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わくわく CINEMA PARADISE 映画評論家・高澤瑛一のシネマ・エッセイ

半世紀余りの映画体験をふまえて、映画の新作や名作について硬派のエッセイをお届けいたします。

兄妹愛の感動実話「おにいちゃんのハナビ」

2010-09-24 17:28:27 | 映画の最新情報(新作紹介 他)

Img335 高良健吾、谷村美月共演の「おにいちゃんのハナビ」(9月25日公開)は、05年秋に放映された新潟県中越地震の1年後を見つめるTVドキュメンタリーにヒントを得た作品だそうです。このドキュメンタリーは、小千谷市片貝町で400年の伝統と世界一の花火を誇る片貝まつりを軸にしていたという。町民が、子供の誕生や成人、還暦などを祝して、神社に奉納する形で花火を打ち上げる。そこで紹介されたエピソードに、成人を迎える兄が亡き妹のために、一年かけて準備し、このまつりで花火を打ち上げる話があった。監督の国本雅広は、この実話に心打たれて映画化を決意、今回ついに映画監督デビュー作となった。
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 片貝まつりで花火が打ち上げられる9月9日、高校生の華(ハナ/谷村)が半年の入院生活を終えて帰宅すると、兄の太郎(高良)がひきこもりになっている。両親はなすすべもなく見守っているが、華は昔の兄に戻ってもらうために、乱暴ともいえる勢いで必死に兄を外に連れ出そうとする。強引に新聞配達のアルバイトを見つけ、片貝まつりの成人会に兄を入れようと試みる。兄は、健気な妹の後押しに勇気づけられ、少しずつ心を開き始める。だが、やがて華の白血病が再発。太郎は、華に会いに毎日病院に通ううちに、妹にとって花火が幸せの象徴であることを知り、自ら花火作りの行動を起こす…。
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 華の一家が彼女の療養のために東京から引っ越してきたこと、兄がひきこもりであることは実話とは異なるとか。そのせいか、兄妹・家族の愛のドラマとして、丁寧に、よく作られていて、見ていて泣けます。特に、田舎に越してきて以来、友だちもできず、ひきこもりになった太郎が、妹の励ましで心を開いていくまでの、高良健吾の表情の変化がみごと。また、華役の谷村美月も爽やかで、好感度大。兄妹そろって自転車で新聞配達をするシーンや、華が亡くなったあとの片貝まつりで太郎が妹のために自分で作った花火を打ち上げるクライマックスがしみじみと心に迫る。兄妹の母親役に宮崎美子、父親に大杉漣。家族の崩壊から再生まで、彼らのひたむきな姿を描いたファミリー・ドラマの佳作です。


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