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【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「フィッシュストーリー」:青山斎場バス停付近の会話

2009-04-08 | ★品97系統(品川駅~新宿駅)

あと5時間後に地球が滅びるとしたら、俺はここにいたいね。
どうして葬儀場なんかに?
成仏しそうな感じがするじゃないか。
辛気臭っ。それより、自分の好きなことをやったほうがいいんじゃないの?好きなアーティストの廃盤になったレコードを聴くとか。
いまどき、CDじゃなくて、レコードかよ。
そりゃ、レコードじゃなきゃダメよ。滅びるときには、滅びた音楽を聴く。これこそ、至福の極致じゃない。
「フィッシュストーリー」のように、か。
そうよ、伊坂幸太郎の小説を映画化した「フィッシュストーリー」のようによ。
「フィッシュストーリー」、思い出しても奇妙な映画だったな。5時間後に彗星が地球に衝突するなんていう設定から始まったから、SF映画かと思ったら、売れないパンクグループの話になったり、フェリーでコックをやってる正義の味方の話になったり、冴えない青年の冴えない話になったり、何の映画なんだか、最後までさっぱり落とし所が読めなかった。
たしかに、それぞれのエピソードがバラバラに進んで何の映画かと思っていたけど、最後にはちゃんと一本筋が通った話になってた。ああ、こういうことが言いたかったのかって、むしろ、新鮮な爽快感を感じたわ。
音楽は地球を救う、ってか。
世の中は、偶然という名の必然のつながりでできているってことよ。
時系列的に並べちゃうと、ずいぶんご都合主義の話じゃないかと思うんだけど、時系列をバラバラにしたぶん、後をひいて興味が持続する。
ひとつひとつの挿話はじっくりと丁寧に語られているから、印象が散漫になってしまうこともない。
売れなくて解散せざるを得ないパンクグループの挿話なんて、切ないほどの真情がひしひしと伝わってくる。
あり得ねえよなあ、とかグダグダ言いながら、いつか自分たちの歌が誰かに影響を与えることを夢見ている。
そしてそれが意外な形で実現しちゃう。
意外すぎなんだけど、世の中、たまにはそんなことがあってもいいなじゃない、っていうやさしい気分になっちゃう。
登場人物みんなに、ちゃんと血が通っているっていうことだろうな。彼らの歌も相当本格的だったし。
正義の味方に育てられた男の話なんていうのも、なにそれ、っていう話なんだけど、妙にしみじみしちゃう。
中村義洋監督、伊坂ワールドを上手に映画に置き換えたもんだ。
奇妙な話だけど、人間てささいなところでつながっているものなんだっていうのがひたひたと伝わってくる。
そして、なんといってもタイトルになっている「フィッシュストーリー」。
フィッシュストーリーって、ほら話っていう意味の英語なんだってね。知らなかったわ。
タイトルにふさわしいエピソードが展開するし、なおかつ、そのタイトルが映画全体に対する思いを密かに表わしている。
しょせん、映画なんてほら話に過ぎないけど、ひょっとしたらそれが世界を変えることもあるかもしれないよ、っていう目配せね。
あからさまではないけれど、映画ファンに勇気を与えるよな。
地に足の着いた出演者たちの中で、重要な登場人物の多部未華子だけが、ちょっと戯画化されたテレビ的な演技で惜しかったけどね。
でも、かわいいから許す。
うん、何でだかわからないけど、すべてを許したくなっちゃう映画だった。
映画は世界を救う、なんてね。あり得ねえよなあ。



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「フロスト×ニクソン」:墓地下バス停付近の会話

2009-04-04 | ★品97系統(品川駅~新宿駅)

こんな東京のど真ん中にアメリカ軍の施設があるとは、知らなかったわ。
ひょっとして、俺たちの会話を盗聴しているんじゃないか。
そんな、しょーもないことするわけ、ないでしょ。
しかし、アメリカじゃあ、大統領だって盗聴するんだぜ。
ニクソンのこと?
そう、ウォーターゲート事件で失脚した第37代大統領。辞任したあと、テレビ・レポーター、フロストのインタビューに応じた一部始終を描いた映画が「フロスト×ニクソン」。
ニクソンは事件の責任も認めず、謝罪のことばを吐かないまま、大統領を辞任しちゃったから、レポーターのフロストは、なんとか謝罪のことばを吐かせようとする。
いまの日本でいえば、デーブ・スペクターが某総理大臣にインタビューするようなもんだな。
相変わらずヘンなたとえね。某総理大臣はまだ辞任してないし。
そりゃそうだ。これは失言。
そう、失言。巧妙に言い逃れていたニクソンも、執拗なフロストの追及に、つい失言を吐きそうになる。
失言の重みに気づくだけ立派だ。某総理大臣は、自分の失言にさえ気づかず、発言がぶれっぱなし。
ほんと、それに比べれば、失脚したとはいえ、ニクソンの受け答えは堂々としたもの。大国の大統領だっただけのことはあるなあって、かえって感心しちゃう映画よね。
ことばの重みを知っている。
それに比べてわが国は・・・。
某総理大臣はまだ辞任してないし。
って、それ、さっき、私が言ったこと。
あ、そう。
ニクソンは、このインタビューで政治家としての起死回生を狙っているから、じっくりことばを選んで巧妙な駆け引きを挑んでくる。
フロストvsニクソン。しまいには、この二人が文字通りボクシングをしているようなスリリングな様相を呈してくる。
インタビューが終ったあとなんて、完全に試合直後の雰囲気だもんね。
一方で、ニクソンを演じるフランク・ランジェラが、大統領の傲慢さや恐れや怒りや落胆を余裕しゃくしゃくに表現して、観る者を圧倒する。
あの憎たらしいほどの貫禄!
そして、思わず本音を漏らしてしまったときのあの表情!
フロストを演じるマイケル・シーンも正義感より功名心からこのインタビューを仕組んだっていう、二流ジャーナリストの狡猾さをよく出していたわ。
もともとは、配役も同じ舞台劇だったらしいからな。
だけど、どうして偉い人たちっていつも、謝罪を拒むのかしらね。往生際が悪いったらありゃしない。
プライドが邪魔するのさ、俺たち庶民と違って。
あなたなら、すぐ頭を下げて謝っちゃうのにね。
そう、そう。愛するお前にゃ、頭が上がらない。・・・って、何言わせるんだ。
あ、いまのことば、テープに録っとく?



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「リリィ、はちみつ色の秘密」:西麻布バス停付近の会話

2009-03-28 | ★品97系統(品川駅~新宿駅)

西麻布のランドマークといえば、HOBSON’Sだ。
あま~くとろけるようなアイスクリーム。
今年いちばん、あま~くとろけるような映画タイトルといえば「リリィ、はちみつ色の秘密」だろう。
主演が天才子役のダコタ・ファニングだし、どんなファンタジックなおとぎ話が始まるのかとウキウキしながら観始めたら、4歳のときに自分の母親を撃ち殺してしまった少女の物語なんだから、驚いたわ。タイトルから思い浮かべるイメージとあまりにも違い過ぎるんじゃないの?
まあ、まあ。そう神経質になるな。昔々、「新幹線大爆破」なんていうたいそうなタイトルの日本映画があって、派手に新幹線がぶっ壊れる映画かとワクワクしながら観に行ったら結局新幹線は全然破壊されなかったなんてこともあったんだから。
まあ、そういう意味では、この映画は、ちゃんとはちみつは出てくるし、少女の名前はリリィだし、タイトルに偽りありとまでは言えないわね。
タイトルの響きが柔らかいわりには内容がシビアだっていうことだろ。
うん。自分の母親を過って殺した苦悩をかかえたまま14歳になった少女が父親の虐待に遭ってメイドの黒人女性とともに家を出るという話。
人種差別についての映画でもある。設定が1964年。ちょうど黒人に公民権が与えられたばかりで、白人の黒人への偏見はまだまだ激しい。
このまえ観た「ダウト」と同じ時代設定よね。
あの映画の中でも黒人は重要な役割を果たしていた。黒人がからんでいたから、メリル・ストリープは無意識のうちに人種差別的な行動をとったんじゃないかと俺はいまでも邪推しているんだ。
そういう白人たちの偏見に囲まれながらも、この映画に出てくる黒人女性たちは背筋を伸ばして生きている。
演じるのがクイーン・ラティファとかジェニファー・ハドソンとか、日本人でいえば和田アキ子級の大物そろいで、おいおい、超ド級黒人女優大集合かよ、と思っちゃった。
監督自身が黒人女性らしいから、みんな共感して集まっちゃったんじゃないの?
その中でがんばらなきゃいけないんだから、子役といえど、やっぱりダコタ・ファニングくらいのレベルが要求される。経験と度胸が要る。
ベテラン子役。見るからにのジョディ・フォスターのような道を歩みそうな雰囲気。
安達祐実みたいになりませんように。
で、心にキズを負った少女は気丈な黒人たちと彼女たちの育てるみつばちに囲まれて心が癒されていくというお話。
それって、最近の日本映画で言えば「西の魔女が死んだ」に物語の構造が似てない?
心にキズを負った少女が自分とは違う文化の女性と自然を相手に暮らしていくうちに心が回復していくという意味では、ちょっと似ているかもしれないわね。
でも母親を殺したとか、父親に虐待されているとか、センセーショナルな題材のわりに、演出には、はちみつのような粘っこさがない。メリハリも足りない。
黒人女優たちにも、いつものような暑苦しいほどの存在感が消えて、どこか小ざっぱりしているわね。
タイトルどおり、みつばちが出てくるわりに「ミツバチのささやき」のような詩情も感じられないしな。
チェンジリング」のイーストウッド監督くらいのこだわりがあれば、傑作になったかもしれないわね。
演出はまだまだ、脇が甘い。
甘いタイトルは、映画の内容の甘さではなく、演出の甘さを暗示していたのね。
HOBSON’Sのアイスクリームみたいな甘さなら歓迎なんだけどな。
でも、食べ過ぎるとクイーン・ラティファみたいな体型になっちゃうかも。
そりゃ、ダメだ。せめて、ジェニファー・ハドソンくらいにしておいてくれ。



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「ワルキューレ」:日赤医療センター下バス停付近の会話

2009-03-21 | ★品97系統(品川駅~新宿駅)

なんで外車が展示されているの?
ランボルギーニの販売店だから。
あの有名なイタリアの車?
お、よく知っているな。でも、ランボルギーニって、いまはドイツのアウディ傘下に入っているらしいけどな。
さすが、ドイツ。ヒトラーを生んだだけのことはある。
って、やめなさい、そういう誤解を生む言い方。
そうよね、ヒトラーだけがドイツ人じゃないって「ワルキューレ」の中でも言っているもんね。
第二次世界大戦中にヒトラーの暗殺を企てたドイツ将校たちの物語か。
中心となる将校を演じるのは、トム・クルーズ。
総統より祖国を愛するとか言いながら、ヒトラーの暗殺を画策する。
祖国のために!かっこいい!
わが祖国、いまはわが粗国、ってか。
で、あと一歩で暗殺成功というところまで行くんだけど、最後の詰めを過って失敗してしまう。
終わってみれば、「何ごとも確認がだいじ」っていう人生訓を残す実に身につまされる映画だった。
いや、そういうテーマの映画じゃないと思うけど・・・。
暗殺がテーマだっていうなら、フランスの大統領暗殺を映画化した「ジャッカルの日」に遠く及ばない出来だぜ。
すぐそういう名作と比べたがる。悪いクセねえ。だいいち、あの暗殺もこの映画と一緒で結局未遂に終わっているじゃない。
同じ未遂でも、あっちの未遂は、誰もそこまでは念頭になかったっていう意外なミスが原因だけど、こっちの未遂は、ちゃんと確認しなかっただけの基本的なミスだからなあ。
暗殺当日、会議の時間が変わるとか会議室が変わるとかハプニングが起きて、いくらトム・クルーズでも冷静でいられなかったのよ。
でも、確認くらいしろよ。「ミッション・インポッシブル」のトム・クルーズはどこ行った?
だからそんなヒマもなかったんだって。
だったら、確認できなかったって言えばいいものを、確認した気になって、ドジなトム。もっとあっというような理由で暗殺に失敗するなら同情もするけど。
これは史実なんだから、そんな映画みたいに都合よくはいかないのよ。
おいおい、これは、史実じゃなくて、史実をもとにした映画だろ。
そりゃ、映画だけど、暗殺をめぐるサスペンスだけがテーマじゃないわ。ドイツの中枢にも国の将来を憂える人々がいたってことを伝えたかったのよ。
憂国の士か。三島由紀夫みたいだな。
うーん、たとえがヘン。
じゃあ、二・二六か。
まあ、そんなところかしら。
常々不思議に思っているんだけど、二・二六っていかにも映画的な出来事なのに、あの事件を正面から描いた傑作が日本映画にないのはどういうわけだ?
知らないわよ、そんなこと。いま話しているのは「ワルキューレ」。
戦争映画にぴったりのいい音楽だよなあ。あの曲を聞くだけで血が騒ぐ。
「地獄の黙示録」を思い出す。
そのわりにこの映画の中ではあまり効果的に聞こえてこなかったのはどういうわけだ?
だから、知らないって。
とにかく、軍人とか偉い人しか出てこない。憂国の映画なら、もう少しドイツに暮らす庶民の姿を描きこんでもよかったんじゃないのか。
ジェネラル・ルージュの凱旋」みたいに?
お、いいこと言うねえ。「ジェネラル・ルージュの凱旋」はほとんど病院関係者しか出てこない映画なのに、「先生、うちの人は見捨てるんですか」と訴える患者側の立場の人が一瞬出てくる。それだけで映画が大きく膨らむのに、「ワルキューレ」にはそういう立場のヒトラーに蹂躙される側の描写がない。
でも、久々の第二次大戦ものよ。あなたみたいな戦争映画ファンにとっては懐かしいんじゃないの?
昔の戦争映画っぽい雰囲気はあるよな。
出演者たちも、トム・クルーズを除けばみんな渋いし。
将軍の妻が「ブラックブック」の女優、カリス・ファン・ハウテンっていうのがいちばんの見所だったかもしれない。
あの映画もヒトラーに反旗を翻す人々の映画だったもんね。
というより、彼女のたたずまいがいいんだよな。当時の顔をしている。よくあの地味な女優をトム・クルーズの妻役に配役したもんだ。
二コール・キッドマンっていうわけにはいかないでしょう。
そりゃそうだ。「アイズ・ワイド・シャット」になっちまう。
そういえば、「ワルキューレ」のトム・クルーズは左目が義眼だった。
目を大きく開いても、片眼は閉まったまま。
文字通り「アイズ・ワイド・シャット」ね!



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「ダウト~あるカトリック学校で~」:広尾橋バス停付近の会話

2009-03-14 | ★品97系統(品川駅~新宿駅)

この門をくぐると、どこへ行くんだ?
聖心インターナショナルスクールというカトリック学校。
まさか、「ダウト~あるカトリック学校で~」の舞台じゃないよな。
ここは広尾よ。あの映画の舞台はニューヨークのブロンクスにあるカトリック系学校だったじゃない。しかも時代設定は、1964年。
そうだよな。メリル・ストリープみたいに神経質な女校長とか、フィリップ・シーモア・ホフマンみたいに腹黒そうな神父とか、日本にはいないよな。
神父が黒人生徒とみだらな関係を持ったのではないかという疑惑を持った厳格な女校長が彼と対決する。その物語を二大俳優で描く映画が、「ダウト~あるカトリック学校で~」。
二大俳優というより、二大怪優だろう。うわばみみたいなメリル・ストリープとカポーティのなれの果てみたいなフィリップ・シーモア・ホフマンが出てくるだけで、画面がやたら暑苦しくなる。
メリル・ストリープ扮する校長は、なにか証拠をつかんだのではなく、いわば心証だけでフィリップ・シーモア・ホフマン扮する神父を疑う。
それにしては、彼女の自信たっぷりなこと。どこまでもヒステリックに神父を追い詰めていって、どうなっちゃってるの、この校長。
自信たっぷりというより、不安でしょうがないのよ。だから、小さなことまで気にかけ、悪いほうへ想像をたくましくして、事態を悪化させる。
それじゃあ、まるで正気を失ってイラクに攻め入った9.11以降のアメリカみたいじゃないか。
いいこと言うわねえ。テロの不安感から、証拠もないのにイラクに攻め入ったアメリカという国と精神構造は一緒よね。
1964年といえば、ケネディが暗殺され、黒人たちも台頭してきた時代だ。そのころのアメリカを覆っていた不安感って、9.11で頭に血がのぼりイラクへ侵攻したアメリカを覆っている不安感に重なるのかもしれないな。
カトリック学校の問題というより、アメリカという国の問題だっていう意味では、いまという不安定な時代に映画化された意味もあるのかもしれないわね。
でも、ひょっとしたら神父はほんとによからぬことをしていたのかも知れないぜ。そのあたりは霧の中だ。
真実はどうであれ、人を疑わざるを得ないような精神のありかたが不幸なのよ。校長の壊れかけた心もようをメリル・ストリープがいつもながらに好演していたわ。
好演といえば好演だけど、メリル・ストリープの演技ってうますぎて鼻につくんだよなあ。
それはいまに始まったことじゃないでしょう。
そう。いつも手堅すぎて、新鮮な驚きがまったくない。はいはい、おじょうず、おじょうず、それで?みたいな感想になってしまう。
無味乾燥な感想。
はは、うまいこと言うねえ。
メリル・ストリープほどじゃないけどね。
フィリップ・シーモア・ホフマンのうまさは、まだかろうじて鮮度を保っているけど、彼もそのうち男ストリープになってしまいそうで不安だなあ。
あら、あなたにも不安感っていうものがあるの?
そりゃあるさ。この映画に描かれた精神的な不安感ていうのは実はアメリカだけじゃなく、世界を覆う不安感だ。
国際的に精神が不安定になっているってこと?
ああ、精神インターナショナルだ。
は?それって、聖心インターナルスクールとかけてないよね。
ない、ない。絶対ない。
うーん、疑わしいなあ。
ダウト!



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