Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

鈴木雅明&東京シティ・フィル

2011年07月02日 | 音楽
 バッハ・コレギウム・ジャパンを率いる鈴木雅明さんが、東京シティ・フィルを振ってマーラーの交響曲第5番を演奏した。

 鈴木雅明さんが東京シティ・フィルの定期を振るのは、わたしの知るかぎりでは、これが4回目だ。最初の2回はバロックから古典派、そしてロマン派のメンデルスゾーンまでだった。それらの演奏も、オーケストラが見違えるように清新な音を出して、すばらしかったが、3回目になる昨年10月はマーラーの交響曲第1番「巨人」を取り上げて注目された。そして今回、満を持しての第5番だった。

 激しい身ぶりで全身全霊をこめた、渾身の演奏だった。しかも、鈴木さんらしいというべきか、感情に余分なものがなく、格調の高い、正統的なフォルムを構築する演奏だった。その指揮姿を見ていると、圧倒されるほどの動きだが、目を閉じて聴いていると、魂のこもった音が理路整然と積み重なっているのがわかった。

 オーケストラはトランペットやホルンにハラハラさせられることはあったが、それでもそんなことは枝葉末節のこと、そこに展開されている音楽への情熱をこそ、わたしたちは受け止めるべきだと思った。一言でいって、技術的な瑕疵はあったとしても、この演奏は一流だと思った。

 それは多分、飯守泰次郎さんが1997年から14年間の長きにわたって常任指揮者をつとめてきた成果だ。飯守さんの指揮は、素人目にも器用とは思えないが、音楽にたいする真摯な姿勢は比類がない。その、飯守イズムとでもいうようなものが、オーケストラに根付いたのだ。

 当日、会場で飯守さんの姿を見かけた。自分が振らない演奏会にも来てくれるのは、ありがたいことだ。常任指揮者といえども、そこまでしてくれる人は、なかなかいない。

 飯守さんのことに傾斜してしまったが、話題を鈴木さんに戻すと、当日、演奏を聴いた後で、これなら次は第9番を聴いてみたいと思った。そして今日、東京シティ・フィルのホームページを見ると、鈴木さんの動画がアップされていて、子どもの頃にバーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルのマーラーの第9番を聴いた感動が語られていた。まさに、我が意を得たり、だった。

 なお当日は、冒頭に、東日本大震災の犠牲者を悼んで、鈴木さんのオルガン独奏でバッハが2曲演奏された。そのうちの1曲は「我らが苦難の極みにある時も」というコラールだった。
(2011.7.1.東京オペラシティ)

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