ガウスの旅のブログ

学生時代から大の旅行好きで、日本中を旅して回りました。現在は岬と灯台、歴史的町並み等を巡りながら温泉を楽しんでいます。

旅の豆知識「素麺」

2017年09月06日 | 旅の豆知識
 旅行先では、いろいろなものを食べることがあると思いますが、夏の風物詩と言えば、やはり「素麺(そうめん)」です。特に、流しそうめんなどを食する機会があれば、清涼感もあって、心地よくなります。
 ところが、一口に「素麺」といっても、長い歴史のある食べ物で、昔は、伝統的な製法である「手延べそうめん」によって製造されており、日本各地に産地があって、土地土地の違いもあるものでした。
 現在では、廃れてしまった産地もありますが、伝統を受け継いで製造が続けられている所も結構あるのです。中には、食するだけでなく、工場見学や製造体験のできるところもありますので、旅先で訪れてみることをお勧めします。

〇「素麺」とは?
 素麺(そうめん)は、小麦粉を原料とした細い麺類の一種です。小麦粉に食塩と水を加えて練り、植物油(綿実油など)を塗り込みながら伸ばし、日光で乾燥して一定の長さに切って束ねたもので、主に乾麺として流通していました。機械そうめんと手延べそうめんがあり、日本農林規格(JAS規格)の『乾めん類品質表示基準』では、機械そうめんの場合、素麺の麺の太さは直径1.3mm未満とされています。これより太い直径1.3mm以上~1.7mm未満はひやむぎ(冷麦)、1.7mm以上はうどん(饂飩)と分類されていました。
 日本国内では奈良県桜井市が発祥の地とされ、奈良時代に唐から伝来した索餅に由来するとするとの説があり、ここから各地に広まって、以前は農家の副業として厳寒期に生産されていました。奈良の三輪そうめん、大阪の河内そうめん、兵庫の揖保の糸、淡路島のそうめん、小豆島のそうめんなどが知られていたのですが、現在では衰退した地域もあります。

☆「素麺」の名店のお勧め

(1)味見処「光庵(ひかりあん)」(宮城県白石市)
 “白石温麺”は、長さ10cm程度の短い素麺で、製造に油を使用しないのが特徴でした。この店は、きちみ製麺の直営店で、隣接する工場で作られた麺を使用していますが、手延べ職人により一本一本丁寧に細く延ばしていて、抜群のコシとつるみが特徴です。昔ながらの茅葺き屋根の武家屋敷を改装した店舗で風情があり、とろとろ豚うーめん、麻婆うーめん(秋・冬限定)、牛肉盛芋煮うーめん(秋限定)、冷しうーめん、とろ玉うーめんなどの変わったメニューもあります。

(2) 三輪茶屋(奈良県桜井市)
 “三輪素麺”は、最も素麺作りの歴史が長く、全国に分布する素麺産地の源流は、ほとんどが三輪からと言われていました。その中で、享保2年創業の手延べ素麺「三輪そうめん山本」直営の食事処が、「三輪茶屋」で、冷やしそうめんとにゅうめん(温かいそうめん)を食べることができ、柿の葉寿司やくず餅のついたセットもあります。ここでは、料理店でもよく利用される超極細の白髪、もちもち食感の倭飛龍、カラフルな卑弥呼五彩などの多彩な素麺を製造していました。

(3)そうめんの里 レストラン「庵」(兵庫県たつの市)
 “播州素麺”は、兵庫県の播磨地方の良質の小麦、揖保川の清流、赤穂の塩など原料に恵まれていたことから素麺作りが盛んになったと言われ、現在日本国内1位の生産高を誇っています。「そうめんの里」は、有名ブランド「揖保乃糸」の資料館で、「手延べそうめん」の伝統の技と味わいを体験できる施設で、そうめんの歴史と製造工程を学習することができました。その中にあるレストラン「庵」では、ざるそうめん、にゅうめん(温かいそうめん)を始め各種のメニューがそろっており、春から秋にかけては外での流しそうめんも食することができます。 

(4)なかぶ庵(香川県小豆郡小豆島町)
 “小豆島手延べ素麺”は、香川県の小豆島が産地で、酸化しにくい胡麻油を使って延ばすのが特徴で、通常のそうめん作りで行う油臭さを抜くための熟成の行程を通さなくても、風味豊かなまま食べることができます。「なかぶ庵」は、工場の直営で、いっしょに箸分け体験や工場見学をすることも可能でした。食事メニューとしては、工場から作りたての麺料理(生そうめん・生うどんなど)が楽しめますし、工場直売所での買い物もできます。

(5)郷土料理 五志喜(愛媛県松山市)
 “五色素麺”は、愛媛県松山市で、江戸時代前期から製造が始まり、1722年(享保7)には、五色の色(白に加え、梅肉の赤、抹茶の緑、鶏卵の黄、そば粉の茶)を出すことを思いつき、八代将軍吉宗や朝廷にも献上されたと言われています。「郷土料理 五志喜」では、このそうめんを使った郷土料理「鯛そうめん」、にゅうめん(温かいそうめん)なども食べることができ、コース料理もありました。

(6)素麺料理店 面喰い(長崎県南島原市)
 “島原素麺”は、長崎県の島原半島で、江戸時代前期から製造が始まり、現在日本国内2位の生産量で品質に優れ、古くから三輪に供給されていた実績を誇ります。「素麺料理店 面喰い」は、素麺料理の専門店で、ダシが美味しく、のどごしが良いのが特徴でした。そうめんチャンポン、そうめん汁、みそ五郎そうめん、地獄煮そうめんなどのユニークなメニューがあります。

☆日本の「素麺」産地一覧

<東北>
・卵麺(岩手県盛岡市、奥州市)卵黄と小麦粉と塩を混ぜて麺を延ばすのが特徴の黄色い素麺です。
・白石温麺(宮城県白石市)長さ10cm程度の短い素麺で、製造に油を使用しないのが特徴です。
・稲庭素麺(秋田県湯沢市稲庭町)稲庭うどんと同じ製法で作られる寒ざらしの手延べ素麺で油は用いないのが特徴です。
・三春素麺(福島県田村郡三春町)麺の形状は平麺で、最近春限定の「桜めん」(香りは桜葉から、色は紅花から製造)が出来ました。

<中部>
・大門素麺(富山県砺波市)延ばす際に油を使用しないのが特徴で、丸髷状の束になっています。
・和泉素麺(愛知県安城市)麺が乾燥する前に手で伸ばして生麺状態に戻す"半生もどし"という独特の製法で、コシが強いのです。
・大矢知素麺(三重県四日市市大矢知地区)冷や麦の産地として知られていますが、江戸時代から続く素麺産地でもあります。

<近畿>
・播州素麺(兵庫県たつの市、宍粟市、姫路市など)播磨地方の良質の小麦、揖保川の清流、赤穂の塩など原料に恵まれていたことから発達し、現在、日本国内1位の生産量です。
・淡路素麺(兵庫県南あわじ市)昔ながらの手延べそうめんの産地ですが、他におされて衰退傾向で、現在は10数軒だけになっています。
・三輪素麺(奈良県桜井市三輪地区)最も素麺作りの歴史が長く、全国に分布する素麺産地の源流はほとんどが三輪からと言われています。

<中国>
・備中素麺(岡山県浅口市)古くから「麦切り」という麺類の一種が朝廷に献上された歴史を持っています。

<四国>
・半田素麺(徳島県美馬郡つるぎ町半田地区)江戸時代後期に吉野川の船頭が、家族の自給用や副業として始めたと言われています。
・小豆島手延べ素麺(香川県小豆郡土庄町、小豆島町)酸化しにくい胡麻油を使って延ばすのが特徴です。
・五色素麺(愛媛県松山市)江戸時代に始まった、白に加え、梅肉の赤、抹茶の緑、鶏卵の黄、そば粉の茶を使った五色の素麺です。

<九州>
・神埼素麺(佐賀県神埼市)機械製麺の発祥地で、独特のコシの強さで知られ、冷して食する他、温めて食べる「にゅうめん」でも有名です。
・島原素麺(長崎県南島原市など)現在日本国内2位の生産量で、品質に優れ、古くから三輪に供給されていた実績を誇ります。
・南関素麺(熊本県玉名郡南関町)江戸時代からの産地で、麺が非常に細いのが特徴、将軍家、明治天皇などに献上された歴史を持っています。