Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

テーマ作曲家<ハインツ・ホリガー>管弦楽

2015年08月28日 | 音楽
 ホリガー指揮の東京交響楽団。1曲目はドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」。演奏には精彩が欠けていた。リハーサル時間が足りなかったのだろうか。

 でも、そういう演奏だからこそ、ホリガーの感じ方が露わになった面もある。緩急の付け方が自在で、拍節が自由に動く。けっして機械的にならない。なるほど、こういう感じ方をしているのかと思った。

 2曲目はグザビエ・ダイエ(1972‐)の「2つの真夜中のあいだの時間」(2012)。ホリガーが高く評価している若手ということだが、正直いって、あまりピンとこなかった。なにか新しい感覚を期待したが、わたしには見つからなかった。

 3曲目はホリガー(1939‐)自身の「レチカント」(2000‐2001)。ヴィオラ独奏と小オーケストラのための曲だ。ナクソス・ミュージック・ライブラリーを覗いてみたら、この曲が入っていたので、事前に聴いてみた。ヴィオラの動きを追っていたが、オーケストラには意識が向かなかった。でも、実演を聴いたら、オーケストラの透明感に惹かれた。スイスの澄んだ空気のようだった。

 4曲目はホリガーの新作「デンマーリヒト ―薄明―」(2015)。ソプラノ独唱と大編成のオーケストラ(基本的に3管編成)のための曲だ。ホリガー自作の俳句(ドイツ語で書かれている17音節の詩)5句に付曲したもの。5句はいずれもホリガーが「1991年の大晦日の夜、東京の皇居そばの公園」で書いたものだ。

 木枯らしが吹きすさぶ(木枯らしの模倣音が鳴る)凍てつく夜のような――抑制された――オーケストラのテクスチュアに、ソプラノが文様を織り込む。あるときはオーケストラの一員になって氷の切片を加え、またあるときは大胆な曲線を描く。透徹した緊張感。一瞬の緩みもない。これは傑作ではないだろうか。日本関連の傑作の誕生か。

 ソプラノ独唱はサラ・マリア・サン。予定されていた歌手がキャンセルし、急きょ代役に立った。十分な準備時間が取れたかどうか。その分は割り引かなければならない。

 5曲目はホリガーの師匠シャーンドル・ヴェレシュ(1907‐1992)の「ベラ・バルトークの思い出に捧げる哀歌」(1945)。バルトークの訃報に接したヴェレシュの悲嘆が息づいている。演奏にも感動した。オーケストラの緊張感は、ほんとうに優れた音楽家が指揮台に立っていることを伝えていた。
(2015.8.27.サントリーホール)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ある若き詩人のためのレクイエム | トップ | シュティムング »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

音楽」カテゴリの最新記事