Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ノット/東響

2022年05月22日 | 音楽
 東京交響楽団(以下「東響」)の定期会員になった。長らく在京の5つのオーケストラの定期会員を続けていたが、そのうちの1つをやめて、東響の定期会員になった。昨日は初めての定期演奏会。今までも年に1、2度は東響を聴く機会があったが、定期会員になると、身の入り方がちがう。

 1曲目はリヒャルト・シュトラウスの「ドン・ファン」。16型の大編成だが、その音は後期ロマン派の豊麗な音ではなく、カラフルな照明が点滅するような鮮明な音だ。最初は違和感があったが、次第にその音の個性が呑み込めた。

 2曲目はショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番。ピアノ独奏はペーター・ヤブロンスキー。トランペット独奏は首席奏者の澤田真人。しっかり構築された見事な演奏だったが、この曲の諧謔性というか、わたしの言葉でいえば、ヨレヨレの悪ふざけ、もっといえば馬鹿々々しさは、あまり出ていなかった。そう感じるのは、先日、エフゲニー・ボジャノフのピアノ独奏、ラドスラフ・シュルツ指揮バイエルン放送室内オーケストラのライブ録音を聴いたからだろう。今はその話をする場ではないので、深入りはしないが、わたしはそれを聴いてずっこけた。もっとも、演奏の立派さでは、今回のほうがはるかに上だ。

 ヤブロンスキーのアンコールがあった。なんという曲か知らないが、休みなく動き回る曲だった。先ほどサントリーホールのホームページで確認したら、パツェヴィチのピアノ・ソナタ第2番の第3楽章だ。パツェヴィチはポーランドの女性作曲家だ。先日のN響のAプロに登場したヴァイオリン奏者のアリョーナ・バーエワも、パツェヴィチの「ポーランド奇想曲」をアンコールに演奏した。

 3曲目はウォルトンのオラトリオ「ベルシャザールの饗宴」。バリトン独唱はジェームズ・アトキンソン、合唱は東響コーラス(合唱指揮は冨平恭平)。合唱は舞台後方(Pブロック)と舞台両サイド(LAブロック、RAブロック)に1席おきに市松模様で配置された。マスクはなし。2群のバンダは舞台両サイドの合唱の後方。

 果敢にリスクをとったスリリングな演奏だ。各パートがしっくりまとまるアンサンブルではなく、互いに自己主張しあうアンサンブル。エッジの立った音の交錯から、音楽の輪郭が鮮やかに現れる。なるほどこれは、数ある在京オーケストラの中でも、際立った個性を誇る指揮者/オーケストラのコンビだ。

 遅ればせながら東響の定期会員になったが、なってよかった。これからも楽しませてもらう。それにしても、在京オーケストラの競争の激しさよ。
(2022.5.21.サントリーホール)
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