炉端での話題

折々に反応し揺れる思いを語りたい

蕗の薹(ふきのとう)

2008-02-10 11:48:30 | Weblog
蕗の薹は早春を運んでくれる。
自然に最も近く味わえるのは酢みそ、薄く衣をつけたテンプラも絶妙である。佃煮にしたものを炊きたての白い御飯の上に載せて、いただくのもいい。
洋食にはない。
中華料理にもない。
日本人だけに許された舌に伝わる「シルバーしぶい美」である。
スーパーとかコンビニの調理済みパッケージの愛好家には通じない、さらには年若い子供達からも敬遠される味覚である。
なんとも人生をふりかえるとき、自らの至らなかったことをおもいおこさせるホロ苦さが、早春の息吹とともに味覚となってただよう。その春の息吹は、翌朝、個室の中、ほとばしりいでる液体からも、馥郁として香ぐわい、ただよってくる。
かってゴールデン・ウィークが過ぎた頃、青森をおとずれたことがある。蕗の薹、道端に、ビッシリと並ぶようにのぞきでていたもの、持てるだけ、つみ取ってきたことがある。
蕗は、路の草と書く。
道端にある蕗の薹、あまりにも多すぎて土地の人達は見向きもしないという。蕗の薹、これを嬉しそうに摘む都会人、いぶかしげに見られたものである。
いまは商品価値があり、スーパーにもならんでいるから、それ程容易に蕗の薹を摘むことはできなくなっているかも知れない。

蕗の薹のほろにがさ、いかなる理由なのかと疑う。蕗の薹は、蕗が子孫をのこすためのつぼみである。つぼみを動物に食い荒らされないように、苦みを含ませるのではないかと、自から納得しながら疑いを晴らす。
「良薬口に苦し」という諺がある。このほろ苦さ、薬になるのかとインターネットを訪ね廻ってみる。風邪とか咳止めにいいとか、健胃として薬効があると多くの宣伝がある。多分そうかもしれない。
私は、健脳にもいいと信じたい。ほろ苦さは、胃の働きをよくすると同時に、脳に早春を思い起こさせ、脳の中枢から豊かな情感をもたらす様々なホルモン物質を湧出させるからである。いわば味覚記憶経路の活性化をもたらす。さらに翌朝の個室での事象を観測すると、体外排出機構の洗浄作用にもかかわる効果があると、これまた信じたい。
(農)

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