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デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

マイケル・ブレッカー

2007-01-21 08:36:01 | Weblog
 シンセサイザーは70年代にキース・エマーソンが使用したことからロック界に広がり、いつの間にか音楽界全体に波及した。今ではレコーディングに欠かせない楽器だという。ジャズ界で最初に使ったのは誰なのか分からないが、ジョー・ザヴィヌル、ハービー・ハンコックあたりが魁だろうか。アナログ世代にとって電子加工された音というのは感覚的に受け入れ難く、耳に馴染むのには時間がかかる。

 87年のマイケル・ブレッカーの初リーダー作品を聴いたとき、パット・メセニー、ジャック・デジョネット、チャーリー・へイデン等、当時の一流が揃っているのにシンセサイザーの機械化された音のせいか緊張の欠く散漫な印象を受けた。そのサウンド、アルバム全体は80年代の先端であり、全米ジャズチャートで19週連続一位を記録したのも肯ける。ジャズの新しい方向性を示唆した所謂新主流派の代表的な音なのだろうが、一時的に売れたものはブームで終わるきらいがある。ジャズはベストセラーよりロングセラーの作品こそが評価に値する。

 そんなブレッカーに対する評価を大きく変えたのは01年のマッセイ・ホールのライブ盤だった。ハンコック、ロイ・ハーグローヴと組んだセッションでマイルス・デイヴィスとジョン・コルトレーンにちなんだ曲を演奏している。マッセイ・ホールといえば53年にチャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピー等バップ・ジャイアンツが歴史的なセッションを行った場所である。ブレッカーも一段と熱が入ったのであろうか、気魄あるソロが随所に聴かれ今までのイメージを払拭した。アレンジは今様だが、フレーズは伝統に則ったもので、実力のあるブレッカーのアコースティックなジャズは、新主流派から新を消し去った内容に仕上がっている。

 13日にブレッカーが白血病のため亡くなった。グラミー賞11回、日本人アーティストとも共演が多く、参加作品は1000枚以上ともいわれる。ジャズロックと呼ばれたブレッカー・ブラザーズ時代から今日に至るまで多くのジャズファンを増やした違いない。57歳という早すぎる死が惜しまれる。ご冥福をお祈りします。
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スモーカーのスモーキー・ブルース (duke)
2007-01-27 17:53:18
naru さん、こんばんは。

「ヴィレッジ・ヴァンガード」LPで入手されましたか。ジャケットのバックの絵が何とも印象的でしてタイトルバックのピンクと調和しております。
「スモーキー・ブルース」は単調なメロデイを微妙な強弱で変化を付けるところが好いですね。さざなみのような同じキーの連打が堪りません。A面頭のアップテンポの「ループタウン」から、ラストのバラード「ユー・アー・トゥー・ビューティフル」まで聴きどころたっぷりです。

マイケル・フランクスの「スリーピング・ジプシー」は聴いておりますよ。アントニオ・カルロス・ジョビンに捧げた曲が収録されているアルバムですね。この曲はサミー・デイヴィスJr.とローリンド・アルメイダの雰囲気に似ております。
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おくればせながら (naru)
2007-01-26 21:20:04
duke さん こんばんは!ごぶさたしました。本日、「ジュニア・マンス・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード」の中古LPが、届きました。今、聴きながらパソコンに向かっております。ご機嫌ですね!ジュニア・マンスは、「ジュニア」しか持っていなかったので、duke さんのブログをみて、欲しいなあと思ったら、ヤフオクにちょうど、出たんです。国内盤ですが、グッドコンディションの美盤、リーズナブルな価格にも満足!B面頭の「スモーキー・ブルース」思わず、イェーッって声が出ちゃいます!素敵な盤を教えていただき感謝です。マイケル・ブレッカーは、AORのマイケル・フランクスの名作、「スリーピング・ジプシー」での演奏が好きです。最近のでは、パット・メセニーやヴォーカルのジェームス・テイラーなんかと、バラードばかりやっている「バラードと題したヴァーブ盤」を聴き直しております。
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ロングセラー・ブレッカー (duke)
2007-01-26 18:08:48
今週はマイケル・ブレッカーへのレクイエムお寄せ頂きありがとうございました。

ニアネス・オブ・ユー
トゥー・ブロックス・フロム・ジ・エッジ
ライヴ・アット・マッセイホール

ベスト企画ではありませんが、皆さんからご推薦頂いたアルバムです。

何れもアコースティックで、ストレート・アヘッドなものです。
ベストセラーではなくロングセラーで聴かれることを祈っております。
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ジャズ向きの生活 (duke)
2007-01-24 18:56:28
しんじさん、早起きですね。

しんじさんのサイトで「ラプソディ・イン・ブルー」を深く考察しておられますね。末延芳晴さんの同タイトルの本(平凡社刊)によると、「ラプソディ・イン・ブルー」は白人音楽と黒人音楽、さらには芸術音楽とポピュラー音楽のクロスオーヴァーでもあった、と記されております。しんじさんのいわれる「音楽における民族の壁」は厳としてあるのでしょうが、薄くしたのはガーシュインともいえます。ただ当時は所謂上流社会で聴かれていたに過ぎず、それ以外の人はサッチモを聴いていたと思うのですが・・・ポール・ホワイトマンは名前の如く白人社会でしか受け入れられなかったと。

>ジャズ向きの生活

しんじさん→こんな時間に起きてグータラしております
私→真夜中にラウンド・ミッドナイト聴いて散歩に出かけます・・・あっ、これってただの徘徊かもしれません(笑)
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Re:ジャズ向きの声質と性質 (管理人@しんじワールド)
2007-01-24 04:55:17
おはようございます>dukeさん。
夕べは早く寝ちまったもんでこんな時間に起きてグータラしております。コメント見ながら、したりとは思いつつ、このアドリブ帖は相当に辛らつだわいと(笑)。優等生ほどジャズにはあこがれるのですよねぇ。筋金入りのジャズファンにはチャンチャラ可笑しいと云われてもしょうがないっす。

同様に、守旧で間違っているやも知れんのですが、音楽における民族の壁というのは言葉で言われる以上に厳としてあってガーシュインのラプソディ・イン・ブルーのオーケストラ演奏などでも倭国では納得できるものがありません。

そういったあれこれから穐吉敏子さんは奇跡と思っています。

>25-25さん。
>あれだけ吹けるんだから、真正ジャズをもう少しやってほしかったな・・・

>4438milesさん。
>フュージョン花盛りのころ、でも少しは骨のある存在だった。

く~っ、そうなんですか。想像するにおそらく人付き合いの善い方だったんでしょうね。

なんせ、一曲しか聴いてないのに大きなことは言えませんが、これだけのコメントが聞けしかもちょっと自分としては盛り上がってたりするのは先にコメントしましたようにそれが上手というだけでなく、ささくれ立ったジャズ・インプロバイゼーションだったことに尽きるのです。

そして不良中年のdukeさんのいわれる
>ジャズ向きの声質と性質
にジャズ向きの生活ってぇのもあるのかも、プッ。
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その1枚 (duke)
2007-01-22 21:54:53
miyuki さん、こんばんは。

「トゥー・ブロックス・フロム・ジ・エッジ」は60年代の音を思わせる作品で、ブレッカーのインプロヴァイザーとしての一面を聴くことができる内容ですね。

>ロックやポップスしか聴いていない人でも、こういうものがジャズを知るきっかけになるのではないかと思っていました。

記事にありますように同感です。いきなりジャズに入る人はおらずポップス、ロック、クラシックからジャズという泥沼にはまるものです。ブレッカーのファンがマイルスとコルトレーンの追悼盤を聴いてカインドブルーやマイフェバを聴いたかもしれません。1枚のアルバムから音楽観が広がるものです。数年後ジャズの底無し沼にはまる人が増えるとブレッカーも喜んでくれるでしょう。
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それとなく・・・ (duke)
2007-01-22 21:49:49
25-25 さん、こんばんは。

正統派に敬遠されがちなのは、ブレッカー・ブラザーズ、ステップス・アヘッドといったフュージョン路線からくるものでしょう。私もその一人ですが、それとなく真正ジャズに近づくにつれ侮れない存在でした。

「Two Block From The Edge」はアコースティックで臨んだ作品でして、ピアノのジョーイ・カルデラッツォの好演が光ります。ブランフォード・マルサリスとも共演しておりますが逸材です。ブレッカーは私もそう多くは聴いておりませんが、ストレート・アヘッドのものでは、記事で取り上げたマッセイ・ホールのライブ盤と「ニアネス・オブ・ユー」というバラード集でしょうか。こちらは輸入盤を買わないように・・・日本盤はボーナス・トラック「セイ・イット」が収録されております。つい聴き比べたくなりますよ。
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たった1枚だけですが (miyuki)
2007-01-22 20:19:50
マイケル・ブレッカーはあまり聞いたことがなくて、持っているのは「トゥー・ブロックス・フロム・ジ・エッジ」だけです。

バップが好きな私ですが、これは悪くないなあ、と思っています。モードを取り入れた演奏で、覇気があるなあ、と思いました。

ロックやポップスしか聴いていない人でも、こういうものがジャズを知るきっかけになるのではないかと思っていました。
そういう意味では、亡くなってしまったのは本当に残念なことだと思います。
ご冥福をお祈りします。
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なんとなく・・・ (25-25)
2007-01-22 20:17:12
スルーしているうちに、亡くなってしまいました、
マイケル・ブレッカー。

僕は、彼のリーダー作というと、
「Two Block From The Edge」しか、知りません。
それとて、友人からいただいたCD-○です。

あれだけ吹けるんだから、真正ジャズをもう少し
やってほしかったな、というのが偽らざる心境です。

ストレート・アヘッドなものでお薦めを
教えてください。


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ブレッカーの功績 (duke)
2007-01-22 19:09:00
4438miles さん、こんばんは。

私はブレッカー・ブラザーズから聴いておりますが、この時はロックバンドだと決めつけていました。ステップス・アヘッドは、あぁフュージョンか、ブレッカーは何者かと思いましたよ。ようやく正体が見えたのは「ニアネス・オブ・ユー」のややコルトレーンに近いスタイルからでしょうか。ジャズロックにせよ、フュージョンにせよ、ブレッカーから聴きだして本格的にジャズを聴いた方は多いはずです。ジャズファンを増やした功績は大きいですね。

生で聴けなかったのは残念です。
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ジャズ向きの声質と性質 (duke)
2007-01-22 19:03:46
しんじさん、こんばんは。

森山良子さんとブレッカーの米ブルーノート共演はNHKテレビで放映され観ましたが、ブレッカーのサポートの上手さに驚きました。私は森山さんのフォークは好きですが、あの美しい声はジャズには向いていませんね。声楽家のバーバラ・ヘンドリックスとモンティ・アレキサンダーのモントルー・ライブ盤があります。「エリントンに捧ぐ」というタイトルでしたので、エリントン・ファンの私は即買いしましたが、ジャズになっておらんのですよ。発声法の違いと声質によるものでしょうが、ジャズに不向きな声があることを知りました。やっぱりジャズは優等生ではなく不良でなければ表現できないのでしょう。聴く私は勿論不良中年です。
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ブレッカーの方向性 (duke)
2007-01-22 18:59:24
KAMI さん、こんばんは。

昨年1月は本田竹広さんの訃報記事、今年もまた1月にこの記事になってしまいました。遺されたアルバムで在りし日の姿を思い浮かべるのはつらいものです。

シルバーで復帰したシルバーの「ザ・ハードバップ・グランドポップ」は私も聴きました。シルバーらしい内容で楽しめましたね。これを聴くとシルバーとブレッカーの音楽性が似ていることに気付きます。ブレッカーがシルバーのグループに加わっていたら、ブレッカーの方向性もまた違ったものになっていたかもしれません。ランディが2作ほどシルバーのグループで吹いておりますが、これもなかなかのものでした。

政界では40、50は洟垂れ小僧といいます。高齢化社会ですのでジャズ界も同じことがいえます。豊富な音楽体験から円熟するのですから57歳は早すぎました。
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残念な逝去 (4438miles)
2007-01-22 16:09:02
僕はマイケル・ブレッカーはステップス アヘッドで聴き始めた。フュージョン花盛りのころ、でも少しは骨のある存在だった。
CDよりむしろ生を聴いた方が多いかもしれない。
夜な夜な、今は無い旧ボディーアンドソウルで飛び入りで吹いていたブレッカーの音が耳に残っている。
これからもっと聴きたい人だった。残念です。
合掌
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マイケル・ブレッカー (管理人@しんじワールド)
2007-01-22 02:08:56
こんばんは。ブレッカー逝去をカーラジオの森山良子さんの番組で知り、そして追悼に彼が参加してくれたという彼女のアルバムからジャズナンバーを流してくれていました。彼が活躍し始めた頃にはもうジャズを聴いていなかったので名前くらいしか知らなかったのですがそのとき流れたス・ワンダフルを聴いて驚いたなぁ。あふれ出るアドリブはまさに自分があこがれて止まなかったパーカーのモダンジャズそのものでした。参加アルバム1000枚以上というのも十分納得できます。
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また逝ってしまった (KAMI)
2007-01-21 22:17:09
duke様、こんばんは。
ジャズメンの訃報が続き、少々落ち込んでいます。
マイケル・ブレッカーは、至上の愛以前のトレーンのやっていた事を発展させようとしていたのではと思っています。
でも道半ばで倒れてしまいました。円熟の境地に達するまで見届けたかったのに残念です。

私も「ライヴ・アット・マッセイホール」は気に入っています。ライブに強いマイケルの実力を示していると思います。
後は、トレーンの「バラード」と「アンド・ジョニー・ハートマン」を意識して作ったと思われる「ニアネス・オブ・ユー」も好きです。もう少し枯れた味が出ていればもっと良いのですが・・・。
意外なところでは、ホレス・シルバーの「ザ・ハードバップ・グランドポップ」。これは単純に楽しめるアルバムです。

でも本当に早すぎる死ですね。

合掌
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フュージョン志向 (duke)
2007-01-21 18:36:54
nobu さん、ご無沙汰しております。

ブレッカー・ブラザーズ、ステップス・アヘッドはフュージョンの典型でしょうか。ジャズ、ロック、ファンクをミックスしたクロスオーバーはノリで聴くぶんには楽しいのですが、鑑賞用とはいかずレコード棚の奥に眠ったままです。「ニアネス・オブ・ユー」はコルトレーンを意識しているのでしょうか、フュージョンのブレッカーとは思えないバラードで聴かせます。「セイ・イット」は日本盤だけのボーナス・トラックというのがいかにもという感じですね。

書店「ヴィレッジ・ヴァンガード」は京都にもありますので是非寄ってください。フュージョン志向の店で、思考がクロスオーバーします。(笑)

>今年また[100 GOLD FINGERS ]があります

問い 10台のピアノを何人で調律するのでしょうか
答え 10 GOLD TUNERS
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マイケル・ブレッカー残念 (nobu)
2007-01-21 09:43:17
おはようございます。ご無沙汰しております。
先週も書店「ヴィレッジ・ヴァンガード」及びジュニア・マンスの紹介ありがとうございました。そういう本屋とは初めて知りました。ジュニア・マンスも好きなピアニストです。が常連の皆様の知識に圧倒され、書き込みできませんでした。今年また[100 GOLD FINGERS ]がありますが、久しぶり行こうかな。

さてマイケル・ブレッカーですが、僕はフュージョンも好きでしたので、ブレッカー・ブラザース及びステップス・アヘッド[マイケル+マイク・マイニエリ(vib)ドン・グロルニック(p)、エディ・ゴメス(b)、スティーヴ・ガット(dr)]もよく聴いてました。
ソロは『ニアネス・オブ・ユー:ザ・バラード・ブック』が好きです。最後の曲は彼が尊敬してるコルトレーンの「セイ・イット」を吹いてます。あと『ワイド・アングルズ』の最後の曲の無伴奏ソロ「モンクス・ムード」も素敵です。
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遺されたアルバム (duke)
2007-01-21 08:40:59
皆さん、こんにちは。

ブレッカー、そして時を同じくしてアリス・コルトレーンと訃報が続き、ジャズ界も鬼籍に入るビッグネイムが増えてきました。ライブに接することはできませんが、遺されたアルバムで何時でも、何度でも聴けることは幸せなことであります。

記事にありますようにマイケル・ブレッカーは数枚しか聴いておりませんのでベスト企画はできませんが、ブレッカー・ファンのご意見をお待ちしております。また、記事の内容に関わらず今週も沢山のコメントをお寄せください。
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