【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「めがね」:新宿四丁目バス停付近の会話

2007-09-23 | ★池86系統(東池袋四丁目~渋谷駅)

お、高島屋か。めがね売場行かなくちゃ。
どうして?
めがね買うんだ。
だから、どうして?
だって、映画の「めがね」の出演者はみんなめがねかけてたぜ。
だから、どうしてみんなめがねかけてたの?
どうして、って・・・どうしてだろうな。沖縄の離島に来て心が癒されていく女性の話なんだけど、めがねと関係が深い話じゃ全然ないしな。
荻上直子監督の前作「かもめ食堂」は北欧が舞台だったんで、こんどは南の島を舞台に癒しの映画をつくろうという意図はわかるんだけどね。
都会の暮らしで近視眼的な心になってしまった人たちが南の島にやってきてほんとうの生き方を見る目を回復するって意味で、みんなめがねをかけてるのかな。
でも、映画では何も説明しない。みんな、どこで何をしていた人々なのか全然説明しないのよね。
なんか「かもめ食堂」よりさらに純度の高い癒し映画になってきた印象だよな。
とにかく、「何も考えず、ここでたそがれてください」って言うね。
映画の中では「たそがれる」っていうことばがたくさん出てくるけど、そもそも「たそがれる」なんて日本語あるのか。
まあ、あるにはあるんだけど、「日が暮れて薄暗くなる」とか「盛りを過ぎて衰える」とかいう意味なのよねえ。
うーん、この映画の中で使われている意味とはちょっと違うような気がするな。
もっと何か、心地いいというか、人間的な状態を指している感じだもんね。
そうそう。よけいなものがどんどん抜け落ちていって、残ったのは心地よさだけという、ある意味、実に幸福な二時間だった。
なんだか、荻上監督ならではの映画の世界を確立しちゃったわね。
しかし、「かもめ食堂」は一応仕事としての食堂があったけど、この映画のかき氷屋はもう仕事の範疇を超えている。このまま純度をあげていったら浮世離れするぎりぎりの線だぜ。
いいじゃない、どうせ現実には浮世離れできないんだから、映画の中でひととき浮世離れしちゃったって。
ああ、いい夢見させてもらったよ。
世の中に疲れたら何度でも観たくなる映画よね。
ああ、どこで上映しているんだっけ?
テアトル・タイムズスクエア。
って、高島屋の入っているこのビルじゃないか。
そう、桃源郷は案外目の前にあるものなのよ。曇っためがねじゃ見えないかもしれないけどね。


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新宿四丁目バス停



ふたりが乗ったのは、都バス<池86系統>
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