Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

コルンゴルト

2014年04月02日 | 音楽
 今年の東京春祭はマルリス・ペーターゼンのチケットをとっていたが、仕事のために行けなくなった。残念だが、仕方がない。その代わり年度末の3月31日には定時退勤できたので、当日券でコルンゴルトの演奏会に行った。

 コルンゴルトはオペラ「死の都」とヴァイオリン協奏曲、そして交響曲しか知らなかった。そのなかでは、ヴァイオリン協奏曲が好きだった――今でも好きだ――。一方、交響曲は苦手。そして、正直にいって、この3曲で十分だと思っていた。

 そんななかで、コルンゴルト入門といったこの演奏会は、コルンゴルトの未知の領域を知るいい機会だった。「死の都」からのアリアを除いて、他の曲はすべて初めて聴く曲だ。

 以下、一部省略して、自分にとって意味のある曲だけ、書き留めておきたい。1曲目はオペラ「ポリュクラテスの指輪」の冒頭場面。いかにもオペラ・ブッファらしい幕開きだ。本作と次作の「ヴィオランタ」はともに1幕物のオペラで、ブルーノ・ワルターが2本立てで初演した。「ヴィオランタ」は、悲劇だそうだ。コルンゴルトの悲劇とは、ちょっと想像しにくい――根っからの楽天家のように感じられるので――。どんな作品なのだろう。

 演奏はソプラノ天羽明恵、テノール又吉秀樹、ピアノ村田千佳。天羽明恵は、こういう小さいホールで聴くと、その力量がよくわかる。音がグラつかない。又吉秀樹は初めて聴いた。立派な声の持ち主だ。今年9月の東京二期会「イドメネオ」にタイトル・ロールで出演予定(ダブルキャストの一人)。村田千佳のピアノもセンスがよかった。

 3曲目に「まつゆき草」という歌曲が歌われた。いい曲だ。コルンゴルトの一番の美質はこういう歌曲に表れているような気がした。これは10代の作品。7曲目で歌われた「デズデモーナの歌」と「緑なす森の木陰で」は40歳前後の作品だが、これらもいい曲だった。一方、最後に歌われた「ウィーンに捧げるソネット」は、輝きを失った曲。戦後の失意の表れか。

 8曲目に弦楽四重奏曲第3番が演奏された。映画音楽のモチーフを‘純音楽’に転用するコルンゴルトのユニークな手法の一例。今の視点で見ると、ボーダーレスなその手法が現代的で面白い。演奏は札響、都響および神奈川フィルの首席奏者で構成されたストリング・クヮルテットARCO。きっちりした演奏だったが、コルンゴルトらしい‘華’がほしかった。
(2014.3.31.石橋メモリアルホール)

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