この駅、地下に駐輪場があるのよ。
チュウリン場?
そう、チュウリン場。
じゃあ、ハチ公もいるのか?
何で?
チュウリン・ハチ公。
・・・・・・。
無視するな。
まあ、少なくとも欧米人には通じない冗談ね。
でも、忠犬ハチ公の話は欧米人にも理解できるらしい。ラッセ・ハルストレムが映画化した。
「マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ」で宇宙に行ったかわいそうなライカ犬の映画をつくった監督だから、犬の話には食指が動くのかもね。
ハチ公のご主人になるのが、リチャード・ギア。
脂ぎったところのない彼の性格は、こういうおとぎばなしのような物語にぴったりだった。
でも、事実。
日本人なら誰でも知ってる。
舞台をアメリカに移しただけで、秋田犬のハチ公とご主人の物語っていうのはそのままだから、新鮮味は何にもないはずなんだけど、これが予想外に泣ける、泣ける。
小さい頃から見たり聞いたりした話そのままなんだけど、秋田犬がやたらかわいくてねえ。
帰らぬご主人を待つ後ろ姿。さみしげなまなざし。もの言わぬだけに、けなげさも尋常じゃない。
やっぱり、犬は秋田犬に限るわよね。
プードルとかダックスフンドだったら、ここまで感情移入できたかどうか。
ストイックな感じの秋田犬だからいいのよねえ。
春、夏、秋、冬と季節は移ろうのに、帰ってこないご主人をひたすら待ち続けるハチの物思いに耽ったような顔をワンカットでとらえ続ける場面なんて、美しくもあわれで、映画史に残るんじゃないかと思えるほどの名シーンだった。
犬には雑念がないからね。
人間には雑念がある。
とくにあなたは。
そしてお前も。
犬が駅でご主人を待ち続けるだけのなんともシンプルな話には、よけいなドラマはまったく付け加えられていないんだけど、それがかえってじっくりとハチの気持ちを察する時間を与えてくれて、切ない、切ない。
帰ってこないご主人を毎日毎日、何年も何年も待ち続けるなんて、その間どんな気持ちでいたんだろうとあらためて考えちゃうんだよなあ。
ときどきハチの目線でとらえた映像もはさまるんだけど、犬からの目線だけにモノクロっぽい処理がしてある。
犬は物を白黒でしか見えないっていうからな。
ところが死ぬ間際に見る夢だけはカラーになっている。
ご主人とたわむれあった楽しい日々の回想。犬でも夢だけは色付きで見るのかな。
たかが犬の回想シーンに、こんなに泣かされるとは思いがけなかったわ。
「世界の中心で愛を叫ぶ」みたいな映画には一滴の涙も出ないのにな。
やっぱり、犬と子どもには勝てないってことかな。
犬は人間を裏切らないからな。
人間は人間を裏切るけどね。
昔、我が家で飼ってた犬が、引っ越ししたら、いなくなって探したらもとの家に戻ってたなんてことがあったのを何十年ぶりに思い出した。
元の家までの道順知ってたの?
それが車に乗せて引っ越したからわからないはずなのに、どうやって戻ったんだろうと、いまだに謎なんだ。
いずれにせよ、あなたの犬も忠犬だったんだ。
いや、自転車で散歩させてたから、チュウリンだ。
・・・・・・。
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