Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

山田和樹/日本フィル

2014年04月26日 | 音楽
 山田和樹指揮日本フィルの‘不死鳥→不滅’プロ。いずれも馴染みのある曲だが、意外性のある組み合わせで新鮮味が出る見本のようなプロだ。

 1曲目はストラヴィンスキーの「火の鳥」全曲。いつもは1919年版や1945年版の組曲で聴く機会が多いわけだが、全曲版のほうが聴きやすい。早い話が、例の「カスチェイ一党の地獄の踊り」(新井鴎子氏のプログラム・ノートの表記による)が始まるとき、組曲版だと、居眠りをしている人たちを起こすように、いきなりバン!と始まるが、全曲版だとそれまでの経過があって、その高まりの末に到達する。そのほうが自然だと思う。昔、なにかの演奏会でこの全曲版を聴いて、大いに納得したことがある。

 全曲版だから、場面から場面への推移の部分が多い。山田和樹のこの演奏で感心したのは、その推移の部分が面白いことだ。少しも退屈しない。なにも考えずに演奏される部分が皆無だ。この辺がこの指揮者の音楽性の現れだと思う。

 大きくいって、前半はロシア的な情緒よりも、フランス音楽的な艶のある表現がまさっていた。とりわけオーボエのソロが魅惑的だった。中間部で客席に配置されたトランペットの信号あたりからドラマが動き出すと、パワフルでダイナミックな表現が前面に出てきた。

 2曲目はニールセンの交響曲第4番「不滅」。ちょっと曲順が逆なような気もするが、そうではなくて、この曲をメインにもってきたところに山田和樹の意気込みが感じられる、と思い直した。これはなにかあると。

 そういう期待に応える演奏だった。テンションが高く、音楽的な内実がぎっしり詰まった演奏。ニールセンが、幾分性急に、思いのたけを詰め込んだこの曲を、角をとってマイルドにすることもなく、また過度にギクシャクすることもなく、ありのままにすべてを再現する演奏だった。

 端的にいって、全曲にわたって頻出する、いささか強引な曲想の転換が、強引さを失わず、しかも説得力をもって演奏された。それによって、曲想が重層的に重なりあう、その襞の部分が聴きとれた、と感じたのだ。それが一番の収穫だった。

 では、100パーセント満足したかというと、必ずしもそうとはいえない。ここまできたのだから、さらに磨きをかけてほしいと思った。もっと鮮烈な演奏であってほしい。最近好調といわれている日本フィルだからこそ、もう一つ上を目指してほしいと思った。
(2014.4.25.サントリーホール)

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