炉端での話題

折々に反応し揺れる思いを語りたい

遺産相続にかかわる課題

2015-06-06 09:56:21 | Weblog
親類縁者の逝去があり、遺産相続の手続きを引き受け、いくつかの課題に直面した。
その一つが銀行預金の遺産相続のための書類整備である。親戚一同の合議書は、比較的すんなりとまとまったが、銀行の担当者は銀行としての面目もあるらしく、法的に従った書類の提出を求められた。その課題に直面した事項について、同様な課題解決を行うために参考になると思われるので書き留めておくことにする。

銀行として被相続人と相続人の関係を明らかにする戸籍謄本を提出するように要請された。被相続人とは逝去した本人のことである。被相続人に配偶者がいる場合はその配偶者が相続人となり、子供達がいる場合は、その子供達が第一位の相続権があり、その範囲での遺産は比較的容易に処理できる。配偶者と子供達がない場合は、直系尊属である被相続人の父と母が第二位の相続権として遺産を相続する。
第一位、及び第二位の相続権者が逝去している場合は、第三位の相続権者として被相続人の兄弟姉妹がある。その兄弟姉妹がすでに逝去している場合は、その子供達が代襲相続人として相続権がある。ここで被相続人の直系の孫とか曾孫がいる場合は、その方が優先した代襲相続権者となる。
以上が法定相続人の範囲である。

対応した銀行は、この範囲の戸籍謄本と被相続人の出生から逝去までの戸籍謄本の提出を要請された。直面した事例は兄弟姉妹の代襲相続人しかいない場合であり、甥あるいは姪の代襲相続人から見ると祖父母の代までを含めた多数の戸籍謄本を収集することになる。
時間と手間がかかることは覚悟しなければならない。
弁護士とか司法書士に一切を依頼することもできるが、相応の費用がかかりこともあり、経験を積むことも意義があると思って引き受けることにした。
地方に点在する役所に戸籍謄本の発行を依頼したが、いまは個人情報保護のこともあり、必要とする戸籍謄本請求の内容、請求者との関係、請求者の本人確認として免許証等の提示が求められる。ある役所では、親族であるにもかかわらず直系尊属でない者には、戸籍に記載されている者の委任状が必要であると謄本の発刊を拒否されたことがある。しかしながら法務省の見解では、第三者が戸籍謄本を請求することができる場合として、自分の権利を行使したり、自分の義務を履行したりするために戸籍の記載事項を確認する必要があるような場合等は取得できると明確に記載されているので使用目的が明確であれば発刊されるはずである。

ここで収集した戸籍謄本に関連した事項を書き留めておこう。
先ずは明治憲法と戦後の昭和憲法のもとでの戸籍簿は、大きな変革がある。
戦前の戸籍簿には主となる戸主の元に多くの親類縁者が含まれているから、厖大な数の者の記録が記載されている。750円の発行手数料がかかることには納得できる。
戸籍の改製が昭和32年にすべて新しくするように実施されており、それまでの戸籍は通称として改製前とよんでいる。この改製前戸籍も明治19年、明治31年、大正4年にそれぞれ改製されている。
戦後の戸籍では、婚姻と共に分籍して新戸籍が編成される。
この新戸籍にも古い形式の改製原戸籍と平成6年から実施されているディジタル化された戸籍がある。
相続のために戸籍謄本を収集すると、ディジタル化された現状の戸籍では情報が欠落して記録されていることもあることから改製原戸籍が必要な場合も生じる。
ディジタル化戸籍を眺めていると、精査したわけではないが、役所によって記載内容に差違があるように思われる。恐らく統一した法務省の指導のもとに編成されていると信じられるが、役所での施行法律の解釈の差違が生じているようにも推察される。

少しばかり余談になるが、平成27年6月2日に日本年金機構のサイバー攻撃による個人情報の流出が報道された。サイバー攻撃によって市役所などの地方で保管されている戸籍情報が流出どころか喪失する可能性は否定できない。
体験した事実として、収集していた戸籍簿の中に戦前の市役所火災のために戸籍簿が喪失して再製されたことがあり、その記録がない除籍謄本を提出したところ内容の不備が指摘され、この対処に苦慮した。銀行担当者の慧眼には、さすが相続関係の探索追求のプロであると感心させられた。
各地方の役所は、保管している戸籍簿のサイバー攻撃に充分対処しているかどうかについて、筆者は危惧していることをつけ加えておきたい。電子的なディジタル化戸籍簿の喪失は個人的なレベルでの対処はほとんど不可能である。

それはさておき、現在のディジタル化戸籍の発行について述べておこう。
かつての戸籍謄本は、全部事項証明となり、戸籍抄本は、個人事項証明と改められているが、役所の窓口では従来の表現による謄本、抄本で通用する。
除籍された者の全部事項証明の発行手数料としては、たった1枚でありながら、戦前の除籍謄本同様に、750円かかるがこれは釈然としない。ちなみにこの手数料は全国統一である。

再度ながら余談を述べる。
筆者の周辺でも海外旅行先でパスポートの盗難に遭った方があり、その難儀を伺うと、パスポートの再発行には地元警察の盗難届けの他に戸籍抄本の提出を求められることがあったという。治安の悪い外国に出かける場合は、戸籍の個人事項証明を持参することをお薦めしておきたい。また本人確認を求められることもあるので写真のついた免許証とか身分証明書もパスポートとは別とに持参しておくことが肝要であろう。海外旅行にあって、個人を守る最終的な手段は、日本国の発行するパスポートであり、在国日本大使館である。

なお相続に関して戸籍謄本を取得すると除籍とか改製の他に、婚姻、転籍、分籍、家督相続などの接頭語がつく場合は、関連した戸籍謄本の取得も要請されることをつけ加えておくことにする。
(能)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿