Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

鹿鳴館

2014年06月22日 | 音楽
 池辺晋一郎のオペラ「鹿鳴館」。2010年の初演のときは、正直いって、面白いとは思わなかった。そこで今回、おっかなびっくり観に行った。ところが、思ったよりも面白かった。やっぱり、初演のときには、わからなかったのだろうと反省した。

 なにが面白かったのかというと、第1幕~第2幕の各場面に、克明に音楽が付けられていたことだ。初演のときには、単調だと思った。なんだか抑制された音楽のように感じた。わたしの理解力が足りなかったのだろう。

 オペラというものは2回は観ないとわからないと思った。そういうわけで、休憩後の第3幕~第4幕も期待したが、その割にはオペラらしい感興がわかなかった。なぜだろう。率直にいって、このオペラで中心的な役割を担うワルツの音楽に、あまり魅力を感じなかったからだ。

 そのワルツの音楽は、多少は記憶があったので、じっくり耳を傾けた。そのうち、「ばらの騎士」のオックス男爵のワルツの、エコーというか、断片のようなものが聴こえるような気がした。でも、気のせいだろうと思った。家に帰ってから反芻していると、どこかで、あの音楽は「ばらの騎士」のワルツのパロディーだという説を読んだような気がした。どこで読んだかは思い出せない。それとも、なにかの勘違いか。

 もっとも、もしパロディーだとしても、西洋文化のお仕着せを着た明治の人々と、落ちぶれたとはいえ、貴族の血を引くオックス男爵との、どこがどうパロディーになるか、うまく結び付かなかった。それならむしろ、ヨハン・シュトラウスかなにかのほうが、パロディーになり得ると思った。

 いずれにせよ、あのワルツの音楽は、オペラの核になるべき音楽だ。そこに魅力を感じなかったというか、希薄な印象しか残らなかったのは、全体に遠心的なこのオペラの音楽の、残念なところだった。

 与那城敬、腰越満美、宮本益光の各氏は、初演のときと同じだ。今回、初演のときよりも確信をもって歌い、かつ演じていたと思う。幸田浩子は初演のときは別の組だった。さすがの安定感だ。谷口睦美は今回初参加。声の素質がすごい。日本の歌手のレベルアップの象徴のように感じた。

 指揮の飯森範親は、初演のときの沼尻竜典よりも、このオペラをオペラティックに盛り上げようと頑張っていた。それが功を奏していたことは確かだ。沼尻竜典はもっと慎重な演奏に終始していたと記憶する。
(2014.6.20.新国立劇場中劇場)
コメント (2)
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