中野笑理子のブログ

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これだからやめられない

2013年07月17日 | 日記
昼ご飯を食べ損ねたが、幸いにも直帰出来る事になったある日。
夕餉にはまだ少し早い中途半端な時間。
喫茶店のランチメニューはもちろん終わっているし、食事のできるお店は夜の営業までもう少し間があるであろうこの時間。
参ったな……と思いながら、おぼろげな記憶を頼りに裏路地に入る。
ひっそりとしているけれど、暖簾が出ている、という事は営業中だ!
それでも自信無さげに、覗くように入る自分が情けない。
ーーらっしゃい。
店内に客はなく、テレビのニュース番組の声がやけに大きく感じる。
入り口すぐでもなく、奥という程でもない真ん中あたりのテーブルに腰をおろして上きつね丼(玉子とじ)と鴨吸いを注文する。しばし後にあっと気づいて
「スミマセン、ご飯ちょっと少なめで」
「ハイよ!」
良かった、ちょうど炊飯器の蓋を開けたところで間に合った。
「はい、どうぞ」
上きつね丼と鴨吸いが登場する。
両手を合わせて箸を割っていただきます。あっ、七味も振らなくちゃ!
甘辛く炊いたお揚げさんと半熟になった玉子とじ部分をバランス良くご飯とともに口の中へ。そして続いて鴨吸いを一口。
大正解!と心の中でガッツポーズをきめる。
朝ごはん以来の固形物に胃も激しく喜んでいる模様。
テレビのニュースを見るともなしに眺めている厨房に一人、店内に二人の店のおっちゃん達と客一人(私)。
やがて食べ終え、一息ついてお茶をいただく。
長居する気は更々ないけれど、もう少しだけ余韻に浸りたいこの気持ち。
店にいる者が皆無言で、テレビの方を見ている。
さっさとお勘定をして出ていった方がいいのかな……。
歓迎されているのか、そうでないのかよくわからない、居心地の決して良くはないこの時間。けれど、嫌いではない。お茶の残りを飲み干しつつ、ぼんやり眺めていたメニューの中に『中華カレー』なる文字を見つける。
ちょうどお茶のおかわりを入れに来てくれたおっちゃんに
「中華カレーて何ですか~?」
と訊いたところから物語は始まった!(前フリが長くてスミマセン)
ーー中華カレーはな、カレーうどんの中華そばバージョンやねん。
へぇ~、中華そばってなんか懐かしいですね。
ーーうちの中華そばはな、ラーメンよりあっさりした 、昔の支那そばっちゅうやつや。よう出るデ。あと、今よう出るんはな……
おっちゃんは水を得た魚のように話だしました。
ーーそうそう、こないだテレビ来てな~、あっ!これも 見てみ~。
と、嬉しそうに雑誌を持ってきてくれました。
見開き2頁にわたるカラページに写っているのは、今まさに私が座っているこの席です。
ーー吉本の○○君知ってるか~?昔から来てくれてるねん。季節もんやから今はないけど、あの子は牡蠣が好きでな~
私も牡蠣が大好きな事や、この前ここで食べた牡蠣丼が時価となっていてビビりながら食べたけど美味しかった事などを話すと、気を良くしてくれたのか、お店の話から他の蕎麦メニューの説明まで更に微に入り細にわたっておっちゃんの話は止まりません。
今日は上きつね丼 (玉子とじ)を注文したけど、普通のきつね丼てどんなんなのかと訊くと、甘辛く炊いたお揚げさんだけで玉子でとじていないのがきつね丼だとの事。
そうそう東京でたぬき言うたらね、と私が話始めると、おっちゃんは面白い話をしてくれました。
ーー京都でたぬき言うたらな、きざみのあんかけが出てきよるデ。
ええ~、ホンマに?
ーーほんで神戸行ったらまた違うねん。神戸はな、しのだ言うデ。
ええッ~、しのだってあのしのだ?
ー恋しくば訪ね来てみよ和泉なる信太の山の恨み葛の葉ー
安倍晴明の母親とも言われる信太山の葛の葉狐の信太です。
ーーそうそう(と、とっても嬉しそうに頷く)
そこで私は訊いてみました。最大の疑問である『ぬき』について。もう、今訊かいでいつ訊くねん。
ーーうーん、まぁ言うてくれたら作らんこともないけどな~。
と、あまり乗り気ではない様子。
牡蠣のぬきで熱燗なんて堪らんと思うんですけど。
ーーせやったら、牡蠣丼の上だけ言うてくれたらええねん。玉子でとじてる方が旨いと思うデ。
あっ、それ美味しそう!
今年の冬はとうとう念願のぬきで一杯飲れそうです。ヤッター!
店を出たのは、食べ終えて小一時間も経っていました。

牡蠣ぬきで一杯のBGM♪C☆NA(シーナ)&カーキーズ カキのうた♪