Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

フルシャ/都響

2016年12月15日 | 音楽
 フルシャ/都響のBシリーズ。ドヴォルザーク、マーラーのボヘミア・プロだ。ちなみにAシリーズはマルティヌー、ショスタコーヴィチという20世紀の歴史に深く関わった作曲家のプログラムを組んでいる。どちらも興味深い。

 1曲目はドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリン独奏はヨゼフ・シュパチェク。チェコ・フィルのコンサートマスターを4年努めたそうだ。ドヴォルザークの民族色豊かなこの曲を、いかにも‘お国もの’といった節回しで歌いあげた。もっとも、のどかな田園風景からは遠く、むしろアグレッシヴに弾いていた。

 アンコールにイザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番の第4楽章が演奏された。その演奏でシュパチェクの個性がより一層明らかになった。鋭角的な演奏。それはイザイのこの曲にマッチしていた。見事な演奏だった。

 2曲目はマーラーの交響曲第1番「巨人」。フルシャは正統的な解釈と正確な演奏を身上とすると、わたしは思っていたが、この「巨人」を聴くと、けっしてそこに止まる指揮者ではなく、激しく音楽を追い上げる面があることに気付いた。テンペラメントの激しさを持った指揮者でもあるようだ。

 都響の演奏も見事だった。フルシャのその指揮にぴったり付けて、アンサンブルが乱れない。さまざまな指揮者とマーラー演奏の経験を積んできたオーケストラだが、それだけでなく、オーケストラの基礎的な体力を感じた。

 フルシャの「巨人」を聴けたのは、大野和士のお陰かもしれないと思った。大野和士は音楽監督として、都響のマーラー・オーケストラとしての伝統を守りつつ、これまでのように一人の指揮者が全部振るのではなく、いろいろな指揮者に振らせる方針と聞く。音楽監督としてよい仕事をしていると思う。

 話題をフルシャに戻すと、プログラムに掲載されたインタビューの「チェコ・フィルやバンベルク響、都響でポストに就かれていますが、それぞれのオーケストラの特徴を教えてください」という質問に対して、フルシャはこう答えている。チェコ・フィルは「直感/歌(線)」、バンベルク響は「洞察/色(深さ)」、都響は「献身/精度(構造)」と。

 味のある答えだと思う。その答えは東条先生が11月28日の「コンサート日記」でお書きになった日本のオーケストラの個性と海外の楽壇への発信の問題とも関連する可能性があるものと思った。
(2016.12.14.サントリーホール)

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