酒のさかな

平凡な笑市民が日ごろの暮らしの中で出会ったこと
【縦横無尽探険隊別館】

科学担当記者のいない二流紙

2010-01-19 23:06:39 | 怒っちゃうぞ系
朝一で新聞を読むのが、物心ついた時からの日課である。
なんじゃこりゃ!
最近のマスコミはTVも新聞も記事を書く人の理解レベルが低すぎると思っていたが、こりゃひどい。
まぁ、コストダウンで専門の担当記者がいなくなったからであろう。
TVのアナウンサーがジャーナリストばりに自分の意見を言うようになって久しいが、昔ながらのジャーナリストや記者が意見を言うときには、それなりに事象の問題点を理解してから話していたものだ。

佐賀新聞の記事より

六価クロム、長年検出されるけど… 対策なく住民に不安
 佐賀県三養基郡基山町宮浦の民家の井戸水から、環境基準を上回る六価クロムが18年間にわたって検出され続けている。佐賀県は毎年の調査で異常値を確認し「飲用禁止」を指導しているが、原因究明や還元剤投与などの対策は「住民生活に影響はなく、費用面でも難しい」として取っていない。住民は長年の間、不安を抱えたままだ。
環境基準を上回る六価クロム・・・
〔環境基準〕は一生涯飲み続けても何の影響も発生しない濃度(最大無作用量)に、さらに100倍の安全係数を乗じてある。
地下水の環境基準を超えることなど、地質の影響で普通の井戸水でもよくあるし、そこらの温泉水にはあたりまえにいくらでもあることだ。
では、その温泉で住民が不安がるだろうか?
人為的汚染であろうが自然由来であろうが人や環境に与える有害性は同じなのに、である。


 六価クロムが検出されているのは、住民が1974年から飲用に使っていた井戸。91年に濁っていることに気づき、当時の鳥栖保健所の調査で基準値(1リットル当たり0・05ミリグラム)の40倍の2ミリグラムが検出された。年2回の定期検査が続いているが、基準を下回ったことはなく、昨年9月も0・81ミリグラムを検出した。
基準の40倍は「理論的に影響ない」としても飲みたくはない。
しかし、0.5→0.8程度の環境基準オーバーなら、それこそ自然界にごろごろしている。
全く気にせずに飲まれ、何の不具合もないのが普通だ。


 県循環型社会推進課は飲用しないよう指導しているが、還元剤投与や土壌入れ替えなどの対策は取っていない。同課は、検出量が下がっていることから「自然浄化に向かっている」と判断。上水道が普及し、地下水が必要ない現状から「広域的に健康被害が出るとは考えにくく、行政の費用負担は難しい」とし、抜本的な問題解決には踏み込んでいない。
~以下省略~
還元剤投与や土壌入れ替えなどの対策・・・
六価クロムを処理する還元剤として一般的なものは亜硝酸塩である。
亜硝酸塩は血液毒として環境基準が定まっており、六価クロムより致死的な物質だ。
この記者は、環境基準を微妙に超えただけの「絶対影響ない濃度の」六価クロムの危険性を訴えているのだから、処理をして飲用できる安全な地下水を期待していると考える。
そこに猛毒を投与して(賢い方はお解かりだと思うが、希薄濃度の処理は圧倒的過量の処理剤を必要とする)飲用水として最も危険な地下水汚染をしてしまう対策を望むのか???
小学生にでもわかることだと思うが。
また、人為的汚染であるほんの微々たる環境基準オーバーに土壌入替を望むのなら、温泉地の土壌や有明海の海水は全部入れ替えるべきでしょう。
繰り返すが、人為的汚染であろうが自然由来であろうが、人や環境に与える有害性は同じなのである。


ネットには書かれていないが、新聞紙面にはさらにおバカなことが。
「六価クロムは鼻中隔穿孔をおこす有害物質」みたいなことが書かれていたと思う。
県の専門家からでも聞いたのか、自分で調べたのか知らないが、大笑いである。
確かに公害としての六価クロムは、採掘現場や工場内での粉塵を吸うことによって、鼻粘膜を侵襲し、穿孔をおこすことが特徴的である。
でも地下水飲んで六価クロムで鼻に穿孔を起こしたら、学説を覆す大発見である。
そう、ここまで読んで気づいたアナタは、今すぐ科学担当記者になれる。
少なくとも、今回の記事を書いた記者より論理的である。
地下水飲んだ場合の六価クロムの被害は、第一にお腹が痛くなることなのである。
(ただし、今回の微々たる濃度では絶対に起こらない!)