いま民主党の菅内閣は、通常国会に平成23年度の国家予算案を提出している。膨大な赤字国債を抱えての新年度予算である。国会審議のかたわら、菅総理は消費税の税率を改定しなければ、この国家的な財政難を乗り切ることが困難であると考えているように様々な言動から見てとれる。
かりに消費税が現在の5%から10%に切り上げられたとしよう。この切り上げは、ある日ある時からはじまるであろうが、階段的に変化することになる。この階段的に変化する動態は、前回の「報道と微分値」に述べたように、インパルスあるいはインパクト、つまり衝撃である。数学的に、階段状に変化する関数の微分値は、無限大の大きさを持ち、間隔が無限小のインパルス(δ関数と定義)として扱う。実際の現象ではこのインパルスは、ある有限の値と幅を持つ。たとえば5%から10%の消費税の切り上げより、5%から20%の切り上げの方が大きな衝撃となる。
衝撃が社会的、あるいは経済的に発生したとき、その影響は衝撃の大きさとその衝撃に耐えうる構造によって異なる。社会的、経済的な構造をシステムとして見れば、衝撃の大きさによって
①衝撃の影響はほとんどないようにすぐにおさまる
②衝撃の影響はかなり大きく、時間がかかるがやがておさまる
③衝撃のためにシステムは破壊する
と大まかに3つの事態が想定できる。
システムとしての社会的、経済的な構造が剛健で、しかも柔軟性があれば、かなり大きな衝撃であってもシステムの破壊には至らないであろう。
衝撃があったとしてもシステムとしては影響がない、あるいは少なくてすむような社会的、経済的基盤と構造を整えるのがプロの政治家による政治である。
プロの政治家とは、優れた世界観と歴史観を備え、先験的な明察と予測ができる能力をもとに、将来のあるべき国家の姿を理念として持ち、しかもその理念を周囲の民衆に理解させる説得力を兼ね備えなければならない。そのようなプロの政治家が、政治に携わってほしい。
シロウトでも頭数さえそろえば、投票によって勝ち得るから、「いま現在さえよければいい」という政策の政治を行えば、社会的・経済的なシステム構造は崩弱化して、わずかな衝撃で破壊を招く。いま日本の国体は、システムとして崩弱化しつつあるのではなかろうかと危惧の念を持っている。
(納)
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