酒のさかな

平凡な笑市民が日ごろの暮らしの中で出会ったこと
【縦横無尽探険隊別館】

バイパス手術

2008-04-18 00:05:17 | 技術系
親父が心臓のバイパス手術を受け、無事に終了した。
今のところ、術後肺炎もなく順調のようだ。
これまでいろいろ調べて理解したことを書き残しておく。

親父の病状は左冠状動脈前下降枝の狭窄。
それも分岐付近両側2箇所の75%狭窄である。
一般的には心臓カテーテルによるステント留置術が行われるが、心カテ直前の検査で中止となった。
医師からは開胸しバイパス手術を勧められた。

カテーテル手術は安全な手術と”誤解”されているきらいがある。
実際に侵襲度が少なく患者の負担は軽いが、決して”安全”な手術ではない。
特に術後長期にわたり血栓が起きやすいのである。
最近は薬剤溶出型のステントが開発されているが、メーカーにより予後に違いあることが問題となっている。
できればメーカー指定でお願いしたいところだが、そうもいかない。
さらに問題となるのは、太い血管ではステント自体も大きくなり、ただでさえ狭くなっていて広げる必要のある場所に血流を遮る大きな異物を挿入しなければならないことなのである。
心臓外科専門病院の友人によれば、10秒のカウントダウンで中断しながら血流を確保し、ビクビクしながら何度も位置調整するそうで、しくじるといきなり心不全を起こし緊急手術となる場合があるらしい。
その場合、死亡率が跳ね上がるというのである。

また分岐付近のステント留置は血栓の発生が多く、予後が悪い。
論文によるとエビデンスBであり、今もって第一選択はバイパス手術となる。
うちの親父もまさにその状況であった。

バイパス自体は、心臓の手術とはいえ臓器外側血管の手術のためその危険性はさほど大きくない。
医療機器の進歩により拍動下で出来るので、心臓を止め再始動する時の電解質コントロールもなく安全度は高いのである。
ちなみに、TVドラマ「医龍」のファンである嫁さんも勘違いしていたが、今時は〔静脈グラフト〕をホースの代わりとして採取し、詰まっている場所を迂回するようなことは少ない。
最近の〔動脈グラフト〕は、不要な(というと違うかも知れないが^^;)動脈を引っ張ってきて、その血液をそのまま心臓の血管に流すというもの。
静脈に比べ、耐用年数^^;も10年以上もつらしい。
まぁ、電源配線を近くから持ってきてつなぐみたいな手術である。
胸を開くので身体侵襲は大きいが、緊急でない計画的な手術の場合は「ハンダ付けで配線を1本つなぐ」ようなものだ(と思っている)。
びびる親父に『心カテよりも後々安全で、10年はもつから死ぬまで大丈夫』と変な説得をして、手術に抵抗することをあきらめさせたのである。

ケースによるが、安易にカテーテル手術は安全だと思い込まないほうがいい。
予後のリスクを理解できない普通の患者は絶対に開胸手術を希望するはずがない。
患者がカテーテル手術の方が安全だと盲信している以上、患者の意向を大切にする医師によって、もしかすると”危険な”カテーテル手術になってしまう可能性があるのである。

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