炉端での話題

折々に反応し揺れる思いを語りたい

障子紙ハガシ剤の陥穽

2008-04-13 09:21:13 | Weblog
バッド・デザインの話題に相乗りする。
ある建築設計事務所のオフィスを訪れたところ、カーテンの代わりに障子がしつらえてある。近代オフィスに趣向を添えるグッド・デザインである。障子は、カーテンに勝る。遮光の程度がほどよく部屋の中は暖かな雰囲気に包まれる。薄いカーテンなどが風にふわりと揺れて、体にまとわりつく不快感はない。

障子は素晴らしい建具である。
しかし、障子紙を張り替えるというメインテナンスの労働を伴うのが大きな欠点である。
「障子紙を張り替えなさい」という声がかかる。
新しい障子紙とノリを求めにホームセンターを訪れたところ障子紙ハガシ剤が側に置いてある。古い障子紙をはがすのも厄介な作業であり、これはいいものがあるものだと購入してこれを使うことにした。
これが諸悪の根元となった。
障子紙ハガシ剤を使うと、古い紙は簡単に、しかもきれいにはがれる。表面活性剤が含まれているらしい。さすがハイテクと感心する。

しかしその感心は絶望に変わる。
新しい障子紙を貼って霧吹きをかけ、イッチョウあがりと、お茶を飲んでいたところそよ風が吹き込んで、新しくたんせい込めて貼り付けた障子紙がはらりと落ちた。なんとハガシ剤が、その目的と使命を忠実に果たしているのである。新しい障子紙もはがしてしまう。
致し方なく障子の桟を洗うことにする。
すると障子の桟の材木そのものに表面活性剤がしみ込んで作用している。水で洗い、こするたびに桟の木目がバラバラにほつれてくる。すさまじいまでのハガシ剤の効力である。障子本体の破壊に連鎖するのである。
爾来、このハガシ剤のために我が家の障子は、古来の建具のよさを失っている。

最大のバッド・デザインは、ハガシ剤の説明書にこのような事態を引き起こす注意事項が書かれていないことである。
(悩)