Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

山田和樹/日本フィル

2017年09月10日 | 音楽
 日本フィルはこの数年来、新作委嘱シリーズ‘日本フィル・シリーズ’の再演に取り組んでいる。指揮は主に山田和樹と下野竜也が担っている。今回は山田和樹が指揮して石井真木の「遭遇Ⅱ番―雅楽とオーケストラのための」(日本フィル・シリーズ第23作、1971年初演)が再演された。雅楽演奏は東京楽所(とうきょうがくそ)。

 1971年といえば、日本フィルが文化放送とフジテレビの援助を打ち切られ、自主運営の苦難の時代に入る1年前。当時の常任指揮者は小澤征爾だった。この曲の初演も小澤征爾。大学生だったわたしは、その初演を聴くことはできなかったが、当時前衛の熱気の中で初演されたことを記憶している。

 今回はそれから46年後の再演。さて、どう聴こえるか。渡辺和氏が執筆したプログラム・ノートが事前に公開され、また同氏がゲネプロを取材してブログにアップしてくれたので、ひじょうに役立った。

 開演前に山田和樹のプレトークがあった。わたしが聴いたのは土曜日の方だったが、金曜日の定期ではまずオーケストラから始め、次に雅楽が入ってくる(遭遇する)順番で演奏したが、今日は先に雅楽、次にオーケストラの順番でやってみるとのこと。その選択は指揮者に任せられているわけだ。

 舞台上手に緋毛氈が敷かれ、古式ゆかしい装束の東京楽所の奏者10名が登場する。雅楽が始まる。石井真木が書いた「紫響」(しきょう)という曲。やがてそれが静まると、オーケストラがそっと入ってくる。次第に音量を増し、多数の打楽器が炸裂する大音響の音楽になる。同じく石井真木が書いた「ディポール」という曲。

 オーケストラが一段落するとまた雅楽になり、さらにまたオーケストラが入ってきて、最後はオーケストラと雅楽とが同時に演奏する。最後の部分では雅楽はオーケストラに埋もれがちだった。

 そういう曲だったが、わたしが感じたのは、オーケストラの音楽に魅力が欠けることだった。多数の打楽器を叩きまくる音楽は、いかにも石井真木だが、今聴くと、それが不思議と現代感覚に乏しく、当時の熱気の記録写真のように感じられた。

 この曲は2曲目に演奏された。1曲目は石井真木の師ボリス・ブラッハーの「パガニーニの主題による変奏曲」、3曲目はイベールの「寄港地」、4曲目はドビュッシーの「海」。山田和樹の丸みのあるサウンドがよくもあり、また物足りなくもあった。
(2017.9.9.サントリーホール)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ゲオルク・フリードリヒ・ハ... | トップ | “戦中日本のリアリズム”―アジ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

音楽」カテゴリの最新記事