後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔189〕難産の末『地域演劇教育論-ラボ教育センターのテーマ活動』(晩成書房)という本が出ました!

2018年08月01日 | 図書案内
 7月31日(火)に拙著の印刷が終了しました。そして本日、8月1日(水)その本が我が家にやって来ました。梱包を解いての第一印象は、明るい感じの本に仕上がったなということでした。晩成書房の社長、水野久さんのセンスです。さらに、採用させていただいたラボ教育センターのラボっ子たちの表現活動の写真が効いているなと思いました。今回の本は3回の校正もさせていただいているので、内容にはけっこう自信を持っています。近々大きな本屋さんには並ぶと思いますので、是非手にとっていただけると嬉しいです。
 どんな本なのか、まずは晩成書房のHPを覗いてみましょう。








●『地域演劇教育論-ラボ教育センターのテーマ活動』晩成書房HPより

 ラボ教育センターという魅力的な教育組織に出合ったのは1998年の夏のことだった。
 ラボ付属の言語教育総合研究所での研究活動を通して、ラボの活動が「優れた地域での演劇教育の典型」であることを確信するに至った。
 ラボ・テューターやラボっ子は活動のすべてに、私の提起する「ことばと心の受け渡し」を充満させ、他者とシンクロする「からだ」を兼ね備えていたのである。
 ここでは、子どもの生理や論理を優先させ、まさに「学びの地平」が拓かれつつあった。
 独創的で魅力にあふれたテーマ活動の一端でも紹介できたらという思いで出版を思い立った。(まえがきより)

まえがき
福田三津夫さんの新著に寄せて=松本輝夫
福田三津夫さんとの運命的な出会い=矢部 顕

第1章 地域の演劇教育─ラボの場合
■ラボ・ワークショップ全国行脚
1すべてはラボ教育センター本部から始まった
2ラボ・テューターとラボっ子から学ぶ
3各地でのワークショップ・アラカルト
4ラボ・テューターとラボっ子の「からだ」
■テーマ活動づくりとパーティづくり─ラボ・パーティ参観記
1研究テーマを設定する
2居場所づくりとテーマ活動─宇野由紀子パーティの巻
3テーマ活動「スサノオ」を創る─行松泉パーティの巻
4ことばとからだのハーモニー─高橋義子パーティの巻
5三つのラボ・パーティから視えたもの
■テーマ活動は地域の演劇教育
1演劇教育とは何か
2演劇教育の育てる力
3テーマ活動は地域の演劇教育
4テーマ活動は限界芸術の一つ
5テーマ活動における表現
■テーマ活動の表現を考えるための本

第2章 新・実践的演劇教育論
演劇教育の原点を探る1
高山図南雄の「あらためてスタニスラフスキー」
竹内敏晴『主体としての「からだ」』
鳥山敏子の教育実践
副島功の仕事
辰嶋幸夫のドラマ
渡辺茂の劇づくり「LOVE」
演劇教育の原点を探る2
寒川道夫の光と影
マリオ・ローディと演劇教育
演劇教育としての授業
大学の授業と演劇教育

あとがき
関連資料
初出一覧


 以上の紹介文は、まえがきの抜粋です。次に、まえがきの全文を紹介します。 
 

■まえがき

 ラボ教育センター(ラボ)という魅力的な教育組織に出合ったのは1998年の夏のことだった。
 その年、アジアで初めて、フレネ教育者国際会議(第22回)が埼玉県飯能市にある私立自由の森学園を主会場にして10日間にわたって開かれた。世界中から教師約170人、日本側のスタッフと参加者含めて約170人が集い、「学びの地平を拓こう」をメイン・テーマにした自主的自立的な教育研究集会になった。
私が参加したアトリエ(分科会)は「日本の昔話を身体表現で楽しむ劇活動による外国語習得」だった。ここでは主に外国からの教師を中心に日本昔話「おむすびころころ」を劇的に遊んで言語獲得を目差していた。その中心の指導者が、ラボから派遣された2人のラボ・テューターだった。(詳細は拙著『実践的演劇教育論』「演劇教育の広がり」)
この集会の報告を「演劇と教育」に掲載したことが、当時のラボの会長・松本輝夫さんの目にとまり、ラボ機関誌でのインタビューに応じたり、関西地区の講演を頼まれたりすることになった。
 その数年後、フレネ教育者国際会議の実行委員長だった村田栄一さんの出版記念会で松本さんと再会し、ラボ付属の言語教育総合研究所(言語総研)主催の竹内敏晴講演会に誘われた。
それ以来連続して言語総研に出席し、ほどなく正式な所員に迎え入れられることになった。
言語総研での研究活動を始めてからほぼ10年が経過した。この間、全国各地で私が講師に招かれての「ことばと心の受け渡し」ワークショップと、4箇所のラボ・パーティ訪問、各地区のテーマ活動(ラボの独特の劇的表現活動)の発表会を見学することができた。
こうした研究活動を通して、ラボの活動が「優れた地域での演劇教育の典型」であることを確信するに至った。ラボ・テューターやラボっ子はラボ・パーティという空間や、その中心的活動であるテーマ活動のすべてに、私の提唱する「ことばと心の受け渡し」を充満させ、他者とシンクロする「からだ」を兼ね備えていたのである。ここでは、子どもの生理や論理を優先させ、まさに「学びの地平」が拓かれつつあった。

私の師匠の一人、故・村田栄一さんが『ことばが子どもの未来をひらく』(筑摩書房、1997年)を出版している。これはラボ各支部での彼の講演記録を中心に構成されていて、ラボの活動を正面から紹介した貴重な1冊になっているが、この本以外には、外部からラボの活動を紹介した類書が見つからないのをかねがね残念に思ってきていた。そこで力不足を顧みず、独創的で魅力にあふれたテーマ活動の一端でも紹介できたらという思いで出版を思い立った。言語総研在籍10年で何が見えてきたのか、途中経過報告としてまとめてみることにしたのが第1章である。これらは学校教師の視点でのテーマ活動論であるので、ラボ関係者には当然異論があることを承知で報告させていただいた。大いに批判検討を加えていただきたいところだ。
そうしたなかで、巻頭言として、言語総研でお世話になった松本輝夫さんと矢部顕さんに、ラボの基礎を築いた谷川雁、鶴見俊輔、竹内敏晴、村田栄一との出会いと果たした役割について貴重な「証言」をいただいたことは望外の喜びである。

第2章では、「新・実践的演劇教育論」として、前著『実践的演劇教育論』で触れられなかった演劇教育の原点やその周辺のことについてまとめてみた。学校内外を問わず、演劇教育の根っことは何かを探ってみることになった。

本書が、地域での演劇教育の実践と理論を考える一助になることを期待している。

                              2018年5月 福田三津夫



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