Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ダイクストラ/都響

2015年10月17日 | 音楽
 スウェーデン放送合唱団を主役に迎えた都響の定期。指揮は同合唱団の首席指揮者ペーター・ダイクストラ。こういうメンバーでないと組めないプログラムが組まれた。

 1曲目はリゲティの「ルクス・エテルナ」。16声の混声合唱曲。合唱団の人数は32人。オーケストラは入らない。極度の緊張を(合唱団にも聴衆にも)しいる曲だ。電子音楽でやればもっと気楽にこの透明なハーモニーが楽しめるのに、と思わないでもなかった。

 でも、一夜明けた今、やっぱり思い直した。人間の声でやるから、あの緊張感があったのだ。電子音楽でやればそれがなくなってしまうだろう。それでは意味がない、と。

 2曲目はシェーンベルクの「地には平和を」(管弦楽付きの版)。合唱の響きがなんと人間的に聴こえたことか。アナログ的な響き。ぬくもりがある。それにたいして「ルクス・エテルナ」はデジタル的だったと振り返った。

 3曲目はモーツァルトの「レクイエム」。いつの間にかこの曲にはいくつもの版が作られたが、当夜は昔懐かしいジュスマイヤー版。

 この曲を聴くのは久しぶりだ。ステージに並んだオーケストラを見て、あぁ、そうだったかと思ったが、木管はバセットホルン2本とファゴット2本だけ。フルートもオーボエもない。木管の編成にはいつも細かい配慮をするモーツァルトだが、この編成はその中でももっとも大胆なものだ。金管はトランペット2本とトロンボーン3本。ホルンはない。これも面白い。なお弦は10‐8‐6‐4‐3だった。

 第1曲「イントロイトゥス(入祭唱)」が始まる。黄泉の国から響いてくるような茫漠とした響き。モーツァルトの魂の半分は、もうこの世にはないような感じがした。モーツァルトがオーケストレーションを含めて完成した(「レクイエム」の中では)唯一の曲。絶筆の一つかもしれない。呆然と耳を傾けた。

 全体的にきびきびした演奏。「ディエス・イレ(怒りの日)」は目が覚めるような快速テンポだった。弦はノン・ヴィブラート奏法。独唱陣はヴィブラートをかけていた。それでも違和感はない。バスのヨアン・シンクラーの押し出しのいい声が印象的だった。

 アンコールに「アヴェ・ヴェルム・コルプス」が演奏された。モーツァルトが書いた音楽の中でも、これはもっとも心やさしい音楽ではないだろうか。合唱の柔和なハーモニーが胸にしみた。
(2015.10.16.サントリーホール)

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