酒のさかな

平凡な笑市民が日ごろの暮らしの中で出会ったこと
【縦横無尽探険隊別館】

あたりまえが正しいと思うなよ〔疫学のすすめ〕

2012-02-09 22:39:37 | 技術系
前回はタバコ擁護のネタを書いてみた。
まぁ、あれを信じるかどうかはおまかせするとして、研究者の発表を普通に信じてしまうと大間違いすることがある。
しかし、「研究の結果こういうことがわかった」という発表があると普通の人は無条件に信じてしまい、『バカこけ』と反論しても聞く耳持たない。
この「聞く耳持たない」ことが普通だと思っている人にいかに多いことか。

10年以上前の話だが、ある保健医療の研究発表会の出来事。
栄養士と保健師のグループが発表した。

「夕食を家族と一緒に食べない人はキレやすい」
ある会社の社員に対し相当数のデータを収集し、食事の状況とストレスとを関連付けた研究である。
朝食や昼食、夕食にどんな物を食べているか、どんな状況で食べているかと、本人のイライラや疲労など精神身体状況を調査したもの。
統計処理の結果、夕食を家族と一緒に取らないことと、ストレスに因果関係があるとしたものである。
その当時、キレる子供が問題になっており、研究は本当にタイムリーだった。
TVや新聞でも朝食抜きや一人食事とキレることに関係があるなど、色々な報道がされていた。
「なるほど、やっぱり家族との食事が大切なんだ」
会場にいた人のほとんどがそう感じたに違いない。

さて、本当にそうだろうか。
瞬時に心の中で『バカこけ』と思っていた矢先、座長だった大学の女医さんが質問した。
「夕食を家族と食べることのできない要因は何ですか?」
「残業とかで家で一緒に食べられないのではないですか?」
「残業で毎日夜遅かったらストレスもたまりますよねぇ」
「そこらへん、何か考察がありませんか?」

家族と一緒に食べないことがストレスの原因であると「新発見」して、思った通りの結果に得意満面で発表していた栄養士がフリーズ。

あたりまえである。
誰が考えても『バカこけ』なのである。
しかし、自分の思いと一致する結果に誰も疑うことを停止し、単なる新興宗教の信者となっているのだ。

以前、同じようなネタを書いたことがある。
前の記事:データ捏造見逃しより、データ読めないことが重大
こんなのも・・・
カイ2乗検定の怪【なんちゃって統計学】
極論だけど、原因なければ絶対発生しないのだ。
もっとも、実際のフィールド調査では原因なしでも事象0とはならない。
0にならなかった要因を考え、それが否定できないことを確認することも必要なのだ。
それでこそ私の主張する、「エピの極意その1:ネガティブデータを生かす」ってことなのだ。

同じことを何度も書く意味は、自分たちの仲間が「考えることを放棄している」ように感じるからである。
少なくともホントのことを知りたいという知的欲求があるのなら、まず「世の中をナナメ45°から見ること」から始めようではないか。

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