Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

マイケル・フランシス/日本フィル

2012年12月10日 | 音楽
 イギリスの若い指揮者マイケル・フランシスが客演した日本フィルの定期は、どの程度話題になったのだろう。左欄のブックマークに登録している各ブログでは話題になっていない。わたしは面白かったので、その感想を。

 1曲目はジョン・アダムスの「主席は踊る」The Chairman Dances。主席とは毛沢東主席のこと。「オペラ《中国のニクソン》より」と記載されている。《中国のニクソン》は好きなオペラだ。CDを2種類持っているし、METライブビューイングも観た。ところが演奏が始まると、ピンとこなかった。記憶力の悪さというか、日頃いかにいい加減に聴いているかを思い知らされた気がして、愕然とした。

 広瀬大介氏のプログラム・ノートを読むと、「第3幕で用いるつもりで作曲されたが、結局採用されなかった音楽をそのまま独立した作品として転用したもの」と書かれていた。これで納得。演奏はよかった。なにか独特な透明感があった。曲がそうだからかもしれないが、だとすれば、それを正確に表現していた。

 2曲目はブリテンの「シンフォニア・ダ・レクイエム」。冒頭のティンパニと大太鼓の音がこれまで聴いたことがないほど強く打たれた。息を呑んだ。この曲にかける意気込みが感じられた。それは並々ならぬものだ。その後の演奏にもどす黒いものが渦巻いていた。

 少しずつ静まって第3楽章。この楽章を、平和への賛歌として感動的に歌い上げる例もあるが、この演奏は一味ちがった。思いがけない空白のような、まるで真空地帯のような感覚だった。ショスタコーヴィチの交響曲第8番の最終楽章が思い浮かんだ。あの楽章と同じ感覚だ。どちらも感動的に歌い上げるのは楽天的過ぎるようだ。

 3曲目はチャイコフスキーの交響曲第4番。これも面白かった。フレージングや音の強弱に独特のこだわりがあった。けっしてルーティンに流すことはなかった。オーケストラの好きなようには演奏させなかった。オーケストラには多少抵抗感があったかもしれない。だが時にはそれも必要だ。

 マイケル・フランシスは、外見上はいかにもイギリス紳士だが、音楽は熱い。2010年4月に東京シティ・フィルを(急な代演で)振ったときも熱かった。あの熱さを日本フィルでも確認した思いだ。

 あえていうが、演奏後の日本フィルの反応はイマイチだった。意外にクールだった。気のせいだろうか。
(2012.12.7.サントリーホール)

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