271:十五年前の詩
――『町おこしの賦』第8部:業績格差は人災34
早朝、玄関のチャイムが鳴った。詩織が出ると、恭二の兄・恭一だった。
「詩織ちゃん、ピアノ弾けるよね」
恭一はそういって、一枚の紙片を渡した。
「これ、恭二が標高の卒業文集に載せた詩だ。曲をつけてやると預かっていて、ずっと忘れてた。
やっと曲ができたので、置いて行く。今日はこれから診察があるので、恭二にも聴かせてあげて」
寝室から出てきた恭二は、詩織から紙片を受け取った。五線の川に、おたまじゃくしが泳いでいた。
「おれが卒業文集に書いた、詩じゃないか」
「お兄さん、曲をつけるの忘れていたんだって」
恭二自身も、完全に忘れていたものである。
「詩織、これピアノで、弾いてくれないか」
「いいわよ」
詩織はピアノの前に座り、歌いながら鍵盤を叩いた。
「恭二、すてきな曲になっている」
「感動しちゃうな。忘れていた大切な友だちに出会った感じだ」
「恭二、歌ってごらん」
軍馬山
――春は桜の薄化粧/いかすピンクの軍馬山/標高(しべこう)の誇りだ我らのものだ/桜の花びら頭(かざし)に乗せて/友と叫ぼう/標茶町ヤッホー
――夏はセミの大合唱/いきなムードの軍馬山/標高の誇りだ我らのものだ/夏の太陽頭(かざし)に受けて/友と歌おう/標茶町ヤッホー
――秋は実りの植物園/しゃれたセンスの軍馬山/標高の誇りだ我らのものだ/秋のそよ風頬に受けて/友と歩こう/標茶町ヤッホー
――冬は雪の美術館/凛(りん)とたたずむ軍馬山/標高の誇りだ我らのものだ/冬の粉雪頭(かざし)に乗せて/友と語ろう/標茶町ヤッホー
「このころは、おれもピュアだった。詩織の胸もまだ小さくて、左の頬にえくぼもあった」
「いやね、変なことと結びつけないで」
「おれね、詩織と一緒に軍馬山へ、行っている場面を想像しながら書いた」
「お兄さん、曲作りはプロ並みだものね」
「うん、いい曲になっている。詩織、明日軍馬山を歩いてみたい。歩きながら、一緒に大声で歌ってみよう」
――『町おこしの賦』第8部:業績格差は人災34
早朝、玄関のチャイムが鳴った。詩織が出ると、恭二の兄・恭一だった。
「詩織ちゃん、ピアノ弾けるよね」
恭一はそういって、一枚の紙片を渡した。
「これ、恭二が標高の卒業文集に載せた詩だ。曲をつけてやると預かっていて、ずっと忘れてた。
やっと曲ができたので、置いて行く。今日はこれから診察があるので、恭二にも聴かせてあげて」
寝室から出てきた恭二は、詩織から紙片を受け取った。五線の川に、おたまじゃくしが泳いでいた。
「おれが卒業文集に書いた、詩じゃないか」
「お兄さん、曲をつけるの忘れていたんだって」
恭二自身も、完全に忘れていたものである。
「詩織、これピアノで、弾いてくれないか」
「いいわよ」
詩織はピアノの前に座り、歌いながら鍵盤を叩いた。
「恭二、すてきな曲になっている」
「感動しちゃうな。忘れていた大切な友だちに出会った感じだ」
「恭二、歌ってごらん」
軍馬山
――春は桜の薄化粧/いかすピンクの軍馬山/標高(しべこう)の誇りだ我らのものだ/桜の花びら頭(かざし)に乗せて/友と叫ぼう/標茶町ヤッホー
――夏はセミの大合唱/いきなムードの軍馬山/標高の誇りだ我らのものだ/夏の太陽頭(かざし)に受けて/友と歌おう/標茶町ヤッホー
――秋は実りの植物園/しゃれたセンスの軍馬山/標高の誇りだ我らのものだ/秋のそよ風頬に受けて/友と歩こう/標茶町ヤッホー
――冬は雪の美術館/凛(りん)とたたずむ軍馬山/標高の誇りだ我らのものだ/冬の粉雪頭(かざし)に乗せて/友と語ろう/標茶町ヤッホー
「このころは、おれもピュアだった。詩織の胸もまだ小さくて、左の頬にえくぼもあった」
「いやね、変なことと結びつけないで」
「おれね、詩織と一緒に軍馬山へ、行っている場面を想像しながら書いた」
「お兄さん、曲作りはプロ並みだものね」
「うん、いい曲になっている。詩織、明日軍馬山を歩いてみたい。歩きながら、一緒に大声で歌ってみよう」