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山本藤光の文庫で読む500+α

著書「仕事と日常を磨く人間力マネジメント」の読書ナビ

106:目標

2019-01-21 | 銀塾・知だらけの学習塾
106:目標
――第9講義:人間力
人間力のある人には意欲がある
意欲のある人には夢がある
夢のある人には目標がある
目標のある人には努力がある
努力のある人には失敗がある
失敗のある人には反省がある
反省のある人には経験がある
経験のある人には智恵がある
智恵のある人には人間力がある

「目標」は、到達しなければならないゴールのことです。目標はある「目的」に向かって、設定されるものです。したがって目的のない人には、目標は存在しません。

SSTプロジェクトを例に説明したいと思います。プロジェクト創設の目的は、「営業生産性の向上」にありました。そして「2年以内に2桁アップの実績向上」という「目標」が掲げられました。このように最初に「目的」があり、そのために到達すべきゴールを設定するのが「目標」となります。。

 時々「目的」と「目標」を混同しているケースがあります。「目標」には明確な達成期限や成果目標が、明示されていなければなりません。

「人間力豊かなリーダーになる」ために、「たくさんの良書を読む」。これは「目的」と「目標」を1文にしたものです。残念ながら、これでは、的確な目標設定にはなっていません。「いつまでに」や「何冊」といった、具体例が記されていないからです。

私が社会人になったときに、書いた人生設計があります。営業職を希望していたのに内勤職に配属され、失意の中で書いた記憶があります。私は10年刻みのゴール(目標)を設定していました。これらは「豊かな人生をおくる」という生涯ゴール(目的)に対する、個々の目標というべきものです。そして10年刻みのゴール(目標)は、生涯ゴール(目的)のための、マイルストーンでもあるのです。

はるか遠くに目標を設定し、その間にマイルストーンを置くのが理想的な形です。マイルストーンとはマラソンに例えるなら、5キロ刻みの標識のことです。ちょっと恥ずかしいのですが、私のマイルストートンを紹介してみます。

70歳:印税や古書店経営で悠々自適の生活をおくる。
60歳:小説家になる。古書店を開業する。。
50歳:営業組織のトップになる。ビジネス書を出版する。
40歳:全国トップのチームを作る。小説を自費出版する。
30歳:全国トップのMRになる。小説家修行をする。

「目標」と「夢」が、混在していても構いません。余り些細なことにとらわれず、こうなりたいと思うことを創出しなければなりません。「目標」は「夢」に明確な輪郭を与え、到達時期や目標数値を明示したものでなければなりません。

(1)年内に、ジェームス・ジョイス『ユリシーズ・全4巻』(集英社文庫を読了する
(2)毎朝30分、ジェームス・ジョイス『ユリシーズ・全4巻』(集英社文庫)を読む

 この2つはどちらにも数値が入っており、立派な「人間力を磨く」目的にかなった目標です。しかしちょっと違っています。(1)は、成果に対する目標となっています。(2)は、行動の目標です。(1)の場合は全4巻読めなかったら、成果は×となります。(2)のケースは成果に触れられていませんので、全4巻読めなくても×とはなりません。ただし1日でも怠けたら、例え全4巻を読んだとしても、結果は×となってしまいます。

「目標」を考えるとき、私が大切にしている文章があります。引用させていただきます。

――小さな目標しかもたない者には、小さなことしか達成できない。大きな希望をもって、大きなことを試みるべきである。このことを常に心がけるかどうかで、一生をおくるうえで天と地ほどの差がでてくる。(中略)進歩と成功の度合いは、それぞれの目標の高さに応じて決まる。(W.A.オールコット『知的人生案内』知的生きかた文庫P16)

 理想的な「目標」は大きく掲げたもので、しかも「成果目標」と「行動目標」が併記されているものだと理解してください。

105:夢

2019-01-20 | 銀塾・知だらけの学習塾
105:夢
――第9講義:人間力
人間力のある人には意欲がある
意欲のある人には夢がある
夢のある人には目標がある
目標のある人には努力がある
努力のある人には失敗がある
失敗のある人には反省がある
反省のある人には経験がある
経験のある人には智恵がある
智恵のある人には人間力がある

辞書的な意味での「夢」は、「実際にはありそうにも思われないが、万一実現すればいいなと思っている事柄」(『新明解国語辞典』三省堂)となっています。

私のイメージは、もっとポジティブなものです。夢とは努力によって叶えられるもの。実現させたいと思っていること。そんな前提で、書き進めさせていただきます。

「夢」とはおぼろげな、もうワンランク上の世界への願望。私はそう解釈しています。目標は明確な到達点。希望は夢実現のためへの熱い思い。こんな感じです。「夢も希望もない」という絶望的な言葉がありますので、夢と希望はきっと微妙に違うのだと思います。「夢は大きく」とか「希望を捨てない」などという言葉もあります。ここでは夢に一歩近づくと、その都度希望の明かりがともるような情景を想像してください。

 まずはあなたの夢を、机の前の張り紙や手帳の裏表紙に、大書してください。夢は心密かに思い描いていては、成就し難いものです。書き出すこと、公言することが、夢に近づく大切な第一歩なのです。

「夢」って、ポジティブな思い描きのことです。例えばあなたが、小説家になりたいな、と思っているとしましょう。これを〇歳までにとしたら、その夢に到達点を与えたのですから、立派な目標となります。ぼんやりとした思い描きのままだったら、妄想に近いおぼろなものとなります。夢イコール目標が理想形ですが、「やりたいことはなにもない」人よりは、はるかに夢ある人の方が崇高です。

104:意欲

2019-01-19 | 銀塾・知だらけの学習塾
104:意欲
――第9講義:人間力
人間力のある人には意欲がある
意欲のある人には夢がある
夢のある人には目標がある
目標のある人には努力がある
努力のある人には失敗がある
失敗のある人には反省がある
反省のある人には経験がある
経験のある人には智恵がある
智恵のある人には人間力がある

「意欲」とは、やる気、向上心、モチベーションのことです。意欲を引き出すには、動機づけが重要になります。動機づけには3つの回路があります。第三者から与えられたもの、環境の変化、そして成功体験の3つです。第三者には本の著者も含まれます。いずれにしろ人は、あるきっかけで意欲は大いに高まります。

営業リーダー研修で、私は受講者に次のような「成果の公式」を伝えています。

成果=意欲×(知識+智恵)

 この公式のポイントは、「意欲」にあります。どんなに知識や智恵があっても、意欲が乏しければ成果は期待できません。

営業リーダーは、伸びしろのある部下を選択して集中的に同行すべき。伸びしろとは意欲のことです。仮に最も優秀な部下の意識・知識・知恵を2点としてみます。この公式では、成果は8点となります。

伸びしろのある部下の意欲・智恵は2点のままで、知識が劣っているとします。すると6点となります。意欲に乏しく、知識も智恵も劣っている部下に、すべてを1点としてみると、成果は2点となります。

伸びしろがあるのに、知識が劣っている部下の指導は、ロールプレイに集中します。伸びしろがあるのに智恵が劣っている部下は、同行指導の対象となります。ここでいう「智恵」とは、知識を表出するスキルやノウハウのことです。意欲に欠けた部下には、多くの時間をかけないように伝えています。

営業組織は時々、「2-6-2」の公式で語られることがあります。営業組織は優秀な2割、平均的な6割、劣っている2割で構成されているという意味です。私が指導に時間をかけるべきではない、といっているのは、劣っている2割を指します。彼らはよく「ぶらさがり」と揶揄(やゆ)されています。お神輿(みこし)をかついでいるふりをして、足が地についていない像からのイメージです。「伸びしろがある」のは、平均的な6割を指します。

敬愛する西堀栄三郎の著作から、「意欲」について紹介させていただきます。

――意欲さえでたら能力はいくらでも増す(西堀栄三郎『新版石橋を叩けば渡れない』生産性出版)

意欲とは、持続する向上心ともいい換えることができます。時々「気力が空回りしていますね」という言葉を、耳にすることがあります。これは追い求めている目標が、高過ぎることによります。意欲はそこそこ到達しそうな、次元に向けなければなりません。前記の「マイルストーン」のように、今日目指す域まで意欲を集中するのがポイントです。そして明日は目標のハードルを少し上げて、新たな意欲をかきたてるのです。

103:人間力の循環文

2019-01-18 | 銀塾・知だらけの学習塾
103:人間力の循環文
――第9講義:人間力
大好きな循環文があります。北海道函館市スズキ薬局のトイレの張り紙です。医薬経済社HP「記者舞台裏・本町三行通信」(2002年1月15日号)に掲載されていたものです。拙著『仕事と日常を磨く「人間力」マネジメント』執筆の際に参考にさせていただきました。以下は私のオリジナルです。

人間力のある人には意欲がある
意欲のある人には夢がある
夢のある人には目標がある
目標のある人には努力がある
努力のある人には失敗がある
失敗のある人には反省がある
反省のある人には経験がある
経験のある人には智恵がある
智恵のある人には人間力がある

「人間力」を短い言葉で、定義づけることは不可能です。ただし私は、ぼんやりと前掲のようなイメージを抱いています。本当はこの中に、「専門知識」という単語を入れようと考えました。しかし一流大学を卒業したAさんの顔が、浮かんできてしまうのです。Aさんは私の上司でした。自己顕示欲が強く、常に上から目線で部下に接しました。私には全く、人間的な魅力を感じられない人でした。

確かに一企業人として、専門知識は極めて重要なものです。その点では、十分に尊敬できました。しかし「人間力」というくくりの中には、収めたくないタイプの人だったのです。

102:野中郁次郎先生から学んだこと(その7)

2019-01-17 | 銀塾・知だらけの学習塾
102:野中郁次郎先生から学んだこと(その7)
――第8講義:知(ナレッジマネジメント)
昨日の「愛の貧乏脱出大作戦」の画像を。営業リーダーがやるべき「SECI」に重ねてみます。

愛貧1:つぶれそうな店の店主3人が、達人の店に修業にきます。
営業1:SECIを実施しようと営業リーダーは、張り切っています。

愛貧2:達人は自ら料理を作り(暗黙知)、彼らにもやらせて見せます(暗黙知)。彼らは当然、達人のようにはできません。
営業2:部下と「現場」同行中のリーダーは、自ら手本を見せて(暗黙知)、同じように部下にやらせてみます(暗黙知)。

愛貧3;その夜、3人はそれぞれが達人の料理(暗黙知)を思い浮かべてメモを書きます(形式知)。
営業3:「会議」でリーダーは、昨日同行した部下の成功例(暗黙知)を、チームメンバーに向けて発表(形式知)させます。

愛貧4:彼らは自分のメモ(形式知)に不安があるので額を寄せ合い、より完璧なメモ(形式知)に仕上げます。
営業4:発表された成功例(形式知)を、よりよいものにしようと、全員で意見交換(形式知)をしています。

愛貧5:翌朝、彼らはまとめたメモ(形式知)を参考に、再び達人の料理に挑みます(暗黙知)。
営業5:チームメンバーは翌朝、みんなで磨き上げた成功例(形式知)を、それぞれが現場で実践(暗黙知)してみます。

これで「SECI」は1回転しました。営業リーダーは、現場と会議場を活用して、「SECI」を回さなければなりません。成功例をデータベースに蓄積している会社は、たくさんあります。

それは「SECI」の断片を実施しているだけで、回転してはいないのです。そこを勘違いして「当社はナレッジマネジメントを導入している」と胸を張っている人がいます。断片だけでは、個人知を組織知にすることはできません。そして当然、組織知を個人知としても活用していないのです。

101:野中郁次郎先生から学んだこと(その6)

2019-01-16 | 銀塾・知だらけの学習塾
101:野中郁次郎先生から学んだこと(その6)
――第8講義:知(ナレッジマネジメント)
むかし「愛と貧乏脱出大作戦」というテレビ番組がありました。それを見ていて、「これぞSECI(セキ)モデル」だと思いました。私は日本ナレッジマネジメント学会でそれを発表し、厳粛な会場を爆笑の渦で満たしたことがあります。

1. つぶれそうな店の店主3人が、達人の店に修業にきます。
2. 達人は自ら料理を作り(暗黙知)、彼らにもやらせて見せます(暗黙知)。彼らは当然、達人のようにはできません。
3. その夜、3人はそれぞれが達人の料理(暗黙知)を思い浮かべてメモを書きます(形式知)。
4. 彼らは自分のメモ(形式知)に不安があるので額を寄せ合い、より完璧なメモ(形式知)に仕上げます。
5. 翌朝、彼らはまとめたメモ(形式知)を参考に、再び達人の料理に挑みます(暗黙知)。

これで「SECI」は1回転しました。「SECI」は、暗黙知と形式知の変換サイクルのことです。こうしてつぶれそうな店の店主たちは、少しずつ達人の名人芸に迫っていくわけです。これを営業リーダーに向けて指導しているのが、私が顧問を務める株式会社コラボプランの仕事です。(明日につづく)

100:野中郁次郎先生から学んだこと(その5)

2019-01-15 | 銀塾・知だらけの学習塾
100:野中郁次郎先生から学んだこと(その5)
――第8講義:知(ナレッジマネジメント)
野中郁次郎先生から学んだことはたくさんあります。全部を紹介することはできませんが、本日は「場」について書きたいと思います。ナレッジマネジメントの国際学会で、「場」は「Ba」と発音されます。野中先生が提唱した、先駆的な概念です。

「場」は、知を収集し、整理し、磨き、交換するために、とてつもなく重要な環境です。私は個人のときにも、この概念を大切にしています。たとえば興味があるテーマがあって、それにまつわることを収集している人はたくさんいます。ところが彼らの多くは、知のステップアップのための「場」のサイクル(前記の収集・整理・磨き・発信・交換)を完結していません。

ほとんどの人には「発信」の部分が欠落しているのです。せっかく集めて磨いたものを、発信しなければその知はレベルアップしないのです。発信とは、誰かに話す(交換)という行為もふくまれます。

発信することで評価を受け、さらなるステージへと誘導されるのです。私がSSTのことを本にしたいと社長に相談したとき、こんな風にいわれました。
――全部書いてしまってかまわない。誰かがマネをしたところで、我々は露出したことで、さらなるステージに移っているのだから。

そして私は日本ロシュに在籍中に、『暗黙知の共有化が売る力を伸ばす・日本ロシュのSSTプロジェクト』(プレジデント社)という本を上梓させていただいています。本書は日本ナレッジマネジメント学会奨励賞を受賞し、名人芸移植プロジェクトとして多くのメディアに取り上げられました。

もちろん本の帯には、野中郁次郎先生が推薦の言葉を書いてくださっています。(明日につづく)

098:野中郁次郎先生から学んだこと(その3)

2019-01-13 | 銀塾・知だらけの学習塾
098:野中郁次郎先生から学んだこと(その3)

SSTプロジェクトのゴールは、「1年後に2桁アップの業績を上げる」でした。しかもプロジェクト終了後にも、「その効果を持続させる」が追加されていました。つまりSSTメンバーがいなくなっても、同行指導を受けたMRが単独で成果を上げられなければ、成功とはいえないわけです。

プロジェクトが1年を終えたとき、野中郁次郎先生が取材にいらっしゃいました。社長と私たち事務局が、対応にあたりました。それが私と野中郁次郎先生との、出会いです。

SSTメンバーの指導を受けたMRは、受けていないMRよりも24%も高い成果を上げていました。そのグラフを支店長会議で報告したのですが、「ウソだろう」の大合唱が起こったほどです。

1MRにつき延べ20日のフル同行。この威力はすさまじいものでした。SSTメンバーは自らのスキル、ノウハウを、惜しみなく提供しました。そして学術知識を磨く大切さと、仕事を楽しむコツを伝授しました。

SST導入以前に、「毎日の仕事は楽しくない」と答えていたMRは、192人中2名を除きすべてが「仕事が楽しい」と答えています。「毎日のRPDCサイクル」を回す活動は、確実にMRの仕事を次元の違う世界へと誘ったのです。

私は業績の向上とMRの変化を、汗だらけになって説明しました。説明が終わると野中郁次郎先生は社長に向かって、「SSTは世界に類のない暗黙知に特化したすばらしいプロジェクトです」とおっしゃいました。(明日へつづく)

097:野中郁次郎先生から学んだこと(その2)

2019-01-12 | 銀塾・知だらけの学習塾
097:野中郁次郎先生から学んだこと(その2)

SSTプロジェクト導入以前にも、日本ロシュでは同行専任部隊プロジェクトを実施していました。ところがこれは、まったく成果をあげないままに頓挫しています。

失敗の原因は明らかでした。メンバーの推薦を支店長に任せたために、優秀な人を送りこんでもらえなかったのです。したがってSSTの人選は、SST事務局が強引に実施しました。

選ばれたメンバーは2年間も、単身赴任者のような生活を余儀なくされるわけですから、まず家庭に育児や介護などの不安がある人は除外しました。つぎに独特の営業力で売り上げの高い人も除外しました。同行指導を受けるMRが、マネできないからです。そして「人間力」の高い人を優先しました。

SSTがスタートする以前に、2か月間本社で合宿させました。話法を磨き、同行の心得を指導し、文章の書き方まで鍛えました。メンバーは夜遅くまで、自発的に勉強を継続しました。2年間のSSTプロジェクトも壮烈ですが、2カ月の事前合宿も常識的には考えられないことだと思います。

スタートを大切にする以前に、そのための準備をおこたらないこと。そのためには膨大な時間が必要です。

日本ロシュという会社は、中外製薬との合併で消えてしまいました。しかしSSTメンバーは、毎年1回、それが先週だったのですが、リーダーだった故中島則雄の墓参をかねて集まっています。

メンバーの1人が、私にこういいました。
――SSTに生命を吹きこんでくれたのは、野中郁次郎先生だった。

SST以前に、日本ロシュは大失敗をしたと書きました。新たなプロジェクトを立ち上げるとき、社長の繁田寛昭は野中郁次郎先生に相談しています。2人は米国バークレイ大学院の先輩後輩だったのです。(明日につづく)

096:野中郁次郎先生から学んだこと(その1)

2019-01-11 | 銀塾・知だらけの学習塾
096:野中郁次郎先生から学んだこと(その1)
――第9講義:知(ナレッジマネジメント)
日本ロシュが実施した「SSTプロジェクト」は、名人芸移植プロジェクトとして話題になりました。1MR(製薬営業マン)につき、延べ20回のフル(丸1日)同行を施せば、平均的なMRは確実に優秀MRの域にたどり着くという信念から導入されたものです。

全国からトップクラスの営業リーダーと優秀MRを24名選抜しました。彼らは2年間にわたり、1人につき16人のMRのレベルアップに挑みます。つまり全社的な規模でみると、2年間で384人のMRの底上げをすることになります。

SSTメンバーは3人が1チームとなり、3か月間1つの営業所にはいります。その間メンバーは2MRとひたすら同行します。1週目がAさんだったら、翌週はBさんとの同行となります。Aさんには課題を与え、1週間を経てそれが単独でできるようになっているかの確認をします。

当時の日本ロシュには700名のMRがいました。全体のほぼ半数のMRのレベルアップをすることになります。詳しいことは拙著(山本藤光)『営業ドキュメント「同行指導」の現場―わずか24人で「700人の営業平均値」を底上げ・ SSTプロジェクトの奇跡』(プレジデント社)をお読みください。小説仕立てですので、わかりやすいと思います。

私はSSTプロジェクト事務局長として、2年間奇跡の現場に立ちました。全国のトップ24名を引き抜いたのですから、現場の支店長たちから大ブーイングが起きました。「数字が落ちたらだれが責任をとるんだ?」と詰め寄った支店長もいました。そんな声に社長の繁田寛昭は、あっさりとこう答えました。
――責任は私がとります。

タイトルの野中郁次郎先生は、この時点ではまだ登場しません。(つづきは明日)