炉端での話題

折々に反応し揺れる思いを語りたい

ミラー・ニューロンのお話し

2008-03-15 12:39:04 | Weblog
ミラー・ニューロンのことが、イタリア、パルマ大学のリゾラッティらによって1992年に発表されている。サルの脳の一部、餌を摘む行動で活動する分野がある。この餌を摘むのと同じ行動をヒトが行うのをサルが見たとき、この部分が活動することを発見した。自らの行動と同じ行為を見て、鏡に写したように反応することからミラー・ニューロンと名付けたという。

私は、かって不思議な体験をしたことがある。
ある友人、かりにタノモシ君ということにする。ほとんど毎日、このタノモシ君と起居を共にし、かつ机を並べて勉強を行い、さらに課題について語りあった。四六時中のお付き合いである。
ある時、難しい問題を討議することがあった。タノモシ君と向かい合って、激論する。
その内に壁にぶつかった。議論は尽きた。
二人とも、考え込む。
無言のまま時間が経つ。
一言「そうかぁ」というと、タノモシ君「そうかもしれない」という。
再び沈黙。
「ダメだ」とため息をつくと、「ダメだね」とタノモシ君。
決しておうむ返しの発言ではない。
長い沈黙が続く。お互いに顔をみ合わせたままである。
「わかった」、タノモシ君はすかさず「そう、そうだよ。うまくいった」という。
そして問題は解決した。タノモシ君と私は、同じ指向のもとに、同じ思考の試行を繰り返していたのである。言葉の交換は、単に思考プロセスのタイミングを合わせるためだけであった。
側には誰もいない。もしいたら二人の交わす禅問答に唖然としていただろう。
今にして思えば、ニューロンがミラーのように活動していたと解釈できる。この解釈が正しければ、ヒトの頭脳にはいたるところ、しかもヒトごとに異なった場所にミラー・ニューロンが存在するはずである。つまりミラー・ニューロンという特殊なニューロン分野があるわけではない。ニューロンの結合によって形成された記憶経路がミラーのように反応するとの仮説がたてられるのではないか。パルマ大学のリゾラッティらは、サルの餌を摘む行動にかかわるニューロンが、ヒトの同じ行動を見てミラーのごとく活性化する分野を特定したといえないだろうか。
わずか17文字の俳句、作者のもつ情感、これを鏡に映すかのごとく、あるいはそれ以上の内容で、受け手のニューロン記憶経路の活性化をうながすと考えてもいい。
ニューロンのミラー活動は、コミュニケーションの基盤と見なすことができる。
(脳)