【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

「母べえ」:有明テニスの森バス停付近の会話

2008-01-23 | ★東16系統(東京駅~ビッグサイト)

なに、ソワソワしてるの?
いや、吉永小百合って、テニスとか乗馬が趣味らしいから、ひょっとして有明あたりにいたりしないかなあと思って。
いるわけないでしょ。
でも、俺がいると知れば、来てくれるかもしれないぜ。
なに、考えてるの。親しくもなんともないのに。
そんなことはない。この正月なんて、彼女から俺のところにじきじきに年賀状がきたくらいの仲だ。
ああ、「母べえ」の年賀状ね。あれは、みんなのところに来たの。
え、そうなの?俺に気があるのかと思ったのは、ただの初夢だったか。
でも、いい映画だったでしょ、「母べえ」。
戦時中に自分の夫が反政府活動で投獄された母親が、幼い二人の姉妹を女手ひとつで育てるって話。実年齢からいえば、吉永小百合はあの姉妹のおばあちゃん役でもおかしくないところだけど、さすが、大女優、そのあたりは細心の注意を払って母親を演じていた。
設定からいえば、三十代か四十代の女性なんだけど、いまの三、四十代で、あの時代のおかあさんを演じられる女優なんて思いつかないもんねえ。包容力の違いかなあ。
エプロンではなく、割烹着を来たおかあさんに、二人の娘がべたっとまとわりついていく図。あれはもう、日本の家族の原点の姿だな。
夫がいない間、身の回りの世話をしてくれる教え子が、浅野忠信。これがまた、純朴な青年を演じていい味を出している。
ずっと座ってたんで足がつり、立ち上がろうとしてすってんころりと転ぶ。そんな、いまどきサザエさんでもやらないような手垢のついたギャグが、山田洋次の手にかかると浅野忠信の温厚な性格を現した的確な演出に映るから不思議だよなあ。
靴下に穴が空いているなんていうのも、使い古された手なのに、あれで一気に浅野忠信に好感を持っちゃう。
海に行って泳げなくて溺れかけるなんていうのも、ありがちなエピソードだ。
ところが、単なる笑い話に終わっていたはずのこのエピソードがのちのちの悲劇につながるんだから、もう、構成のうまさにうなるしかないわね。
溺れかけた浅野忠信を助けるため、吉永小百合が海に飛び込むんだけど、いやあ、その水泳姿の凛凛しいこと。まいりますねえ。
権力者には毅然とした態度で接しながら、生活のためにご近所とはそつなく接していく。そうやって戦争をくぐり抜けてきた日本女性の姿が、彼女の一挙一動から鮮やかに浮かび上がるわね。
そして、終戦から数十年後たった現在のシーン。ああ、あのかわいかった姉妹が、あんなおとなになっちゃうのかあ、っていう感慨。
それはないでしょう。「Little DJ 小さな恋の物語」で福田麻由子がおとなになったら広末涼子になってしまったのに比べれば、十分許せる範囲よ。
しかし、戦争の時代を描いた映画ってどれも、現在のシーンになると急に薄っぺらな感じになるのはどうしてなんだろうな。
それだけあの時代が濃密だったってことかもしれないわね。
・・・なあんて思いながら観ていたら、ラスト、吉永小百合のいまわの際のひとこと。あそこでまた、ガツンとかなづちで頭をたたかれたような衝撃がくる。
この映画が反戦映画だったって、あらためて思い知る瞬間よね。
いつも穏やかな山田洋次が、こんなストレートに怒りの鉄拳を放つとは思わなかった。
新藤兼人と一緒で、いま言っておかなければいけないっていう焦燥感があったのかもしれないわね。
あのころに比べれば、たとえば有明くんだりでのんびりとテニスをできる時代がどれだけ幸せか、思い知れ、ってことだな。
有明に吉永小百合はいないけどね。
それだけが心残りだ。


クリックしてもらえるとうれしいです。




ふたりが乗ったのは、都バス<東16系統>
東京駅八重洲口⇒通り三丁目⇒八丁堀二丁目⇒亀島橋⇒新川⇒住友ツインビル前⇒リバーシティ21⇒佃二丁目⇒月島駅前⇒新月島公園前⇒日本ユニシス本社前⇒IHI前⇒豊洲二丁目⇒豊洲駅前⇒深川五中前⇒東雲橋交差点⇒東雲一丁目⇒ジャパン・エア・ガシズ前⇒東雲都橋⇒都橋住宅前⇒かえつ有明中高前⇒有明二丁目⇒有明テニスの森⇒有明一丁目⇒フェリー埠頭入口⇒東京ビッグサイト






コメント (2)   トラックバック (35)   この記事についてブログを書く
« 「スウィーニー・トッド」:... | トップ | 「子猫の涙」:有明一丁目バ... »
最近の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんばんわ。 (michi)
2008-02-05 01:28:42
母の優しさと強さのほかに、
反戦もテーマの一つになっていましたよね。

楽しく羽根つきをしたり、家族で食卓を囲めることがどれほど幸せなことなのか、
深く考えさせられました。
コメントありがとうございます。 (ジョー)
2008-02-05 20:42:12
■michiさんへ
いや、ほんと、日常のなにげないひとコマがいとおしくなるような映画でしたね。

コメントを投稿

★東16系統(東京駅~ビッグサイト)」カテゴリの最新記事

35 トラックバック

年相応に…(映画/試写会:母べえ) (美味!な日々)
山田洋次監督、吉永小百合主演で話題の映画『母べえ』を我が母が「見たい見たい」と騒いでいたので、応募しまくって当たった試写会に母を伴って行ってきました。
映画「母べえ(かあべえ)」 (happy♪ happy♪♪)
昭和15年2月のある夜、東京に暮らす野上家では、 夫の滋(坂東三津五郎)と妻の佳代(吉永小百合)、 しっかり者の長女・初子(志田未来)と天真爛漫な次女・照美(佐藤未来)が 笑いの絶えない楽しい夕食を囲んでいた。 それが、家族揃った最後の晩餐になってしまった。...
『母べえ』 (ラムの大通り)
----これって最近、よく聞くタイトル。 お母さんの話だろうということは想像つくけど、 この“べえ”というのは一体ニャによ。 「じゃあ、順番に分かりやすく説明しよう。 この映画は、黒澤明監督のスクリプターとして知られる野上照代が、 幼い頃の家族の想い出を綴った...
松竹モニター試写会鑑賞 東劇にて ~ 山田 洋次 「 母べえ 」 (** Paradise Garage **)
明けまして、おめでとうございます。 今年もよろしくお願い致します。 良く晴れた元旦、火曜日です。 今日は、昨年の9月13日(木)に東劇にて行なわれた松竹モニター試写会で観させて頂いた、山田洋次氏の新作映画について。 『 母べえ 』 ( ‘07年 日本 ) 《 STA...
生きとるうちが花やで 生きとるうちに楽しまな損やのになあ ~ 野上 照代 「 母べえ 」 (** Paradise Garage **)
こんにちは。 良く晴れた金曜日です。 今日は、先日御紹介させて頂いた、 1月26日(土)より全国公開予定となっている、山田洋次氏監督作品の 映画『 母べえ 』 ( ‘07年 日本 ) の原作となった野上照代さんの本について。 『 母( かあ )べえ 』 野上 照代 ( 単行...
母べえ (あーうぃ だにぇっと)
監督:山田洋次 出演:吉永小百合/浅野忠信/檀れい/志田未来/佐藤未来 /笹野高史/でんでん/神戸浩/近藤公園/茅島成美 /中村梅之助/松田洋治/赤塚真人/吹越満/左時枝 /鈴木瑞穂/戸田恵子/大滝秀治/笑福亭鶴瓶/坂東三津五郎 他 【ストーリー】 ...
[映画『母べえ』を観た] (『甘噛み^^ 天才バカ板!』)
▼うちの<母べえ>が、映画『母べえ』の前売り券を持っていたので、いつもの<MOVIX昭島>に観に行く。 今夜は、レイトショーで『テラビシアにかける橋』も観に行く予定なので、<MOVIX昭島>三昧である。 うちの<母べえ>は、市の婦人会のお手伝いをしてい...
「母べえ」自由のない時代でも信じる思想を通して信じ合った強い絆の家族愛 (オールマイティにコメンテート)
「母べえ」は野上照代さん原作、山田洋次監督作品で、太平洋戦争へ突入する前の1940年から太平洋戦争へ突入した1942年を中心に父べえが治安維持法違反で検挙されて帰りを待つ母べえら家族とその知人と親戚の絆を描いたストーリーである。当時戦争に突き進んだ日本...
母べえ (2007) 132分 (極私的映画論+α)
浅野さんの3変化(爆)
『母べえ』舞台挨拶@丸の内ピカデリー1 (|あんぱ的日々放談|∇ ̄●)ο)
『SP』の岡田准一、『篤姫』の宮崎あおいの『陰日向に咲く』と晴海通りを挟んで、舞台挨拶2本立てを計画していたが、ジャニーズファンの恐るべき猛攻によりチケット瞬殺オクでも万単位で取引されていたので、泣く泣く1本のみ(爆)山田洋次監督と完成披露で握手したのは...
母べえ (パピ子と一緒にケ・セ・ラ・セラ)
混迷の時代を明るく懸命に生き抜いた母の物語。日本はもう、この「母」を忘れている__。 1940(昭和15)年の東京。野上家の父・滋(坂東三津五郎)と母・佳代(吉永小百合)、娘の初子(志田未来)と照美(佐藤未来)は、互いを「父べえ」「母べえ」「初べえ...
「 母べえ (2008)  」 (MoonDreamWorks★Fc2)
【母べえ 】2008年1月26日(土)公開 監督 ・ 脚本 : 山田...
「母べえ」を観る (紫@試写会マニア)
流石、山田洋次監督作品。映像が美しく、無駄がない。独特の清々しくも品のある、吉永小百合・主演「母べえ」を観てきました。 参加した試写会はいつものそれと違って、平均年齢がかなり高い感じ。正直なんで呼ばれたかちょっと不思議な(!!)感じもするくらい。上映中...
母べえ (ネタバレ映画館)
君は母べえを見たか?
母べえ (Akira's VOICE)
叫ばなくとも強烈に響く「戦争反対」の声。
母べえ(2007年、日本) (泉獺のどうでも映画批評)
 この映画は、試写会で観ました。 監督:山田洋次主演:吉永小百合出演:浅野忠信、
映画 【母べえ】 (ミチの雑記帳)
映画館にて「母べえ」 黒澤明作品の常連スタッフで知られる野上照代の自伝的小説「父へのレクイエム」を山田洋次監督が映画化。 おはなし:昭和15年。ドイツ文学者の父・滋(坂東三津五郎)が反戦を唱えたとして逮捕されてしまう。悲しみにくれる母・佳代(吉永小百合)...
★「母べえ」 (ひらりん的映画ブログ)
今週の平日休みは、「テラビシアにかける橋」か「陰日向に咲く」を観ようかと思ってたけど、 時間が合わず、吉永小百合主演の本作に。 ココ数年で映画を観だしたひらりんとしては、吉永小百合は初鑑賞。 高倉健さんのときにも書いたと思うけど、 お年の割りに、この人...
「母べえ」 (みんなシネマいいのに!)
 ♪この世は分からない ことがたくさんある・・・・・・ってそれは「母べえ」じゃな
母べえ (UkiUkiれいんぼーデイ)
JUGEMテーマ:映画 2008年1月26日 公開 「人に指をさしちゃいけません!」・・・て、これよく言われたなぁ~、ウチの"母べえ"に。 はい、これはどこを切っても山田洋次監督作品でございます!!! そして、全国の"サユリスト"が...
母べえ(映画館) (ひるめし。)
何もしなくても、母の手があった。悲しくても、母の胸があった。
母べえ (ようこそ劇場へ! Welcome to the Theatre!)
原作=野上照代「母べえ」。脚本=山田洋次、平松恵美子。監督=山田洋次。撮影=長沼六男。美術=出川三男。音楽=冨田勲。原作は、黒澤明監督のスクリプターを長年務めた野上照代さんが少女時代の思い出を綴ったノンフィクション。☆☆☆☆★
母べえ 08013 (猫姫じゃ)
母べえ 2008年   山田洋次 監督  野上照代 原作吉永小百合 浅野忠信 檀れい 志田未来 佐藤未来 坂東三津五郎 笑福亭鶴瓶 中村梅之助 ATOK 偉い! つるべ、一発変換ですね。 婆べえ、とか言う陰口も聞こえますが、なんのなんの、吉永小百合さん、お...
母べえ (ともみの言いたい放題♪)
昨秋に予告映像を見てから、ずっと楽しみにしてました・・・
『母(かあ)べえ』鑑賞レビュー! (★☆★風景写真blog★☆★healing Photo!)
『母(かあ)べえ』鑑賞レビュー! 下の画像をクリックで やや、大きめのサイズで ご覧になれます! ↓↓↓↓ 第58回ベルリン国際映画祭 コンペティション部門正式出品作 2008年 日本 公開日::::2008年1月26日(土) 上映時間::::13...
「母べえ」を観て (再出発日記)
世評があまりにも高いので、私は最初から冷静に、辛口でいこうと決心していた。監督・脚本:山田洋次出演:吉永小百合、浅野忠信、檀れい、志田未来、戸田恵子、坂東三津五郎特高役の笹野高史が土足で野上家に上がりこみ、調度品や蔵書を足蹴にする。江戸時代がかかったよ...
映画 「母べえ」 (SEA side)
 黒澤明監督の「羅生門」にスクリプターとして参加して以来、黒澤組の常連である野上照代さんの原作。この自伝的映画の中では学校の美術教師になっている。その戸田恵子演じる「照べえ」の語りで少女時代の思い出が語られる。  戦争に突入するその真っ只中から終戦に...
母べえ (caramelの映画日記)
【鑑賞】試写会 【公開日】2008年1月26日 【製作年/製作国】2007/日本 【監督】山田洋次 【出演】吉永さゆり/浅野忠信/壇れい/志田未来/坂東三津五郎 【原作】野上照代「父へのレクイエム」 昭和15年の東京。父と母、娘の初子と照美の野上家は、お互いを「....
『母べえ』 @新宿ジョイシネマ (映画な日々。読書な日々。)
日中戦争が泥沼化しつつある頃。野上家では、ドイツ文学者の夫・滋と妻・佳代、そしてしっかり者の長女・初子と天真爛漫な次女・照美の4人が貧しくも明るく暮らしていた。お互いを「父べえ」「母べえ」「初べえ」「照べえ」と呼び合う仲睦まじい家族だったが、昭和15年2月...
【母べえ】 (+++ Candy Cinema +++)
監督/山田洋次   脚本/山田洋次、平松恵美子    原作/ 野上照代 『母べえ』(オリジナル題『父へのレクイエム』)    製作年度...
母べえ・・・・・評価額1550円 (ノラネコの呑んで観るシネマ)
山田洋次は、今の日本映画界で巨匠と言う称号の似合う、数少ない映画監督の一人だと思う。 その事を改めて実感させてくれた、藤沢周平原作に...
母べえ [監督:山田洋次] (自主映画制作工房Stud!o Yunfat 映評のページ)
----??なキャスティングも、「サザエさん」実写版だと思うと深みが出てくる----
mini review 08317「母べえ」★★★★★☆☆☆☆☆ (サーカスな日々)
山田洋次監督が昭和初期につつましく生きる家族の姿をとらえて、現代の家族へのメッセージとしてつづった感動の家族ドラマ。夫のいない家族を支える強くてけなげな母親を演じた主演の吉永小百合をはじめ、坂東三津五郎や浅野忠信、子役の志田未来、佐藤未来が、戦前の動乱...
『母べえ』'08・日 (虎党 団塊ジュニア の 日常 グルメ 映画 ブログ)
あらすじ日中戦争が泥沼化しつつある頃。野上家は、お互いを「父べえ」「母べえ」「初べえ」「照べえ」と呼び合う仲睦まじい家族だったが、昭和15年2月、滋が治安維持法違反で検挙されてから苦難の日々が始まった。そんな折、滋の教え子・山崎徹が訪ねてくる。それ以降...
『母べえ』(TV/地上波) (京の昼寝~♪)
  □作品オフィシャルサイト 「母べえ」 □監督・脚本 山田洋次 □脚本 平松恵美子□原作 野上照代 □キャスト 吉永小百合、浅野忠信、檀れい、笑福亭鶴瓶、坂東三津五郎、       志田未来、佐藤未来、笹野高史、でんでん、神戸浩、近藤公園、 ...