説「浮雲」
・伊香保温泉「千明仁泉亭」(群馬県北群馬郡伊香保町) 徳富蘆花著小説「不如帰」
・姥子温泉「秀明館」(神奈川県箱根町) 夏目漱石著小説「吾輩は猫である」
・塔ノ沢温泉「環翠楼」(神奈川県足柄下郡箱根町)島崎藤村著小説「春」
・湯河原温泉「天野屋旅館」(神奈川県足柄下郡湯河原町) 夏目漱石著小説「明暗」
<中部>
・松之山温泉 松之山温泉街(新潟県十日町市) 坂口安吾著小説「黒谷村」
・松之山温泉 松之山温泉街(新潟県十日町市) 坂口安吾著小説「逃げたい心」
・越後湯沢温泉「高半旅館」(新潟県南魚沼郡湯沢町) 川端康成著小説「雪国」
・山田温泉「藤井荘」(長野県上高井郡高山村) 森鴎外著紀行文「みちの記」
・戸倉上山田温泉「笹屋ホテル」(長野県埴科郡上山田町) 志賀直哉著小説「豊年虫」
・田沢温泉「ますや旅館」(長野県小県郡青木村) 島崎藤村著随筆「千曲川のスケッチ」
・中棚温泉「中棚荘」(長野県小諸市) 島崎藤村著随筆「千曲川のスケッチ」
・崖ノ湯温泉「山上旅館」(長野県松本市) 岡田喜秋著紀行文「山村を歩く」
・深沢温泉「深沢温泉旅館」(山梨県北杜市) 岡田喜秋著紀行文「山村を歩く」
・熱海温泉 熱海温泉街(静岡県熱海市) 尾崎紅葉著小説「金色夜叉」
・湯ヶ島温泉「共同浴場」(静岡県伊豆市) 梶井基次郎著小説「温泉」
・湯ヶ島温泉「西平共同浴場」(静岡県伊豆市) 井上靖著小説「しろばんば」
・湯ヶ野温泉「福田家・共同浴場」(静岡県賀茂郡河津町) 川端康成著小説「伊豆の踊子」
・新穂高温泉「中崎山荘」(岐阜県高山市) 井上靖著小説「氷壁」
・湯谷温泉「湯谷ホテル(廃業)」(愛知県新城市) 若山牧水著紀行文「鳳来寺紀行」
<近畿>
・龍神温泉 龍神温泉街(和歌山県田辺市) 有吉佐和子著小説「日高川」
・城崎温泉 城崎温泉街」(兵庫県城崎郡城崎町) 志賀直哉著小説「城崎にて」
・城崎温泉「三木屋・御所の湯」(兵庫県城崎郡城崎町) 志賀直哉著小説「暗夜行路」
・城崎温泉 城崎温泉街(兵庫県城崎郡城崎町) 島崎藤村著紀行文「山陰土産」
<中国>
・岩井温泉「明石屋」(鳥取県岩美郡岩美町) 島崎藤村著紀行文「山陰土産」
・三朝温泉「依山楼岩崎」(鳥取県東伯郡三朝町) 島崎藤村著紀行文「山陰土産」
・奥津温泉 奥津温泉街(岡山県苫田郡奥津町) 藤原審爾著小説「秋津温泉」
<四国>
・道後温泉「道後温泉本館」(愛媛県松山市) 夏目漱石著小説「坊ちゃん」
<九州>
・筋湯温泉「共同浴場」(大分県熊玖珠郡九重町) 川端康成著小説「波千鳥」
・法華院温泉「法華院温泉山荘」(大分県直入郡久住町) 川端康成著小説「波千鳥」
・小天温泉「那古井館」(熊本県玉名郡天水町) 夏目漱石著小説「草枕」
・内牧温泉「山王閣」(熊本県阿蘇市) 夏目漱石著小説「二百十日」
・垂玉温泉「山口旅館」(熊本県阿蘇郡南阿蘇村) 与謝野鉄幹他4名著紀行文「五足の靴」
・栃木温泉「小山旅館」(熊本県阿蘇郡南阿蘇村) 与謝野鉄幹他4名著紀行文「五足の靴」
特に、近代文学でその作品が書かれた当時の状況をよくとどめている時には、自分が入っている温泉の様子と作品の一説がオーバーラップしてとても印象深いものです。本や案内などで見つけた温泉も含めて、近代文学に描かれた温泉をいろいろと訪ねてみたいものです。
〇近代文学に描かれたお勧めの温泉
(1)下風呂温泉「長谷旅館」(青森県下北郡風間浦村)――井上靖著小説「海峡」
北東北旅行の途中、下北半島へ行き、下風呂温泉に至りました。国道279号左手には、津軽海峡が広がり、今日は北海道も望めます。温泉街は国道から一本山側に入った旧道沿いに並んでいました。その、細長い町並みの、大畑寄りに、下風呂温泉のバス停があり、その前が「カクチョウ長谷旅館」です。屋号が記号のように長の字が四角で囲まれ、続いて長谷旅館と書かれていました。創業は明治4年(1871)とのことで、表は改装されていますが、玄関を入ると木造3階建の古いたたずまいで、昭和33年(1958)3月、井上靖が、逗留して小説「海峡」を書いた当時のままです。女将に案内を乞うと、入浴のみも可能とのことなので、さっそく入れさせてもらうことにしました。井上靖が宿泊した部屋はどこだったかを訪ねてみると、2階の参号室とのことで、快く見学させてもらうことができました。当時の調度のままにしてあり、窓からは津軽海峡が望めます。ただし、昔は、窓下に国道は走ってなく、護岸工事も施されていなかったので、そのまま海に連なっていたとのことですが...。それでも、当時の雰囲気がよく伝わってきて、井上靖は、どんな感じで机に向かっていたのだろうか、どうやって海峡を眺めていたのだろうかと想像をたくましくしてみました。その後、階下の浴槽に浸かったのですが、硫黄の臭いが立ちこめ、濁った熱めのお湯がとうとうと注ぎ込まれ、硫黄分が堆積していました。躯の内部から硫黄泉が滲み込んでくるそんな感じが実体験できました。湯に入りながら、小説の場面を思い浮かべ、追想してみるのも面白いものです。しかし、ほんとうに熱い湯で、長くは浸かっていられませんでしたが...。小説の執筆当時の状況を感じさせてくれる旅館は、そう多くはありません。そういう意味で、とても貴重な体験をしたと、女将に感謝して、下風呂温泉を後にして、恐山へと向かいました。
(2)鉛温泉「藤三旅館」(岩手県花巻市)――田宮虎彦著小説「銀心中」
ゴールデンウィークに2泊3日の秋田・岩手の旅に出て、鉛温泉へ立ち寄りました。ここは、花巻温泉郷の奥にある一軒宿の温泉で、開湯は今から約500年前とのこて。ここの温泉主・藤井家の遠祖が木こりをしているとき、一匹の白猿が桂の木の根本から湧出する泉で手足の傷を癒しているのを見て、温泉の発見につながったといいます。とても古い温泉で、建物も木造3階建の堂々たるもので、豊沢川の渓谷に沿い、高倉山の山容が美しい景観の地にあります。この温泉は田宮虎彦の小説『銀心中』の舞台となったことで知られていますが、その一説にあるのが、白猿の湯のことで、古めかしい湯治部の階段を下りた地下にあり、1階まで吹き抜けになっています。楕円形をした洗面器状の浴槽の深さは1.25mもあり、小柄な人は立っても首まで浸かってしまいそうです。立ったままの姿勢で入浴すると血液循環を促進させ、体機能を活性化すると言われています。ここの湯は引湯ではなく、浴槽の下から天然に適温の温泉が湧きだしているのです。男女混浴で脱衣所も浴場の中にあってまる見え、しかし、そんなことも気にならないほど不思議な雰囲気が漂っていて、おおらかに湯に浸かることができます。立ち泳ぎをしながら、浴槽内を移動する感じはまるでプールのようです。別に男女別の浴室も用意さ れていますが、やはり、名物のこの浴槽に入りたいものです。
(3)畑毛温泉「清琴楼」(栃木県那須郡塩原町)――尾崎紅葉著小説「金色夜叉」
塩原温泉郷めぐりで泊まったのは、塩原温泉郷の中の畑下温泉にある「清琴楼」という老舗旅館で、以前から泊まってみたかった温泉旅館の一つだったんです。というのも、明治の文豪、尾崎紅葉の「金色夜叉」に書かれていたのを読んだからです。この名文の中に、箒川沿いの自然豊かな宿の風景が目に浮かぶように感じたのです。実際に、尾崎紅葉は、1899年(明治32)6月上旬から1ヶ月余り逗留したとのことです。当時は、「佐野屋」という旅館名で、時の人気小説家尾崎紅葉が長期滞在していたにもかかわらず、旅館の方は全く気が付かなかったとのこと。ところが、読売新聞紙上に「金色夜叉」の続続編として掲載されたのを読んだ宿の主人が、これは自分の旅館のことにちがいないと、後で問い合わせてわかったという逸話が残されています。そして、旅館名も小説に出てくる「清琴楼」に変えたとか...。現在、本館は明治時代に建てられたままで残されており、尾崎紅葉の泊まった部屋が「紅葉の間」として保存され、見学できるのです。調度品や資料なども当時のままの物が展示されています。残念ながら、宿泊できるのは、棟続きの別館や新館の方だけで、私は、昭和初期に立てられた木造3階建の別館の方へ泊まりました。こちらもそうとうレトロな感じでしたが、窓から箒川の眺めは、「金色夜叉」の文章を彷彿とさせるものでとても気に入りました。せせらぎが聞こえ、川風が入ってきてとても気分がいいんです。建物の内部はきれいにしてあって、従業員のもてなしも良くてびっくりしました。ポットのお湯なんか何度も代えに来るし、布団の敷き方のとてもていねいなんですね。そして、露天風呂がとても良かった。前を流れる箒川の中州にあって、橋を渡っていきます。とても開放的で、見晴らしも良く、源泉掛け流しになっていて、すごく気持ちよく入浴できました。内湯もレトロな感じで、気に入りました。食事は、部屋へ運んでくれて、ズワイガニの足、ゆば、茹で豚、刺身、天ぷら、茶碗蒸しなど何品も出てきて、美味しくいただきました。後は、プロ野球の巨人阪神戦を見ながら、気持ちよく寝てしまいました。翌日は、カメラ片手に散歩しながら、「もみじの湯」という川沿いの露天風呂に入ったんです。箒川沿いにある開放的な混浴の露天風呂ですが、誰も入っていなくって、独占状態で、湯を楽しみました。戻ってきて朝食後、宿を立って、回顧の吊り橋の方へ向かいました。
(4)中棚温泉「中棚荘」(長野県小諸市)――島崎藤村著随筆「千曲川のスケッチ」
長野県の佐久地方への1泊2日の旅に出て、その途中、中棚温泉に立ち寄りました。ここは、小諸城跡から下った、千曲川を見下ろす丘の中腹にあり、1898年(明治31)創業の「中棚荘」だけの1軒宿の温泉です。そして、島崎藤村ゆかりの温泉として、広く知られていて、以前から行ってみたかったところでもありました。藤村は、1899年(明治32)4月、旧師木村熊二の招きで小諸義塾へ赴任し、英語・国語教師として、1905年(明治38)3月に退職するまで、6年間この地で過ごしました。その間、たびたびこの中棚温泉を訪れています。その時の様子が、随筆『千曲川のスケッチ』の中の「中棚」に描かれています。また、『千曲川旅情の詩』の一節「千曲川いざよう波の 岸近き宿にのぼりて 濁り酒濁れる飲みて……」の岸近き宿は、この「中棚荘」を詠ったものと言われています。現在でも、大正時代の客室が現存し、昔ながらの湯宿の情景を思い起こさせてくれます。尚、当初は温度の低い鉱泉でしたが、近年600m掘削して、新源泉の湧出に成功し、露天風呂も造られています。10月~4月は、内湯にリンゴが浮かべられ、「初恋リンゴ風呂」として親しまれています。ぷかぷかと浮かぶたくさんのリンゴからは、とてもいい香りが漂っていましたし、露天風呂からは、千曲川や北アルプスまで眺望でき、とても気分良く入浴できる温泉です。
(5)湯ヶ野温泉「福田家・共同浴場」(静岡県賀茂郡河津町)――川端康成著小説「伊豆の踊子」
湯ヶ野温泉には3度目の訪問になりましたが、昔ながらの風情を保った温泉街が残されています。特に、河津川の渓谷沿いは名作『伊豆の踊子』の情景を思い浮かべられるような状態のままです。今回は、「川端康成生誕100年祭」の行事の一つとして、“福田家旅館”が無料見学できました。最初に、女将にたのんで、入浴料金を払って、あの川端康成が好んで入ったという榧風呂に入浴させてもらいました。脱衣場から階段を下りた地階のような所に正方形の榧製の浴槽があり、湯がコンコンと注ぎ込まれています。静かに湯に浸かっていると、河津川のせせらぎの音がよく聞こえ、とても心地よいのです。閉ざされた空間の中で、心身をリラックスさせるにはもってこいだと思い、思索を重んじる小説家に好まれたのが良くわかる気がしました。湯から上がって、旅館内を見学させてもらいましたが、川端康成が『伊豆の踊子』を執筆した当時と変わらない建物が残されていて、2階にその泊まった部屋がそのままの姿であるのです。そこからは、河津川の渓谷が一望でき、対岸の共同浴場がよく見えます。1階には、いろいろな資料が展示してあり、今までに何度も映画化されたおりの主演者のパネルも見ることが出来ました。玄関前には、伊豆の踊り子の像があり、旅館の並びには、文学碑も建てられていて、まさに“伊豆の踊子”の宿といった風情で、とても感慨深い見学となりました。
(6)城崎温泉「御所の湯」(兵庫県城崎郡城崎町)――志賀直哉著小説「暗夜行路」
朝、家を出るまでは、どこに行くか決まっていなかったのですが、とりあえず、駅で兵庫県の城崎温泉までの切符を買い、志賀直哉の「暗夜行路」をたどって旅をすることにしました。東海道新幹線で京都駅まで出て、JR山陰本線の特急「きのさき」に乗り換えて、城崎温泉へ直行しました。駅前の観光案内所で紹介してもらって、1泊2食付き9,770円(込込)で、「なるや」に泊まることにしました。宿に向かう途中、「城崎町文芸館」で、志賀直哉をはじめ、多くの文人墨客の足跡について知見を新たにしました。その後、15時にチェックインしましたが、温泉街の中心、大谿川沿いにある5室しかない小さな和風旅館で、家庭的雰囲気が漂い、もてなしも良く、とても気に入りました。荷物を置くと、最初に大師山へロープウエイで上り、温泉寺を見学してから、外湯巡りへと向かいました。まずは、『暗夜行路』の主人公時任謙作の気分で「御所の湯」へ入浴、続いて、駅まで戻って、2000年7月にオープンした駅舎温泉「さとの湯」へ入浴してから宿へと戻りました。夕食には松葉ガニも出て、おいしくいただき、酒もすすんで、心地よく腹を満たしました。翌日は、JR山陰本線の普通列車に乗り、香住駅で下りて、これも時任謙作と同じように、大乗寺で丸山応挙を鑑賞しました。
(7)道後温泉「道後温泉本館」(愛媛県松山市)――夏目漱石著小説「坊ちゃん」
四国一周旅行の途中、JR予讃本線松山駅前に1泊朝食付3,000円という安宿をとり、伊予鉄道の路面電車で道後温泉へと向かいました。こういうので、ゴトゴトと揺られての温泉行きも情緒があっていいものです。終点で下りて、温泉街を5分も歩くと木造三層楼の堂々とした建物が見えてきました。それが、「坊ちゃん」も入ったという道後温泉本館です。明治27年(1894)の建造で、小説が書かれた頃はまだ新しかったのですが、今でも当時のままの建物で風格があり、黒光りしています。坊ちゃんのように上等の高い料金を払うことなく、一番安い料金で“神の湯”へ入湯しました。見事な湯釜があり、山部赤人の長歌が刻み込まれています。浴槽も広々としていて、浴客の少ないのを見計らって、坊ちゃんのように泳いでみましたが、少しだけにとどめ、他の客の迷惑にならないように遠慮しました。でも、当時のままに残されていることで、小説の場面を彷彿とさせることができるところなのです。3階には夏目漱石の愛用した坊ちゃんの間が残され、自由に見ることも可能ですし、観覧料を払えば、皇室専用浴室の又新殿も見学することが出来ます。
☆近代文学に描かれた温泉一覧
<北海道>
・朝日温泉「朝日温泉旅館」(北海道岩内郡岩内町) 水上勉著小説「飢餓海峡」
<東北>
・湯野川温泉「共同浴場」(青森県下北郡川内町) 水上勉著小説「飢餓海峡」
・下風呂温泉「長谷旅館」(青森県下北郡風間浦村) 井上靖著小説「海峡」
・浅虫温泉 浅虫温泉街(青森県青森市) 太宰治著小説「思い出」
・浅虫温泉 浅虫温泉街(青森県青森市) 太宰治著小説「津軽」
・嶽温泉 嶽温泉街(青森県弘前市) 石坂洋次郎著小説「草を刈る娘」
・大鰐温泉 大鰐温泉街(青森県南津軽郡大鰐町) 太宰治著小説「津軽」
・鉛温泉「藤三旅館」(岩手県花巻市) 田宮虎彦著小説「銀心中」
・岩手湯本温泉 ? (岩手県和賀郡西和賀町) 正岡子規著紀行文「はて知らずの記」
・湯田川温泉「湯田川温泉街・共同浴場」(山形県鶴岡市) 横光利一著小説「夜の靴」
・温海温泉「瀧の屋旅館」(山形県鶴岡市) 横光利一著小説「夜の靴」
・作並温泉「岩松旅館」(宮城県仙台市青葉区)正岡子規著紀行文「はて知らずの記」
・飯坂温泉 飯坂温泉街(福島県福島市) 正岡子規著紀行文「はて知らずの記」
<関東>
・畑毛温泉「清琴楼」(栃木県那須郡塩原町) 尾崎紅葉著小説「金色夜叉」
・湯宿温泉「金田屋旅館」(群馬県利根郡みなかみ町) 若山牧水著紀行文「みなかみ紀行」
・草津温泉「一井旅館」(群馬県吾妻郡草津町) 若山牧水著紀行文「みなかみ紀行」
・草津温泉「一井旅館」(群馬県吾妻郡草津町) 志賀直哉著小説「矢島柳堂」
・四万温泉「田村旅館」 (群馬県吾妻郡中之条町) 若山牧水著紀行文「みなかみ紀行」
・花敷温泉「関晴館」 (群馬県吾妻郡中之条町) 若山牧水著紀行文「みなかみ紀行」
・法師温泉「長寿館」 (群馬県利根郡みなかみ町) 若山牧水著紀行文「みなかみ紀行」
・伊香保温泉「金太夫」(群馬県北群馬郡伊香保町) 林芙美子著小説「浮雲」
・伊香保温泉「千明仁泉亭」(群馬県北群馬郡伊香保町) 徳富蘆花著小説「不如帰」
・姥子温泉「秀明館」(神奈川県箱根町) 夏目漱石著小説「吾輩は猫である」
・塔ノ沢温泉「環翠楼」(神奈川県足柄下郡箱根町)島崎藤村著小説「春」
・湯河原温泉「天野屋旅館」(神奈川県足柄下郡湯河原町) 夏目漱石著小説「明暗」
<中部>
・松之山温泉 松之山温泉街(新潟県十日町市) 坂口安吾著小説「黒谷村」
・松之山温泉 松之山温泉街(新潟県十日町市) 坂口安吾著小説「逃げたい心」
・越後湯沢温泉「高半旅館」(新潟県南魚沼郡湯沢町) 川端康成著小説「雪国」
・山田温泉「藤井荘」(長野県上高井郡高山村) 森鴎外著紀行文「みちの記」
・戸倉上山田温泉「笹屋ホテル」(長野県埴科郡上山田町) 志賀直哉著小説「豊年虫」
・田沢温泉「ますや旅館」(長野県小県郡青木村) 島崎藤村著随筆「千曲川のスケッチ」
・中棚温泉「中棚荘」(長野県小諸市) 島崎藤村著随筆「千曲川のスケッチ」
・崖ノ湯温泉「山上旅館」(長野県松本市) 岡田喜秋著紀行文「山村を歩く」
・深沢温泉「深沢温泉旅館」(山梨県北杜市) 岡田喜秋著紀行文「山村を歩く」
・熱海温泉 熱海温泉街(静岡県熱海市) 尾崎紅葉著小説「金色夜叉」
・湯ヶ島温泉「共同浴場」(静岡県伊豆市) 梶井基次郎著小説「温泉」
・湯ヶ島温泉「西平共同浴場」(静岡県伊豆市) 井上靖著小説「しろばんば」
・湯ヶ野温泉「福田家・共同浴場」(静岡県賀茂郡河津町) 川端康成著小説「伊豆の踊子」
・新穂高温泉「中崎山荘」(岐阜県高山市) 井上靖著小説「氷壁」
・湯谷温泉「湯谷ホテル(廃業)」(愛知県新城市) 若山牧水著紀行文「鳳来寺紀行」
<近畿>
・龍神温泉 龍神温泉街(和歌山県田辺市) 有吉佐和子著小説「日高川」
・城崎温泉 城崎温泉街」(兵庫県城崎郡城崎町) 志賀直哉著小説「城崎にて」
・城崎温泉「三木屋・御所の湯」(兵庫県城崎郡城崎町) 志賀直哉著小説「暗夜行路」
・城崎温泉 城崎温泉街(兵庫県城崎郡城崎町) 島崎藤村著紀行文「山陰土産」
<中国>
・岩井温泉「明石屋」(鳥取県岩美郡岩美町) 島崎藤村著紀行文「山陰土産」
・三朝温泉「依山楼岩崎」(鳥取県東伯郡三朝町) 島崎藤村著紀行文「山陰土産」
・奥津温泉 奥津温泉街(岡山県苫田郡奥津町) 藤原審爾著小説「秋津温泉」
<四国>
・道後温泉「道後温泉本館」(愛媛県松山市) 夏目漱石著小説「坊ちゃん」
<九州>
・筋湯温泉「共同浴場」(大分県熊玖珠郡九重町) 川端康成著小説「波千鳥」
・法華院温泉「法華院温泉山荘」(大分県直入郡久住町) 川端康成著小説「波千鳥」
・小天温泉「那古井館」(熊本県玉名郡天水町) 夏目漱石著小説「草枕」
・内牧温泉「山王閣」(熊本県阿蘇市) 夏目漱石著小説「二百十日」
・垂玉温泉「山口旅館」(熊本県阿蘇郡南阿蘇村) 与謝野鉄幹他4名著紀行文「五足の靴」
・栃木温泉「小山旅館」(熊本県阿蘇郡南阿蘇村) 与謝野鉄幹他4名著紀行文「五足の靴」