Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

スティーヴ・ライヒ

2012年12月06日 | 音楽
 スティーヴ・ライヒが来日。1936年生まれだから、今年76歳だ。トレードマークの帽子(なんというのだろう、野球帽のような形だ)をかぶって登場。端的にいって格好いい。9月の読響定期に登場したリチャード・ストルツマン(1942年生まれ、ライヒよりも少し若い)も恰好よかった。この世代のアメリカ人の男たちはみんな格好いいのか。

 イギリスのパーカッション・アンサンブル、コリン・カリー・グループの公演。ヴォーカルに同じくイギリスのシナジー・ヴォーカルズが共演。曲目はすべてスティーヴ・ライヒの作品だ。

 1曲目は「クラッピング・ミュージック」。2人の手拍子による音楽。第1奏者が一定のテンポでリズム・パターンを繰り返し、第2奏者がそこに加わり、少しずつ拍をずらしていく。その第1奏者にスティーヴ・ライヒが登場した。聴衆は大喝采。第2奏者はコリン・カリー。

 第1奏者と第2奏者では、同じ手拍子とはいえ、音色がちがうことが面白かった。第1奏者は、手をお椀型にしているのだろうか、柔らかい音を出し、第2奏者は硬くはっきりした音を出していた。

 2曲目は「ナゴヤ・マリンバ」。2台のマリンバのための曲。「クラッピング・ミュージック」は初期の作品(1972年)だが、これはずっとキャリアを積んで――ということは、つまり、ミニマル・ミュージックを展開して――、1994年に名古屋の《しらかわホール》オープンに当たって作曲された。「クラッピング・ミュージック」はリズムの線的な連鎖で構成されているが、この曲では立体的なテクスチュアが感じられる。気のせいか、日本的な情緒がただよう部分もあった。

 3曲目は「マレット楽器、声とオルガンのための音楽」(1973年)。一気に色彩豊かになる。スキャットというのではないが、言葉のない、リズムだけのヴォーカルが、のりのいい推進力を生む。仕事の帰りにコンサートホールに寄って聴く音楽は、要するにこれでいいのだと思った。疲れがとれて、楽しくなる。

 4曲目は「ドラミング」(1970‐71)。演奏時間1時間程度の大曲だ。初期の代表作の一つだが、その後の作品のもつ壮麗さをすでに備えていることが感じられた。

 聴衆は圧倒的に若い人が多かった。歓声はブラヴォーではなく、イェーという感じ。こういう演奏会にはモチヴェーションの低い人がいないので気持ちいい。
(2012.12.5.東京オペラ・シティ)

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