Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

フェスタサマーミューザ:ソッリマ/藤岡幸夫/東京シティ・フィル

2019年08月10日 | 音楽
 フェスタサマーミューザの藤岡幸夫/東京シティ・フィルの演奏会は、チェロ奏者で作曲家でもあるジョヴァンニ・ソッリマが出演することと、メインのプログラムに芥川也寸志の交響曲第1番が組まれていることとで興味を惹かれた。

 1曲目はシベリウスの「レンミンカイネンの帰郷」。藤岡幸夫は今年4月に東京シティ・フィルの首席客演指揮者に就任したが、今後の方針の一つにシベリウスの演奏を掲げている(その他にイギリス音楽の演奏と邦人作品の演奏も)。今回の演奏もその一環だろう。今後徐々に味が出てくることを望む。

 2曲目がソッリマの独奏でドヴォルザークのチェロ協奏曲。ソッリマの作曲はクラシック音楽の枠内に収まらず、中東音楽やユダヤの音楽、中世やバロックの音楽、ロック、その他のグローバルな視野に立つものなので、かえってドヴォルザークの本作のようなスタンダードなレパートリーをどう弾くか、興味の的だった。

 結果は、何か極端なことをするわけではないが、伸縮自在なところがあり、とくに弱音を引っ張る箇所など、拍節感が希薄になる瞬間があり、思わず引き込まれた。また激情的な箇所では、ソッリマの頭の中で音楽が渦巻き、その渦に身を投じるような気迫があった。鬼面人を驚かすタイプではないが、個性的だった。クラシック音楽の伝統を「ぶっ壊す」タイプではないが、現代に生きる者の心情をリアルに表した。

 当然、アンコールがあった(じつはアンコールが一番楽しみだった)。知らない曲だったが、チェロのあらゆる部分から音を出し、足を踏み鳴らし、最後は聴衆に手拍子を求める曲。会場中が盛り上がった。いかにもソッリマの曲だ。帰り際に掲示板を見たら「ナチュラル・ソング・ブックNo.4&6」とのこと。

 3曲目は芥川也寸志の交響曲第1番。第1楽章で使われる木琴と小太鼓はショスタコーヴィチを連想させ、第4楽章の快速テンポで駆け抜ける音楽はプロコフィエフを連想させるのは、いかにも芥川也寸志だが、今回はそれに加えて、第3楽章の重い足取りが、ホルストの「惑星」の中から「土星」を連想させた。芥川也寸志と「惑星」との関係はだれか指摘しているだろうか。じつはわたしは、通常はストラヴィンスキーの「春の祭典」との関係を指摘される「エローラ交響曲」にも、「火星」とよく似たフレーズを感じるのだが。

 演奏は大変よくまとまっていた。この曲には別の指揮者とオーケストラのCDがあるが、それよりも作品の真の姿を捉えていたと思う。藤岡幸夫のツィッターによれば、この演奏はCDになるそうだ。
(2019.8.6.ミューザ川崎)

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