山本藤光の文庫で読む500+α

著書「仕事と日常を磨く人間力マネジメント」の読書ナビ

ためつすがめつ

2018-11-03 | 知育タンスの引き出し
ためつすがめつ
太宰治『斜陽』について、角田光代はつぎのような感想を書いています。

――読み手が抱きやすい「めめしくて甘ったれ」という部分も、無意識に垂れ流された作家の性質なのではなくて、じつに老獪(ろうかい)に計算され、わざと表面に押し出されたものではないか。自身の持つ繊細さや敏感さ、臆病さや卑怯さ、そういったものを、ていねいに自身から切り離し、笑えるくらい距離を置き、客観的に矯(た)めつ眇(すが)めつして眺め、そうしてから作品に落としこんでいるのではないか。(角田光代『私たちには物語がある』小学館文庫より)

このなかの「矯(た)めつ眇(すが)めつ」のところで、私の脳内にハテナマークが灯りました。語源が知りたくなったのです。いつものことですが。「語源由来辞典」で確認しました。

ねらいをつける、じっと見る意味の「矯む(たむ)
片目を細めて見る意味の「眇む(すがむ)」

あまりピンときませんが、「あーでもない、こーでもない」とはちがうようです。
山本藤光2018.02.05

かんぺき

2018-11-03 | 知育タンスの引き出し
かんぺき
企業のマネジャー研修の冒頭で、必ず「私は完璧なマネジャーです」と書いてもらうことにしています。60%の人は、「完壁」と間違って書きます。正解をスマホで確認させると、一斉にどよめきが起きます。

なぜ「璧」でなければならないのか。解説を引用させていただきます。次の故事から、「完璧」と書かなければならないわけです。

――昔、中国の秦(しん)から、国の至宝を秦の一五の城と交換せよと迫られた趙(ちょう)の国王が、対応に困って、蘭相如という人物に相談した。すると、蘭相如は、その至宝を持参して秦の王と面会し、「この璧には瑕(きず)があります。お教えしましょう」と言い、璧を手にするや、「自分の頭とこの璧を柱にぶつけて砕いてしまう」と叫んだ。仕方なく秦の王は折れたが、蘭相如はさらに口実をもうけて璧を持ち出し、ひそかに趙まで持ち帰らせた。(『世界で一番おもしろい漢字の本』青春文庫P52)

 私は、璧を「柱」にぶつけるのではなく、「壁」にぶつけると紹介しています。
山本藤光2018.01.09

285:中学生の清掃活動

2018-11-03 | 小説「町おこしの賦」
285:中学生の清掃活動
――『町おこしの賦』第9部:おあしすの里13
 九月。三学期がはじまった。中学生の登校スタイルに、変化が起こった。誰もが、白い軍手をはめている。寒いせいではない。彼らの通学路の清掃活動が、スタートしたのである。火ばさみを持っている生徒もいた
。恭二と詩織は駅前通りまで出て、中学生の列に「ありがとう。がんばってね」という声をかけた。みんな楽しそうに、ゴミ拾いをしている。標茶駅の方からカメラを抱えた、北村広報課長がやってきた。詩織は「おはようございます」と笑ってみせた。
「何しろ歴史的な、瞬間ですからね。中学生が自発的に、清掃活動のボランティアをはじめた。大ニュースですよ」
「すてきな写真を、広報に掲載してくださいね」
 詩織は北村の背中に向かって、大きな声で告げた。隣りでは恭二は、やさしい眼差しを中学生に向けている。
「歴史が動いたは大げさだけど、詩織、標茶町に貢献するという精神は、揺るぎないものになったようだな」

 瀬口恭一・彩乃夫妻は、三人の子宝に恵まれている。長女の鈴蘭は大学三年、次女の智香は高校三年、そしてゴミ袋と火ばさみを持って出た長男の雄大は中学三年生である。
「ちょっと照れちゃうよな。こんな格好で登校するのは」
 雄大は白い歯を見せて、出かけて行った。見送って居間に戻った彩乃は、食器を片づけながら恭一に語りかけた。夫は五十歳になり、標茶町立病院の副院長を務めている。

「自分たちが、町のためにできることは何か。そんな話し合いのすえに、清掃活動が決まったんだって。それにね、小学生の勉強をみてあげる教室も、スタートさせたんだって。中学から奉仕のことを考えられるのって、すてきなことよね」
「中三といえば、都会の学校では受験のことしか念頭にない。それが標茶だから、考えつくことなんだろうな」
「いいわね、標茶は」
「宮瀬町長の行政は、患者さんからも評判がいい」
「兄貴は標茶を、活力のある町にしたい。それしか考えていないのよね」
「彩乃は、すばらしいお兄さんに恵まれた」
「ありがとう。とってもうれしいわ」

026cut:全員にノートパソコンを支給する

2018-11-03 | 完全版シナリオ「ビリーの挑戦」
026cut:全員にノートパソコンを支給する
――05scene::4月チーム会議
影野小枝 釧路営業所の会議室です。4月会議の前日です。8人の部下が勢ぞろいしています。室内には、水色のケーブルが横たわっています。
漆原 明日は、はじめてのチーム会議です。その前に、みなさんにプレゼントがあります。こちらは、本社システム部の木村さんです。これから、全員にノートパソコンを支給します。
影野小枝 歓声が上がりました。
漆原 チームの半分が駐在員です。このハンデを克服するために、支店長にお願いして許可してもらいました。これからは、チームのコミュニケーションをパソコンでおこないます。パソコンをすでに、持っている人はいるかい?
山之内 持っています。チームでは、私と石川さんしか持っていません。
漆原 これから、木村さんに指導してもらいます。このチームが有効活用できたら、全社導入になるとのことです。責任は重いよ。しっかりと学ぶように。
木村 昨日は、釧路名物の炉辺焼きを堪能しました。私としては、みなさんの覚えが悪く、長いこと滞在できればとの邪心もあるのですが。
石川 そうなるって。太田とパソコンって、絶対にミスマッチだから。
太田 バカにしないでください。いまどきパソコンを使えないのは恥ですよ。
木村 漆原さんからの指示で、みなさんには、ワード、エクセル、メール、インターネットを覚えていただきます。ただしインターネットで、エッチなサイトは見ないでください。見たら記録が残りますからね。
石川 太田、分かったな。見ちゃいけないのだよ。
影野小枝 チームに、ノートパソコンが導入されました。これが、チーム再建の武器になるのでしょうか。チームのみなさんには、結構インパクトのあるプレゼントだったようですね。

032:読む本を選ぶ

2018-11-03 | 銀塾・知だらけの学習塾
032:読む本を選ぶ
よい本を読みたい。誰もが願うことでしょう。良書を選ぶのは、結構難しいことです。名作については、あふれるほどのガイドブックがあります。そのなかでぜひ読んでいただきたいのは、次の著作です。

・モーム『世界文学読書案内』(岩波文庫)
・モーム『世界の十大小説』(上下巻、岩波文庫)
・ナボコフ『ナボコフの文学講義』(上下巻、河出文庫)
・篠田一士『二十世紀の十大小説』(新潮文庫)
・『新版ポケット・日本名作事典』(平凡社)
・『近代日本文学案内』(岩波文庫別冊)

「山本藤光の文庫で読む500+α」は、これらの著作で推挙されている作品のほとんどを網羅しています。

新刊文庫の検索をしたい場合は、ネット「ほんのひきだし」が便利です。このサイトは、発売日順や出版社別に検索することができます。

雑誌では「ダ・ヴィンチ」と「本の雑誌」が広く良書を紹介しています。特に「本の雑誌」は書評家が厳選しているので、比較的推薦作にアタリが多いように思われます。

老齢期向けには、斎藤孝『50歳からの名著入門』(海竜社)や勢古浩爾『定年後に読みたい文庫100冊』(草思社文庫)などがあります。ちょっと背伸びしなければならない本が、混じっています。しかし丸くなりつつある背中を伸ばすには、格好のラインナップだと思います。

老齢期をつづったエッセイでは、早川良一郎『散歩が仕事』(文春文庫、山本藤光の文庫で読む500+α推薦作)が秀逸です。小説では、内館牧子『終わった人』(講談社文庫)を推薦します。これも「500+α」で紹介しています。

黒井千次『流砂』刊行

2018-11-03 | のほほんのほんの本
黒井千次『流砂』刊行
黒井千次『流砂』(講談社)が刊行されました。著者については「500+α」で『時間』を紹介しています。本書は久しぶりの長篇で、自伝的作品と位置づけられています。古井由吉と黒井千次は、内向の世代の代表的な作家です。
山本藤光2018.11.03

意欲

2018-11-03 | 知育タンスの引き出し
意欲
営業マンの能力を私は、「営業生産性=意欲×(知識+人間力)」という公式で測っています。つまりどんなに知識や人間力があっても、意欲がなければ生産性には期待できないということです。「意欲」の大切さについては、短いのですが次の言葉がすべてを物語っていると思います。

――意欲さえでたら能力はいくらでも増す
(西堀栄三郎『新版石橋を叩けば渡れない』生産性出版)
山本藤光2018.11.03