【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「ファミリー・ツリー」

2012-06-15 | ★橋63系統(小滝橋車庫前~新橋駅)


家族の話なのに、なぜか長女のボーイフレンドがからんでくる。
それで物語がどうなるってわけでもないんだけどね。
でも、実はそこが脚本のうまいところで、彼がひとりいるだけで映画に豊かなふくらみが出た。
家族だけだと息苦しくなるところだけど、彼がいることで空気穴のような存在になっている。
そんなに爽やかな少年じゃなくて、むしろどうしようもない少年なんだけどな。
物語は、ハワイに住む弁護士ジョージ・クルーニーの妻が事故で昏睡状態になるところから始まる。
うろたえるジョージ・クルーニーに、眠ったままの妻の浮気の問題とか、先祖から残された広大な土地の処分の問題とか、反抗的な娘たちの問題とかが一気に降りかかってくる。
スター、ジョージ・クルーニーが冴えない中年を生活感たっぷりに演じるところがミソね。
サンダルつっかけてペタペタ走るところなんか、最高だ。
妻の浮気相手の家に行って、彼が怒りにまかせてとっさに取る行動がまた秀逸。
精一杯の復讐、ってやつだな。
アレクサンダー・ペイン監督、絶好調ね。
シチュエーションもいい。
悠久の大地、ハワイ。BGMにはゆるやかにハワイアンが流れて、ニューヨークあたりが舞台だったらギスギスした話になりそうなところを穏やかな空気が救っている。
もがこうがわめこうが時間は等しく流れて行くっていう気分が、さりげなくこめられる。
ラストのぬくもり。
これが家族の物語であることをストレートに象徴するいい幕切れだ。
とてもいい幕切れ。