Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ドゥネーヴ/N響

2015年06月08日 | 音楽
 ステファヌ・ドゥネーヴがN響に初登場した。プログラムはフランス近代物。演奏機会が稀なルーセルの交響曲第3番が入っていることが興味を引いた。

 1曲目はラヴェルの「道化師の朝の歌」。冒頭の弦のリズムが、聴こえるか聴こえないかの弱音で始まった。徹底的な音のコントロール。働き盛りの指揮者の仕事だ。長老指揮者だとこうはいかない。オーケストラに快い緊張感が漂っていた。

 ドゥネーヴは1971年フランス生まれ。現在はシュトゥットガルト放送響の首席指揮者とフィラデルフィア管の首席客演指揮者を務めている。2008年12月に都響へ客演した。ベルリオーズの「幻想交響曲」が演奏されたことは覚えているが、今回ほどの鮮烈な印象は受けなかった。

 2曲目はラロの「スペイン交響曲」。ヴァイオリン独奏はルノー・カプソン。さすがに名手だ。第5楽章(最終楽章)のフィナーレなど、流麗かつスリリングな演奏だった。

 わたしがまだ中学生の頃(今から40年も前だ)、初めてこの曲のレコード(中古レコード)を買ったときは、第3楽章が省かれた4楽章構成だった。そういう曲だと思っていた。あるとき、本当は5楽章構成だということを知った。第3楽章を初めて聴いたときには、(生意気にも)平凡だと思った。

 最近は5楽章構成で演奏されることが多いのではないだろうか。今回もそうだった。面白かったことには、5楽章構成が自然に体に入ってきた。第3楽章がブリッジのように前半と後半をつなぐ。まるでマーラーのようだと思った。後でプログラムノートを見ると、作曲年代は1874年。当時としてはずいぶん斬新だったのではないか――と思うのは、今日の目から見ているからだろうか。

 3曲目はルーセルの交響曲第3番。基本は3管編成で弦は16型(もっとも、コントラバスが8本ではなく7本だったのは、音色への配慮からだろう)。極彩色の躍動的な音楽。全篇にわたって舞台音楽の要素が感じられた。フランス近代の生んだユニークな交響曲だと実感した。

 4曲目はラヴェルの「ボレロ」。最後に向かって高まる熱狂が凄まじかった。その熱狂を司るドゥネーヴは、バッカスの祭りの神官のようだった。

 首席トランペット奏者の関山氏が定年を迎え、この演奏会が最後だった。花束を贈られ、聴衆に別れを告げる関山氏の手を引いて、ドゥネーヴが指揮台まで連れてきた。
(2015.6.7.NHKホール)

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