Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

日本フィル・シリーズ再演企画第4弾

2010年02月01日 | 音楽
 日本フィルの1月定期は、飯守泰次郎を指揮者に迎えて次のプログラム。
(1)小山清茂:管弦楽のための「鄙歌」第2番
(2)湯浅譲二:交響組曲「奥の細道」
(3)ブラームス:交響曲第4番

 1曲目の「鄙歌」第2番は、このオーケストラが続けている「日本フィル・シリーズ再演企画」の第4弾。日本フィル・シリーズとは、1956年創立の同オーケストラが1958年以来続けている日本人作曲家への委嘱シリーズ。これまでに39作品が生み出されていて、その中には若き日の武満徹や細川俊夫によるものも含まれている。これらの作品群は同オーケストラの誇るべき財産。

 同オーケストラは1972年から1984年まで争議を続けたが、このシリーズは途切れなかった。争議に入って間もない1974年に、林光の「ウィンズ」によってシリーズが再開されたとき、私は客席にいて応援した。
 「鄙歌」第2番の初演は1978年。そのときのことも覚えている。代表作「管弦楽のための木挽歌」の路線をいく作品で、よい曲が生まれたものだと思った。
 今回あらためてきいてみて、「木挽歌」よりも簡潔な書法になっていることを感じた。

 2曲目の交響組曲「奥の細道」は芭蕉の同名作から4句を選んで音楽化したもの。純化された音の世界とはこういうものではないか――と思った。余計なものを一切そぎ落とした透徹した世界。たとえていうなら、静まりかえった水面に一滴の水が落ちて、その波紋が広がるときの光の揺らぎ、とでもいうような印象だ。

 湯浅譲二には芭蕉の俳句にちなんだ曲が多くある。ざっくりいうと、芭蕉の俳句には自然あるいは宇宙と自己との合一点から生まれた作品があり、それは湯浅自身の作曲態度と重なり合う、ということのようだ。
 ここで思い出すのがオペラ「沈黙」の作曲家、松村禎三。松村禎三も、自ら句作をするほか、三橋鷹女の俳句にちなんだ曲をかいている。
 俳句は、説明的なところがなく、直感を単刀直入に表現する。そこに音楽と通じるものがあるのだろうか。

 3曲目のブラームスでは、第1楽章から第2楽章までが交響組曲「奥の細道」と違和感なくつながるので驚いた。若いころの気負いを捨てた晩年の境地は、どこかで共通しているのか。
 なお第4楽章ではティンパニの音がときどき強くて、その都度びっくりした。もう少し軽いアクセントにしてほしい。
(2010.1.29.サントリーホール)

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