ガウスの旅のブログ

学生時代から大の旅行好きで、日本中を旅して回りました。現在は岬と灯台、歴史的町並み等を巡りながら温泉を楽しんでいます。

旅の豆知識「ケーブルカー」

2017年09月10日 | 旅の豆知識
 旅行先では、いろいろな乗り物に乗ることがあると思いますが、山への急勾配を登るときに、ケーブルカーを利用したことがあるのではないでしょうか。急傾斜を上がっていくので、スリリングで、眺望もよかったりします。
 やはり旅先での感動を与えてくれるのは、眺望の良さによるものが大きいと思われますが、スリリングなわくわく感も大切です。そういう意味では、ドライブウェーを使って一気に山上に上がってしまうよりも、面白いのではないでしょうか。
 ケーブルカーも近年廃線に追い込まれるものもあったりして、全国で20数路線だけになってしまっていますが、旅先ではぜひ乗車してみたいものです。

〇「ケーブルカー」とは?
 山の急斜面に設けた軌道上を、鋼索(ケーブル)が取り付けられた車両を巻上機等で巻き上げて運転する鉄道で、鋼索鉄道(こうさくてつどう)ともいいます。車両に動力を積まないため、推進効率に優れているのが特徴でした。種類は、交走式(つるべ式)ていって、行き違い個所のみ複線のものと、循環式といって、すべて複線のものがあります。日本で、現存するのは交走式のみですが、1989年(平成元)の横浜博覧会で期間限定で用いられた横浜エスケイの「動くベンチ」が循環式でした。
 世界最初のケーブルカーは、1830年にスイスに登場しましたが、高い山の頂から美しい景色を見ようという観光目的のためでした。日本では、1918年(大正7)8月29日に、近畿日本鉄道の前身である大阪電気軌道の系列会社の生駒鋼索鉄道により、宝山寺への参拝客を見込んで、鳥居前駅~宝山寺駅間(宝山寺1号線)に建設されたものが最初で、路線距離は0.9km、高低差146m、最急勾配227‰でした。その後、大正時代末期から昭和時代初期にかけて全国各地に建設されましたが、太平洋戦争の戦局悪化に伴い、観光目的のものは大半が不要不急線に指定され、休止に追い込まれたのです。
 戦後復活したものもあり、観光ブームに乗って新設されたものもありましたが、近年、山上まで車道が建設され、自家用車で行けるようになると、乗客が減少して、廃線に追い込まれるところも出てきました。

☆「ケーブルカー」のお勧め

(1)高尾登山電鉄高尾鋼索線(東京都八王子市)
 高尾登山鉄道によって、高尾山薬王院への参拝客を見込んで、1927年(昭和2年)1月21日、清滝駅~高尾山駅間に設置・開業したものです。路線は、全長1,020m、最大勾配608‰(日本最高勾配)、高低差271mでした。太平洋戦争の戦局悪化に伴い、1944年(昭和19)2月11日より不要不急線として休止されましたが、戦後の1949年(昭和24)10月16日より運行を再開します。通称は“高尾登山ケーブル”と呼ばれ、「ケーブルカーの線路では日本一の急勾配」がキャッチフレーズとなっています。

(2)立山黒部貫光鋼索線(富山県新川郡立山町)
 立山黒部アルペンルートの中に、立山ケーブルカーと黒部ケーブルカーの2路線があります。立山駅~美女平駅間の立山ケーブルカー(全長1,366m、最大勾配560‰、高低差487m)は、1954年(昭和29年)8月13日に開業しました。また、黒部湖~黒部平間の黒部ケーブルカー(全長828m、最大勾配587‰、高低差373m)は、1969年(昭和44年)7月20日の開業で、全区間が地下トンネルを通っているのが特徴です。この立山黒部アルペンルートは、雄大な大自然を感じられるところで、ぜひ一度は訪れたいものです。

(3)比叡山鉄道比叡山鉄道線(滋賀県大津市)
 比叡山鉄道によって、比叡山延暦寺への参拝客を見込んで、1927年(昭和2年)3月15日に、坂本(現在のケーブル坂本)~叡山中堂(現在のケーブル延暦寺)間が開業したものです。路線は、全長2,025m(現在日本最長)、最大勾配333‰、高低差484mでした。太平洋戦争の戦局悪化に伴い、1945年(昭和20) 3月19日より不要不急線として休止されましたが、戦後の1946年(昭和21)8月7日より運行を再開します。1966年(昭和41)に群馬県の伊香保ケーブル鉄道が廃止されて以来日本最長のケーブルカー(所要時間は11分)となりました。

(4)京福電気鉄道鋼索線(京都府京都市)
 京都電燈によって、比叡山延暦寺への参拝客を見込んで、1925年(大正14)12月20日に、西塔橋(現在のケーブル八瀬)~四明ヶ嶽(現在のケーブル比叡)間が開業したものです。路線は、全長1,458m、最大勾配530‰、高低差561m(日本最大)でした。太平洋戦争の戦局悪化に伴い、1944年(昭和19)より不要不急線として休止されましたが、戦後の1946年(昭和21)より運行を再開します。日本最大の高低差561mもあり、眺望の良いのが特徴ですが、冬期は休業(1月1~3日は運転)します。

(5)近畿日本鉄道生駒鋼索線宝山寺線・山上線(大阪府生駒市)
 日本最初のケーブルカーで、近畿日本鉄道の前身である大阪電気軌道の系列会社の生駒鋼索鉄道により、宝山寺への参拝客を見込んで、1918年(大正7)8月29日に、鳥居前駅~宝山寺駅間(宝山寺1号線)に開業したものです。路線は、全長948m、最大勾配227‰、高低差146mでした。その後、1922年(大正11)1月25日に、大阪電気軌道が生駒鋼索鉄道を合併したのです。そして、1926年(昭和元)12月30日に、宝山寺2号線が開業して、鳥居前駅~宝山寺駅間が複線化しました。さらに、1929年(昭和4)3月27日には、これに続く、山上線の宝山寺駅~生駒山上駅間が開業します。しかし、太平洋戦争の戦局悪化に伴い、山上線は、1944年(昭和19)2月11日より不要不急線として休止されましたが、戦後の1945年(昭和20)8月1日より運行を再開しました。

☆日本のケーブルカー(鉄道事業法によるもの)一覧

・青函トンネル記念館青函トンネル竜飛斜坑線(青函トンネル体験坑道)全長778m、最大勾配250‰
・筑波観光鉄道 筑波山鋼索鉄道線(筑波山)全長1,634m、最大勾配358‰、高低差495m
・高尾登山電鉄高尾鋼索線(高尾山)全長1,020m、最大勾配608‰、高低差271m
・御岳登山鉄道(御岳山) 全長1,107m、最大勾配470‰、高低差424m
・箱根登山鉄道鋼索線(箱根山)全長1,240m、最大勾配200‰、高低差214m、中間駅4駅あり
・大山観光電鉄大山鋼索線(大山)全長786m、最大勾配477‰、高低差278m、中間駅1駅あり
・伊豆箱根鉄道十国鋼索線(十国峠)全長317m、最大勾配408‰、高低差101m
・立山黒部貫光鋼索線(立山黒部平)全長828m、最大勾配587‰、高低差373m
・立山黒部貫光鋼索線(立山美女平)全長1,366m、最大勾配560‰、高低差487m
・比叡山鉄道比叡山鉄道線(比叡山延暦寺)全長2,025m、最大勾配333‰、高低差484m、中間駅2駅あり
・京福電気鉄道鋼索線(比叡山延暦寺)全長1,458m、最大勾配530‰、高低差561m
・鞍馬山鋼索鉄道(鞍馬山鞍馬寺)全長207m、最大勾配499‰、高低差89m
・丹後海陸交通天橋立鋼索鉄道(天橋立傘松展望台)全長391m、最大勾配461‰、高低差115m
・近畿日本鉄道生駒鋼索線宝山寺線(生駒山)全長948m、最大勾配227‰、高低差146m
・近畿日本鉄道生駒鋼索線山上線(生駒山)全長1,124m、最大勾配333‰、高低差322m、中間駅2駅あり
・近畿日本鉄道西信貴鋼索線(高安山)全長1,263m、最大勾配480‰、高低差354m
・南海電気鉄道鋼索線(高野山金剛峯寺)全長864m、最大勾配563‰、高低差329m
・京阪電気鉄道鋼索線(男山石清水八幡宮)全長411m、最大勾配206‰、高低差82m
・能勢電鉄鋼索線(妙見山)全長666m、最大勾配424‰、高低差229m
・六甲山観光六甲ケーブル線(六甲山)全長1,764m、最大勾配498‰、高低差493m
・神戸すまいまちづくり公社摩耶ケーブル線(摩耶山)全長964m、最大勾配547‰、高低差312m
・四国ケーブル(五剣山)全長684m、最大勾配288‰、高低差167m
・皿倉登山鉄道(皿倉山)全長1,191m、最大勾配528‰、高低差441m
・岡本製作所別府ラクテンチケーブル線(別府ラクテンチ)全長253m、最大勾配558‰、高低差122m