Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

サントリーホール サマーフェスティバル:大野セレクションの室内楽

2019年08月26日 | 音楽
 サントリーホール サマーフェスティバルの今年のザ・プロデューサー、大野和士がセレクトする現代作曲家の室内楽演奏会。取り上げられた作曲家は、マグヌス・リンドベルイ(1958‐)、マーク・アンソニー=ターネジ(1960‐)、ヴォルフガング・リーム(1952‐)、細川俊夫(1955‐)、サルヴァトーレ・シャリーノ(1947‐)の5人。いずれも現代を代表する作曲家たちだ。

 まずリンドベルイの「オットーニ」(2005)から。金管アンサンブルのための曲で、最初はファンファーレ風の音型が続く。単調さをおぼえ始めた頃、音の動きに変化が現れ、あっという間に密度が濃くなる。最後はずっしりした手応えが残る。その手腕に脱帽する。演奏は板倉康明指揮の金管奏者たち。個々の名前は省略するが、トランペットの1番奏者のうまさに感心した。

 次はターネジの「デュエッティ・ダモーレ」(2015)。ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲で、5曲の性格的な小品からなる。いずれも鮮明な音像を持つ。ヴァイオリンは川久保賜紀、チェロは伊藤悠貴。闊達な演奏だった。

 3曲目はリームの「ビルトニス:アナクレオン」(2004)。テノール独唱とピアノ、ハープ、クラリネット、チェロのための曲。アナクレオンというと、ヴォルフの歌曲「アナクレオンの墓」を思い出すが、それとの関係はなさそうだ(もっとも、本作の委嘱団体の一つに、国際フーゴ―・ヴォルフ・アカデミーが入っているが)。演奏は、テノール独唱の吉田浩之にもっと芝居気と切れのよさが欲しかった。

 休憩をはさんで4曲目は細川俊夫の「悲しみの河」(2016)。リコーダーと弦楽アンサンブルのための曲。リコーダーの、尺八のムラ息を思わせる奏法を含む、気迫のこもった、振幅の大きい表現と、弦楽アンサンブルの、細かなトレモロ、執拗なグリッサンド、微かなエコー、ノイズの軋み、膨張する音の層など、変化と緊張感に富む表現とが相俟って、圧倒的な演奏が展開された。

 演奏はリコーダー独奏が鈴木俊哉、弦楽アンサンブルが板倉康明指揮の東京シンフォニエッタ。共感のこもった、真剣そのものの演奏だった。

 最後はシャリーノの「ジェズアルド・センツァ・パローレ」(2013)。ルネサンスの作曲家ジェズアルドのマドリガーレ4曲を室内アンサンブル用に編曲したもの。第4曲で多少陰影が濃くなるが、全体的には甘い曲だ。もう少し別の選曲はできなかったろうか。演奏は板倉康明指揮の室内アンサンブル。
(2019.8.24.サントリーホール小ホール)

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