ガウスの旅のブログ

学生時代から大の旅行好きで、日本中を旅して回りました。現在は岬と灯台、歴史的町並み等を巡りながら温泉を楽しんでいます。

旅の豆知識「日本の地質百選」

2017年09月28日 | 旅の豆知識
 旅行先では、火山や山岳、渓谷、高原、河川、海岸、洞窟など、自然が造形したいろいろなところへ行くことがあると思いますが、これがどのようにして出来たのだろうと興味を持たれることもあるのではないでしょうか?
 日本は、火山列島の上にありますので、地質的にみてもとても貴重な所が結構あるのです。近年、こういう地球科学的な価値を持つ自然の造形にスポットが当たり、日本でも、2008年(平成20)に「日本ジオパーク委員会(JGC)」が設立され、「日本ジオパーク」(現在43地域)というものが認定されるようになりました。
 それ以前の2007年(平成19)5月に、「日本の地質百選」が選定され、この取り組みを後押ししたのです。その中には、まだ「日本ジオパーク」に認定されていない地質的に貴重なところも含まれていますので、そういったところを訪ねで見るのも面白いかと思います。

〇「日本の地質百選」とは?
 日本の地質は世界的に見ても特異なものであり、地質学的にみた日本の貴重な自然資源を観測できる、計120ヶ所を選定したものです。「特定非営利活動法人地質情報整備・活用機構」と「社団法人全国地質調査業協会連合会」が共同で発案し、諸団体の協力のもと設立された「日本の地質百選選定委員会」によって選ばれました。2007年(平成19)5月の第一次選定で、83件が選定され、2009年(平成21)5月10日の「地質の日」の第二次選定で、37件が選定され、第一次の1件が変更され、合計120件となりました。選定の対象となったのは、火山、ユニークな地層、汎用岩石の産出地などですが、風光明媚なところも含まれていて、興味深いものです。

☆「日本の地質百選」のお勧め

(1)仏ヶ浦(青森県下北郡佐井村)
 下北半島西海岸の中央部に位置する国の名勝、天然記念物です。高さ100m近い岩体が聳え立っていて、日本海の拡大期に起こった海底火山の規模を物語っていました。仏ヶ浦駐車場から海岸に下りるのが大変で、断崖絶壁を下っていく途中からは、木の階段となって、ずっと続いていき、やっとのことで、海岸にまでたどり着いたのです。しかし、景色はすばらしく、白砂の浜に奇岩が並び、仏像、仏具の姿に見えるので、この名前が付いたとのことでした。遠くの海岸線の山が、海にせまっていて、しばし絶景に見とれながら散策しましたが、内田吐夢監督の映画『飢餓海峡』でも、主人公(三国連太郎)がこんな断崖をよじ登っていくシーンがあったことを思い出しました。とても静かで、一人では不気味な感じさえし、早々に切り上げて、帰路の階段を上っていきましたが、とてもきつくて、あえぎながらやっと駐車場に戻ったのです。

(2)筑波山(茨城県つくば市・石岡市・桜川市)
 関東地方東部、茨城県つくば市・石岡市・桜川市にまたがる標高877mの山で、西側の男体山(標高871m)と東側の女体山(標高877m)からなっていて、全域が水郷筑波国定公園に指定されています。この筑波山山頂へは、ロープーウェイかケーブルカーを使って登ることが出来ます。そうすると、男体山と女体山の山頂とその周囲に分布する巨石や奇岩(すべて斑糲岩)を見ることが出来ますが、マグマの冷却過程で形成された多方向の割れ目と、地表露出後の風化・侵食がつくり出したものでした。この付近からの眺望はとてもすばらしく、関東平野を一望のもとに出来て感動します。山頂付近のブナ林は、約2万年前の氷河期の生き残りと言われる貴重なものでした。これらのブナの生い茂る登山道や自然研究路沿いでは、カタクリをはじめ四季折々の動植物を楽しむことができるのです。また、筑波山南麓の筑波山梅林には、過去の土石流などがもたらしたマサや斑糲岩の巨礫などからなる山麓緩斜面堆積物が分布し、林道沿いでは、筑波花崗岩が風化・侵食でもろくなり、マサ化していく様子を観察できました。尚、山麓に鎮座する筑波山信仰の歴史を今に伝える筑波山神社は、筑波男大神と筑波女大神の夫婦二神を主神とする名社で、ぜひ参拝しておきたいところです。

(3)秩父・長瀞(埼玉県秩父郡長瀞町・皆野町)
 荒川中流部の峡谷で、約4kmにわたって、秩父赤壁と呼ばれる断層崖と岩石段丘などが続いています。その西岸に露出する結晶片岩の岩石段丘は岩畳と呼ばれ、地下深いところで高い圧力を受けてつくられ、長い年月をかけて隆起し、地表にあらわれたもので、結晶片岩はうすくパイ生地のように剥がれやすくなっていました。この岩畳一帯で、荒川は青く淀んだ瀞(川底が深くて、水の流れの静かな所)となり美しさを増し、水の渦巻き運動によって形成された大小さまざまな甌穴がみられます。この流域では、舟下りが行われていて、付近一帯の景観は観光客の目を楽しませていました。また、明治時代にナウマン博士が調査に訪れたことから「日本地質学発祥の地」碑があります。尚、この近くに「埼玉県立自然の博物館」があって、地層の様子や大地の成り立ちがわかる地学展示がされ、パレオパラドキシアなどの貴重な化石、地域の岩石や鉱物等を見ることができました。

(4)佐渡金山(新潟県佐渡市)
 佐渡の金銀鉱床は、大陸時代の火山活動によって形成されたと言われ、その後、島が隆起し、金銀鉱床が発見され、江戸時代には、幕府直轄の金山があった所です。幕府の財政を支える上で、大きな役割を果たすと共に、罪人の流刑地としても有名になりました。今では、「史跡佐渡金山」として、坑道が観光用になり、電動人形によって、当時の採掘の様子が再現されています。金山遺跡のうち相川鉱山関係遺跡が「佐渡金銀山遺跡」として、1994年(平成6)に国の史跡に指定され、2015年(平成27)に追加されました。それは、道遊の割戸、宗大夫間歩、南沢疏水などの採鉱関係のものと、佐渡奉行所跡、旧時報鐘楼、旧御料局佐渡支庁庁舎などの経営関係遺跡、佐渡鉱山の開発に功のあった佐渡奉行大久保長安の建てた大安寺です。また、大立竪坑櫓、大立竪坑捲揚機室、道遊坑及び高任坑、高任粗砕場などが「旧佐渡鉱山採鉱施設」として、2012年(平成24)に国の重要文化財に指定されています。

(5)秋吉台・秋芳洞(山口県美祢市)
 日本有数のカルスト地形がみられるところで、カルスト台地といくつもの鍾乳洞があることで知られています。その中で最大のものである「秋芳洞」の入口は、大きな洞口が開き、清流がとうとうと流れ出していました。中に入っても洞内は広く、みごとな鍾乳石や石筍がみられます。この洞窟の規模はたいしたもので、数階建てのビルがすっぽりと入ってしまうほどのものでした。そこを巡っていくと、百枚皿、洞内富士、千町田、千畳敷、黄金柱などの見所が随所に展開していて、目を見張らせるのです。最奥の黒根新洞まで足を延ばして、戻ってきましたが、結構な距離を歩いたことになり、少々疲れました。再び車に乗って、今度は、この鍾乳洞の上部に展開するカルスト台地秋吉台の景観を眺めてみることにしたのです。展望台の少し先に「美祢市立秋吉台科学博物館」があって、無料で入場できましたが、そこに展示された秋吉台生成の過程には興味を持ち、そこに生息する面白い動植物にも関心を持ちました。さらに、車でカルスト平原をドライブしましたが、ここが、アメリカ軍の演習場にされかかって、住民の反対で、自然公園として守られたことを知って、その雄大な自然が残されたことがうれしかったのです。所々に地形の凹凸があり、いたるところから石灰岩が墓標のようにつきだしていました。途中、車を停めて、付近を散策してみましたが、蝶やトンボが飛び交い、秋の風情を醸し出していて、その広々とした景観と共に心に焼き付いたのです。この自然をいつまでもそのままにしておいてほしいと願わずにはいられませんでした。

(6)御所浦(熊本県天草市)
 天草地域は、風光明媚な多島海と、ケスタ地形に現れる特徴的な地質・地形から成ります。御所浦には、白亜紀の地層が分布していますが、1997年(平成9)に、天草で初めてとなる恐竜化石や日本最大級の肉食恐竜の歯化石などが発見されました。そこで、「太古のロマンが蘇る恐竜の島 御所浦」を標語に掲げ、「恐竜の島」としてアピールしてきたのです。「御所浦白亜紀資料館」をはじめ「トリゴニア砂岩化石採集場」・「アンモナイト館」・「ニガキ化石公園」などのジオサイトがあります。特に人気なのは化石採集場で、約1億年前の浅い海にいた貝化石が容易に採集でき、アンモナイトやサメの歯などが見つかることもあるとか.....。また、この周辺には希少な植物や昆虫が生息していて、それらを観察することもできます。

☆「日本の地質百選」一覧

1.知床半島(北海道)
2.白滝黒曜石(北海道)[日本ジオパーク認定]
3.神居古潭渓谷の変成岩(北海道)
4.夕張岳と蛇紋岩メランジュ(北海道)
5.夕張の石炭大露頭(北海道)
6.幌尻岳の七つ沼カール(北海道)
7.有珠山・昭和新山(北海道)[世界ジオパーク認定]
8.恐山の金鉱床(青森県)[日本ジオパーク認定]
9.仏ヶ浦(青森県)[日本ジオパーク認定]
10.龍泉洞(岩手県)
11.唐桑半島(宮城県)
12.松島(宮城県)
13.蔵王火山(宮城県・山形県)
14.尾去沢鉱山(秋田県)
15.男鹿一ノ目潟(秋田県)[日本ジオパーク認定]
16.鳥海山(秋田県・山形県)[日本ジオパーク認定]
17.磐梯山(福島県)[日本ジオパーク認定]
18.筑波山(茨城県)[日本ジオパーク認定]
19.華厳の滝(栃木県)
20.足尾銅山(栃木県)
21.浅間山(群馬県・長野県)[日本ジオパーク認定]
22.跡倉クリッペ(群馬県)[日本ジオパーク認定]
23.瀬林の漣痕と恐竜足跡(群馬県)
24.秩父・長瀞(埼玉県)[日本ジオパーク認定]
25.犬吠埼(千葉県)[日本ジオパーク認定]
26.養老渓谷・黒滝不整合(千葉県)
27.伊豆大島(東京都)[日本ジオパーク認定]
28.三宅島(東京都)
29.父島無人岩[ボニナイト](東京都)
30.城ヶ島(神奈川県)
31.箱根火山(神奈川県)[日本ジオパーク認定]
32.佐渡金山(新潟県)[日本ジオパーク認定]
33.佐渡小木海岸(新潟県)[日本ジオパーク認定]
34.新津油田(新潟県)
35.糸魚川-静岡構造線[糸魚川](新潟県)[世界ジオパーク認定]
36.小滝・青海川ヒスイ峡(新潟県)[世界ジオパーク認定]
37.魚津埋没林(富山県)
38.立山カルデラ(富山県)
39.白峰百万貫岩(石川県)[日本ジオパーク認定]
40.東尋坊(福井県)
41.糸魚川-静岡構造線[早川](山梨県)[日本ジオパーク認定]
42.富士山(山梨県・静岡県)
43.八ケ岳(長野県・山梨県)
44.上高地と滝谷花崗岩(長野県)
45.御嶽山(長野県・岐阜県)
46.中央構造線[大鹿村](長野県)
47.神岡鉱山(岐阜県)
48.根尾谷断層(岐阜県)
49.飛水峡・上麻生礫岩(岐阜県)
50.丹那断層(静岡県)
51.大崩海岸(静岡県)
52.鳳来寺山(愛知県)
53.中央構造線[月出](三重県)
54.石山寺珪灰石(滋賀県)
55.天橋立(京都府)
56.玄武洞(兵庫県)[世界ジオパーク認定]
57.生野鉱山(兵庫県)
58.六甲-淡路断層系(兵庫県)
59.玉置山(奈良県)
60.鳥取砂丘(鳥取県)[世界ジオパーク認定]
61.隠岐島前カルデラ(島根県)[日本ジオパーク認定]
62.石見銀山(島根県)
63.羅生門(岡山県)
64.久井の岩海(広島県)
65.須佐ホルンフェルス(山口県)
66.秋吉台・秋芳洞(山口県)[日本ジオパーク認定]
67.宍喰浦舌状漣痕(徳島県)
68.サヌカイト(香川県)
69.砥部衝上断層(愛媛県)
70.龍河洞(高知県)
71.横倉山・佐川(高知県)
72.久礼メランジュ(高知県)
73.雲仙(長崎県)[世界ジオパーク認定]
74.阿蘇(熊本県)[世界ジオパーク認定]
75.御所浦(熊本県)[日本ジオパーク認定]
76.玖珠二重メサ(大分県)
77.青島(宮崎県)
78.市木不整合(宮崎県)
79.霧島火山群(鹿児島県)[日本ジオパーク認定]
80.桜島(鹿児島県)[日本ジオパーク認定]
81.屋久島(鹿児島県)
82.奥武島の畳石(沖縄県)
83.大東隆起環礁(沖縄県)
84.アポイ岳と高山植物群落(北海道)[日本ジオパーク認定]
85.霧多布湿原(北海道)
86.オンネトー湯の滝(北海道)
87.十和田湖・奥入瀬渓谷(青森県)
88.大船渡の中古生界(岩手県)[日本ジオパーク認定]
89.久慈層群と琥珀(岩手県)[日本ジオパーク認定]
90.荒砥沢ダムの上流崩壊地(宮城県)
91.豊川油田(秋田県)
92.千屋断層(秋田県)
93.五浦海岸(茨城県)[日本ジオパーク認定]
94.大谷石(栃木県)
95.塩原湖成層と木の葉石(栃木県)
96.葛生石灰岩(栃木県)
97.秩父・ようばけ(埼玉県)[日本ジオパーク認定]
98.丹沢山地の変成岩(神奈川県)
99.信濃川河岸段丘と活褶曲(新潟県)
100.能登珪藻土(石川県)
101.犀川沿い大桑層(石川県)
102.ふくい恐竜渓谷(福井県)[日本ジオパーク認定]
103.昇仙峡(山梨県)
104.白骨温泉と湯俣の噴湯丘(長野県)
105.鵜沼のチャート(岐阜県・愛知県)
106.瑞浪の化石(岐阜県)
107.南あわじの鞘形褶曲(兵庫県)
108.古座川弧状岩脈(和歌山県) [日本ジオパーク認定]
109.山陰海岸(鳥取県・兵庫県)[世界ジオパーク認定]
110.三瓶埋没林(島根県)
111.阿波の土柱(徳島県)
112.大島シュードタキライトと変成岩類(愛媛県)
113.室戸岬の斑レイ岩(高知県)[世界ジオパーク認定]
114.竜串・見残し海岸(高知県)
115.平尾台カルスト(福岡県)
116.有明海干潟(佐賀県)
117.小値賀島単成火山群(長崎県)
118.肥後変成帯(熊本県)
119.竹田の阿蘇火砕流堆積物(大分県)
120.甑島の白亜紀―古第三紀層(鹿児島県)