はなうたまじりにひとりごと

私視線で、観て聴いて♪素直に気ままに我儘に。主に宝塚の舞台のこと、その他諸々?についてお喋りを。

The Morning of Anniversary ~あさ・かな妄想 その1

2007-01-10 22:32:06 | Weblog
★これは、Vちゃんが思いついた空想話に、私が勝手に付け加え、膨らませた妄想話です。あくまでも、根拠のない妄想ですので、ご了承くださいますように。
★イメージと違う、描写がたどたどしい、などの、不快さを味わわれる方もいらっしゃるかと思いますが…あくまでも、勝手な妄想でしかありませんので、見なかったことにしてください。

と、いうことで、Vちゃんに捧げる妄想、です。
Vちゃん、感想は、メールではなく、コメントつけてね?(笑)

☆~・~☆~・~☆

遠くで目覚ましが鳴っている。
だんだん音が大きくなっている。
耳をすましても、他に物音が聞こえてこない。
いや、何より、その電子音が止まる気配を感じられない。

とあるマンションの一室。
広々としたリビングに接したダイニング。朝の光がやっと注ぎはじめたところだ。
柔らかい光が、白い壁紙に当たり、朝を演出している。
ダイニングの奥に、キッチン。ここで、かなみは支度に追われていた。
かなみは、小さく息をついて、キッチンとダイニングを結ぶカウンターに、片手をついた。そこから、ダイニングの壁にかかった時計を見上げて、手にしていたボールの中身と見比べる。
キッチンを出るなら今のうち。大きく頷くと、ボールを調理台に置いて、フライパンを温めていた、電磁調理器のスイッチを切った。

まだ、目覚ましは飽きもせず、音量を上げ続けている。
パタパタとスリッパの音をたてながら、寝室に駆け込むと、まず、分厚いカーテンを開ける。その向こうのレースのカーテン越しに、光が差し込み、優しく部屋を包みこんだ。
ダブルベッドの上の、大きな羽布団。それが、すっかりひとかたまりになって、ちょっとした小山を成していた。
そこから、腕が一本伸びていて…伸びたまま指先はぐったりと下を向いている。
かなみは、ベッドに膝から乗って、目覚まし時計に手を伸ばした。
アラームのスイッチに手が触れると、耳を塞ぎたくなるほどの不愉快な大きな音が、ぴたりと止んだ。
訪れる静寂に、思わずホッと息をつく。
やれやれ…。かなみは、そのままベッドの上にぺたんと正座すると、顔にかかった髪をそっと耳にかけた。僅かに首を傾げて、今度は布団のかたまりの方に向き直る。
突き出している手をそっと掴むと、既に指先は冷たくなりかかっていた。
かなみは、思わず、クスッと笑った。手を握られても、その主は、ピクリとも動かない。
「おはよう、起きて」
指先をぎゅっと握って揺さぶると、布団の中から、
「うーん…」
と唸る声がした。かなみの指から逃れ、手を引っ込めようとする。
かなみは、ずるずると寄って行って、今度は、羽布団の端に手を掛けた。
「あなた!朝よ!!」
一気に布団をはぎ取る。中から現れたのは、濃紺のパジャマにくるまれた青年だった。彼はうつぶせに丸くなったまま、震え上がって目を開けた。
「…寒い…」
「おはよう!さ、支度してね」
かなみは、満面の笑みで、夫の顔を覗きこむと、ベッドを下りようと彼に背を向けた。
と、その途端、彼女の肩に暖かいものが、ズシッと覆いかぶさった。
「じゅん…?」
かなみが、首だけで振り返ると、そこにうっとりと目を閉じた彼の顔があった。髪が無造作にふわりと半分、目にかかったまま、口元はやわらかく微笑んでいる。
「あったかい…」
「もう、早くしないと……」
ふくれっ面を作ろうとしたものの、あまりの彼の幸せそうな顔に、かなみは吹き出した。
「メリークリスマス!」
じゅんは言って、かなみを後ろから抱き締め、
「クリスマスなんだもの、少しくらい…」
言いかけて、はっとしたように目を見開いた。
「そうよ、クリスマスよ?」
かなみが意味ありげに微笑むと、じゅんは、真顔になって、二、三度瞬きをした。
「そうだね」
もう一度、かなみをぎゅっと抱き締める。そして、絡めた腕を名残惜しそうに解きながら、彼女の顎を優しく引き寄せた。そっと、キス。
かなみは、ふっと力が抜けて目を閉じた。甘美な時間が胸の奥に流れ込む。
再び開いた彼女の瞳が、僅かに潤んでいるのを、じゅんは、少し照れたようにみつめた。
「うん、起きようか?」
小さな声で彼が言うと、かなみは、自分のエプロンのフリルに手が触れて、気がついた。
「そうだ、私、まだご飯作ってる途中だったんだわ、大変!」
慌てて二人で、ベッドを滑り下りる。
「さ、どっちが早いか…」
じゅんが、パシャマのボタンに手を掛けながら言った。
「ずるい、そんなの…」
かなみは言いかけて、寝室を飛び出した。やや薄暗い廊下を走る彼女の後ろから、彼の笑い声が追いかけて来る。
かなみも、一緒に笑い出しながら、リビングの入口で振り返って、言った。
「負けないから!」
その声に、じゅんも、寝室のドアから顔を覗かせて、悪戯っぽく、口を尖らせ、片眉を上げてみせた。

食事を楽しむ時間は無かった。
じゅんが、ワイシャツの上にベストを着て、ダイニングに飛び込んだのと、かなみが、トーストの皿をテーブルに置いたのが、ほぼ同時だった。
二人で、同時に時計を見て、顔を見合わせる。
じゅんは、テーブルに着くと、湯気をあげているスクランブルエッグをスプーンですくい、トーストの上に載せた。
かなみは、淹れたての珈琲をマグカップに注いで、じゅんの前に置いて、自分もテーブルに着く。
じゅんは無言で、口を動かし続けている。かなみも、なんとなく言葉をかけられずに、ゆっくりとトーストを口に運んだ。
テレビのニュースが、昨夜の街のイルミネーションを映し出している。賑やか街並み。
昨夜は、じゅんの仕事関係のパーティだった。二人で腕を組んでいても、流れる時間は甘やかではなかった。
かなみは、それを思い起こして、画面の中の街を行く恋人たちの姿に目を奪われた。
「ごちそうさま」
じゅんの声に、我に帰る。彼は、もうテーブルを離れようとしていた。
手早く食器を重ねている。
「今日はいいわ。時間無いでしょう」
かなみは言って、片付けようとする彼の手を押しとどめた。
「悪い!」
じゅんは、軽く手を挙げて、目を瞑ってみせる。次の瞬間には、もうかなみに背を向けていた。

「忘れ物はない?」
かなみの問い掛けに、じゅんは、コートを羽織りながら、大きく頷いた。
「うん、多分」
「待って」
かなみは、軽く背伸びをして彼のコートの襟を確認し、ネクタイを整えた。
されるままになりながら、じゅんが言う。
「あのさ、かなみ」
「ん?」
かなみは、目を大きく見開いて、小脇に抱えていた、マフラーをじゅんに差し出した。
「今夜、食事でもどう?だって…」
じゅんは、マフラーを首に掛けながら、少しはにかんだ微笑みを浮かべた。
「うん…」
かなみは、自分の頬が少し上気するのを感じる。
「じゃあ、7:00に会社の下に来てくれる?…店、予約しとくよ」
じゅんは、ぐるんとマフラーを巻き付けて、かなみに背を向け、ドアの鍵を開けた。
「うん」
かなみは、こくん、と小さく頷いた。
がちゃん、とドアの開く音。
「じゃ、行って来る」
「行ってらっしゃい…」
ドアの隙間から、じゅんはするりと外に抜け出る。かなみは、にこっと笑って、胸元で小さく手を振った。
遠ざかるじゅんの背中は、徐々に閉まるドアの向こうに消えた。
かなみは、壁に寄り掛かって、ゆっくり目を閉じた。大きく息を吐き出して、呟く。
「結婚一周年…おめでとう」