【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

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「大鹿村騒動記」

2011-07-19 | ★橋63系統(小滝橋車庫前~新橋駅)

長野の山の中で鹿料理店を開いている男のところへ、駆け落ちして逃げた女房と親友の男が帰ってくる。
ただ、それだけの話なのに、やたらおもしろい。
男は原田芳雄、女房と親友が大楠道代、岸部一徳。この食えないメンバーがからめば、話がおもしろくならないわけがない。
鹿料理店の名前が「ディア・イーター」なんて鹿だけに人を小馬鹿にしたネーミングだし、ここで繰り広げられる三人の愛憎交じった掛け合いが、最高におかしい。
いい年をしたおとなたちが無邪気にじゃれ合っているんだか、本気なのかわからないドタバタを繰り広げる。
文字通り、騒動記。人情喜劇の見本のような痛快な映画に仕上がったわね。
「突然炎のごとく」「冒険者たち」「明日に向って撃て!」の昔から、男二人に女一人というのは黄金のシチュエーションなんだけど、年食った三人組でもそのジンクスは変わらなかった。
そればかりじゃない。周りを取り囲むのが、三國連太郎、佐藤浩市、石橋蓮司、松たか子、瑛太といった、錚々たる面々。
話はみみっちいのに、なんとも贅沢な布陣。しかも、みんながみんな役どころを抑えたいい芝居をしている。
それも功を奏して、なんとも豊饒な映画になった。
ときおりはさまれる子鹿のショットが、どうという意味もないのに、とてもいいアクセントになったりして。
一瞬はさまれる原田芳雄の鬼気迫る表情がまた、効いている。
そういう、さりげない気配りが映画を豊かにするんだっていうことを、港を舞台にしたアニメーションを撮った映画人たちにも、わかってほしいな。
それは、また別の話。この映画でいうと、原田芳雄は村歌舞伎の主役を長年張っている。昔は逃げた女房の大楠道代と同じ舞台に立ったこともある。
こんな山奥で本格的な村歌舞伎が昔から受け継がれているっていうのが、また絶妙で、文化とか自然とか伝統とか、映画に想像以上の味わいを与えている。
夫婦がヨリを戻すのかどうか、村歌舞伎の演目と被ってくる、というのは予想されるところだけど、注目したいのは、この歌舞伎の幕の使い方。
村に帰ってきた昔の女房たちと男が出会うシーンで閉めたり開けたりされる幕。
そして、佐藤浩市が入院した病室でのカーテン。
小道具をきちんと生かしているなあって感心する。
脚本・荒井晴彦、監督・阪本順治が、ほんとに丁寧な仕事をしている。
このメンバーで続編を観たいくらいだ。
でも、主役の原田芳雄はきょう、亡くなっちゃったのよ。
馬鹿な!

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2 コメント

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ご冥福をお祈りします (ingram)
2011-07-19 23:44:23
原田さん、亡くなられてしまったんですね。
また、スクリーンに戻ってきて欲しいと思っていただけに、残念です。

この作品、面白そうですね。是非観にいきたいです。役者も魅力的な面子だし。
■ingramさんへ (ジョー)
2011-07-21 21:31:01
ぜひご覧になってください。
原田さんの遺作としてだけでなく、
今年屈指の映画です。

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