後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔275〕ウェストール全踏破、あと2冊。『青春のオフサイド』ロングセラーの理由がわかりました。

2020年06月21日 | 図書案内
 ロバート・ウェストールについては今まで何回かこのブログで取り上げてきました。結構詳しく書いているので、興味のある方は是非そちらを探し当ててください。ブログ〔122,123〕
 私が最初にウェストールに興味を持ったのは劇団うりんこの児童劇『弟の戦争』を見てからでした。弟に憑依した「戦争」を、独特のタッチで描いた作品でした。当時私は『演劇と教育』という雑誌の編集代表を務めていて、その編集会議に劇作家の篠原久美子さんを定期的にお招きしてお話をうかがいました。不覚にも、その時わかったのですが、実は彼女も『弟の戦争』の脚色をしていたのでした。篠原さんはさすが劇作家、ウェストールの作品は全部読んでこの作品の脚色を書いたということでした。
 そんなことがあって、私にとってウェストールは特別な存在になりました。いつか全作品を読破したいと思うようになりました。こつこつ1冊ずつブックオフなどで本を手に入れ、楽しみながら読み進めてきました。ジブリアニメの好きな私は、宮崎駿さんがウェストールが好きだということを知ります。彼は何冊か挿絵も手がけているのでした。
 そして先日手に入れたのが『青春のオフサイド』です。2005年に初版発行ですが、2019年、つまり昨年2刷発行しているのです。爆発的な売れ行きというわけではありませんが、じわじわ息長く売れ続けているということのようでした。
 読んでその理由がわかった気がします。美しい高校教師と生徒の恋物語でした。かなりきわどい表現もあり、私のような年寄りが読んでも青春時代を思い出しながらのはらはらどきどきの心ときめく本でした。
  『青春のオフサイド』という題名もしゃれています。原題は「Falling into Glory」。
  ウェストールも小野寺健さんもすでに他界しています。いい仕事は長く残るのですね。
  さて、読み残すはあと2冊、短編集『遠い日の呼び声』徳間書店、『ゴーストアビー』あかね書房!


■『青春のオフサイド』ロバート・ウェストール昨、小野寺健訳、徳間書店〔扉〕
 戦争が終わって何年か経ったとき、十七歳のぼくは、三十二歳になった彼女と再会した。小学生の頃に憧れていた女の先生エマが、ぼくの高校の教師として転任してきたのだった。年寄りばかりの先生たちの中では、彼女はきれいだったし、いつも励ましてくれるいい先生だった。ぼくは胸をときめかせた。だが、ぼくの毎日はラグビーと進学のための勉強でいっぱいだったし、エマの方は、婚約者を戦争で亡くし、今は同僚の先生とつきあっているという噂だった。だから、普通ならあんなことは起こるはずがなかった。なのに、ぼくたちは恋に落ちた。ほかに何も、目に入らなくなった…。
 年上の先生と恋に落ちた十七歳の少年ロビーの日々を、ラグビーチームの個性豊かな仲間たちや、ロビーに惹かれる素朴なクラスメートの少女、理不尽な校長や大好きな祖母など、まわりの人々との交流の中で描きだす、みずみずしい物語。自信と劣等感、粗雑さと繊細な優しさが混在し、生命力に溢れる「十七歳」の肖像が、くっきりと浮かびあがる、巨匠ウェストールによる、深く心を揺さぶられる青春の物語。

●著者略歴〔扉〕
*ウェストール,ロバート
1929~1993。イギリス・ノーサンバーランドに生まれる。美術教師として教えるかたわら、一人息子のために書いた処女作「“機関銃要塞”の少年たち」(評論社)がカーネギー賞を受賞、作家としてスタートする。「かかし」(徳間書店)で再度カーネギー賞、「海辺の王国」(同)でガーディアン賞を受賞、「児童文学の古典として残る作品」と評された。

*小野寺健
1931年横浜に生まれる。東京大学文学部英文学科卒、同大学院修士課程修了。現在、横浜市立大学名誉教授、日本大学講師、文化学院講師


   今回のおまけのコラムは前川喜平さんです。


 ◆小池東京都知事とコロナウイルス
  小池氏はコロナ禍を自分の選挙に利用している
             前川喜平(現代教育行政研究会代表)

 小池百合子東京都知事の新型コロナウイルス対策には、首をかしげる
ことが多い。東京オリンピックーパラリンピックの延期が決まるや、
翌3月25日の記者会見でいきなり「感染爆発の重大局面」と言い出した。

 オリ・パラの開催まで感染拡大を隠そうとしていたのではないか。
 都立学校の休校は3ヵ月に及ぶ。一時9月入学論を唱えたが
今は黙っている。段階的に分散登校を行う方針だが、6月15日から
やっと週3~4日の登校だ。学習塾への休業要請は6月1日に解除
した。学校の再開の方が先ではないのか。

 「夜の街」を問題視してきた小池氏は、6月7日の西村康稔担当相
との会談で、ホストクラブのホストが定期的にPCR検査を受けられる
態勢作りを確認したという。それなら介護士、保育士、教師などにも
同様の措置をとるべきだろう。
 6月2日にレインボーブリッジを赤く照らした「東京アラート」は、
11日深夜に解除したが、12日零時にカラオケやパチンコ店への休業
要請も解除した。19日には接待を伴う飲食店も緩和するという。
これも解せない。何のための「アラート」だったのか。同じ12日、
小池氏は都知事選への出馬を表明した。

 休業要請解除は出馬表明の「お土産」なのではないか。
 小池氏はコロナ禍を自分の選挙に利用しているのではないか。
      (6月14日東京新聞朝刊19面「本音のコラム」より)


最新の画像もっと見る