【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「Little DJ 小さな恋の物語」:東雲都橋バス停付近の会話

2008-01-09 | ★東16系統(東京駅~ビッグサイト)

こんなところにトラック・ターミナルがあるのね。
全国各地からトラック野郎がはるばる乗ってくるんだろうな。
深夜ラジオでも聴きながらね。
そういえば、昔はラジオのDJっていやあ、憧れの的だった。
とくに1970年代といえば、中1の男の子がDJのまねをしても不思議じゃない時代よね。
「Little DJ~小さな恋の物語~」の時代のことか。
神木隆之介演じる中学1年生が、白血病に犯されて入った病院でDJのまねごとをする物語。
病人なのに、リクエストを受け付けて、院内放送で流すんだよな。当時流行の音楽をかけるんだけど、興味のない患者にとっちゃあ、騒音なだけじゃないのか。
かわいい男の子がやってれば、何だって許せちゃうのよ。
不治の病だし?
その病院で彼が知り合うのが、ひとつ年上の福田麻由子。
で、小さな恋の物語っていう副題がついているわけか。
男の子が亡くなって数年後、成長した女の子のシーンも出てくるんだけど、さて、ここで問題です。福田麻由子がおとなになった役を演じているのは誰でしょうか。
広末涼子。
す、すごい想像力!あの可憐で聡明そうな福田麻由子が、大きくなって広末涼子になるなんて、よくわかったわね。
観てるんだから、わかるに決まってる。
福田麻由子の笑顔はほんとにかわいくて、小さな恋の物語の世界にしっぽりと浸れるのに、広末涼子になって出てきたとたんに興ざめよね。
そうか?小さいときはかわいかったのに、大きくなったらただの女になっていた、なんて世の中にはいくらでもあるぜ。そういう意味じゃ、現実の残酷さを知らしめてくれる的確な配役だったとも言えるぜ。
それって、神木隆之介扮する男の子がもしあのまま生きていたら、小島よしおみたいな男になっていたようなもん?
どうして、そこで小島よしおが出てくるんだ?
そんなの関係ねえ!
うーん、おもしろくない。そろそろ賞味期限がきたな。
でも、白血病が治ってもDJにはなれずに小島よしおみたいな芸人になって、それでも売れずにトラック野郎になって、夜ごと国道を走りながら深夜ラジオを聴いているなんて、現実にはありそうじゃない?
なるほど。小島よしおが数年後、トラック野郎になってるってわけか。それなら納得できる。
って、そんなところで共感しないの。
でも、白血病の少年とそれを見守る少女の映画なんて、「世界の中心で愛を叫ぶ」の百番煎じかよーと思ったけど、予想外に共感しちゃったぜ。
あら、意外。「世界の中心で愛を叫ぶ」を観て、映画館の中心で「つまらねー」って叫んでいた男がどうしちゃったの?
あの映画みたいに二人だけの世界をグダグダ描くんじゃなくて、こっちは周りのおとなたちの世界をきちんと描いている。だから、俺みたいな男の共感も呼ぶんじゃないのか。
うん、おとなたちのエピソードが、ありがちなんだけど結構泣かせるのよね。
光石研とその息子とか、松重豊の恋のエピソードなんて、酸いも甘いも経験した男だったら身につまされるぜ。
周りがきっちりと固めてあるから、白血病などというあざとい設定が浮かないのかな。
逆にいうと、「世界の中心で愛を叫ぶ」は周りをきっちり固めていないから、白血病が泣かせるためだけの設定に見えてくる。
こういうよくできた映画があまり話題になっていないのって、残念よね。
地に足がついた映画って、一見、地味に見えるからな。俺と同じで。
どこが?


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ふたりが乗ったのは、都バス<東16系統>
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