Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ボーイト「メフィストーフェレ」(バイエルン州立歌劇場)

2018年05月02日 | 音楽
 アッリーゴ・ボーイト(1842‐1918)のオペラ「メフィストーフェレ」は、数年前にフランクフルト歌劇場で観る予定だったが、舞台スタッフのストライキのため、演奏会形式の上演に変更された。演奏そのものは熱演だったが、スペクタクル的な要素の強いオペラなので、舞台上演を観るのが念願になった。

 今回の旅行はチロル地方のハイキングがメインだったが、ミュンヘンの最終日に希望者でオペラに行った。演目は「メフィストーフェレ」。会場はバイエルン州立歌劇場。希望した二人はオペラが初めてだったので、同歌劇場の豪華な内装に目を見張った。

 舞台には無数の鉄パイプが巨大なトンネルのように組まれている。ゲーテの「ファウスト」が原作のオペラだが、老博士ファウストも悪魔メフィストーフェレも現代人。プロローグの天上からのラッパの響きは、メフィストーフェレが蓄音機にレコードをかけて鳴らす。ファウストを冒険へと旅立たせるメフィストーフェレの空飛ぶマントは、空飛ぶバイク。思わず笑いが漏れる。

 演出はローランド・シュワブ。第2幕の後半のブロッケン山での悪魔たちの集会は、炎がいくつも吹き上がるスペクタクル的な演出で迫力満点。だが、それ以上にわたしが感心したのは、ギリシャ神話の人物でトロイ戦争の引き金になった絶世の美女エレナの場面(第4幕)。

 エレナはなんと老人施設の看護人、ファウストは入居者という設定。ファウスト以外にも入居者が沢山いて、みんな髪はボサボサ、だらしなくパジャマを着て、生気がない。ファウストもその一人だが、看護人エレナに恋をする。

 わたしは驚いた。なぜ?と思っているうちに、年老いたファウストが息を引き取るエピローグになった。流れが自然だ。そうか、エレナの場面(第4幕)の老人施設への読み替えは、エピローグ(年老いたファウストの死)への流れを自然にする方策だったのか、と。

 あえていうと、エレナを献身的な看護人に仕立てた結果、純情な村娘マルゲリータの悲劇(第3幕)と美女エレナ(第4幕)との対照が弱まった面があるかもしれない。でも、演出家はそれを承知でエレナの場面の解決策を提示したのだろう。

 メフィストーフェレを歌ったエルヴィン・シュロット、ファウストを歌ったジョセフ・カレヤ、ともにパワー満点。指揮のオマール・マイヤー・ウェルバーは音楽の頂点での“ため”がうまかった。
(2018.4.29.バイエルン州立歌劇場)

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