昨年暮れに亡くなったフレディ・ハバードを2度聴いている。最初は72年にジュニア・クックが参加したクインテットで、次は10年後の女満別空港跡地ジャズ・フェスティバルでエルヴィン・ジョーンズをバックにしていた。10年前と変らぬビッグ・トーン、一音でそれとわかる個性的なヴィブラート、正統派ジャズ・トランペッターの手本となるフレーズ、どれをとっても完成されたものであり、その完成は10年前、いやデビューしたころからの完成であった。
60年にリー・モーガンの後を受けて3管ジャズ・メッセンジャーズの一員になって以来、ブルーノートに残した自己のアルバム、ハンコックやショーターと確立した新主流派時代、そしてVSOP、いつもジャズ・トランペット界の花道を歩いてきたプレイヤーだ。リーダー作とサイド参加作品を合わせるとゆうに100枚を超えるアルバム群は、現代ジャズ史を遡るうえでポイント毎に重要な意味を持っている。ハードバップからモード、フュージョンと変り続けるジャズシーンで常に第一線に立つのは容易ではないが、クリフォード・ブラウン流のよく歌うプレイと豊かなフレーズ、そして何よりも完璧とさえいわれたテクニックがあったからこそであろう。
66年に録音された「バックラッシュ」は、ハバードがジャズ・メッセンジャースから独立後に結成した自身のグループ唯一のアルバムで、タイトル曲は当時流行りのジャズ・ロックと呼ばれた作品だ。ジャズ・ロックのアルバムといえば全曲8ビートになりがちだが、このアルバムはボサノヴァを入れたり、美しいメロディを持つ「リトル・サンフラワー」も収録した意欲的な作品になっている。優秀な作曲家としてのハバードを聴くことができるし、カテゴリーに囚われない柔軟な音楽性も知ることができるだろう。トランペットという楽器の機能を最大限に生かした抑制の効いたハーフ・ヴァルヴや切れ味の鋭いハイトーンは、多くのトランペッターが模倣するも誰一人ハバードを超えたプレイヤーはいない。
バックラッシュとは機械用語で、ねじや歯車の運動方向に意図して設けられた隙間をいう。この隙間によってねじや歯車が自由に動くことができるのだが、ハバードはハードバップとモードの歯数の違う歯車を安定したスピードで回し、その隙間を自由に歩んだ人である。享年70歳。合掌。
60年にリー・モーガンの後を受けて3管ジャズ・メッセンジャーズの一員になって以来、ブルーノートに残した自己のアルバム、ハンコックやショーターと確立した新主流派時代、そしてVSOP、いつもジャズ・トランペット界の花道を歩いてきたプレイヤーだ。リーダー作とサイド参加作品を合わせるとゆうに100枚を超えるアルバム群は、現代ジャズ史を遡るうえでポイント毎に重要な意味を持っている。ハードバップからモード、フュージョンと変り続けるジャズシーンで常に第一線に立つのは容易ではないが、クリフォード・ブラウン流のよく歌うプレイと豊かなフレーズ、そして何よりも完璧とさえいわれたテクニックがあったからこそであろう。
66年に録音された「バックラッシュ」は、ハバードがジャズ・メッセンジャースから独立後に結成した自身のグループ唯一のアルバムで、タイトル曲は当時流行りのジャズ・ロックと呼ばれた作品だ。ジャズ・ロックのアルバムといえば全曲8ビートになりがちだが、このアルバムはボサノヴァを入れたり、美しいメロディを持つ「リトル・サンフラワー」も収録した意欲的な作品になっている。優秀な作曲家としてのハバードを聴くことができるし、カテゴリーに囚われない柔軟な音楽性も知ることができるだろう。トランペットという楽器の機能を最大限に生かした抑制の効いたハーフ・ヴァルヴや切れ味の鋭いハイトーンは、多くのトランペッターが模倣するも誰一人ハバードを超えたプレイヤーはいない。
バックラッシュとは機械用語で、ねじや歯車の運動方向に意図して設けられた隙間をいう。この隙間によってねじや歯車が自由に動くことができるのだが、ハバードはハードバップとモードの歯数の違う歯車を安定したスピードで回し、その隙間を自由に歩んだ人である。享年70歳。合掌。
ジャズの一時代を築いたフレディ・ハバードが亡くなりました。メッセンジャーズからVSOP、CTI時代まで素晴らしい作品を数多く残しております。今週はハバードのお気に入りのアルバムをお寄せください。
管理人 Freddie Hubbard Best 3
Breaking Point (Blue Note)
Backlash (Atlantic)
Red Clay (CTI)
レーベル毎の選出になりましたが、どの時代も甲乙付け難い作品が並びますので、何が挙げられるのか楽しみです。
今週もたくさんのコメントをお待ちしております。
↓
①「Breaking Point」(BN)
新主流派の旗手フレディの、まさに「上げ潮」の時期('64年)に
録音された秀作。僕はこれが一番ですね。
基本的にはオーソドックスなスタイルを踏襲しつつも、モーダルな雰囲気を
存分に醸し出していて、今聴いてもとても新鮮です。
ジェームズ・スポールディング(as,fl)、ロニー・マシューズ(p)、
エディ・カーン(b)、ジョー・チェンバース(ds)と、サイドも
当時の新進気鋭の連中ばかり。
エディ・カーンって、マクリーンのOne Step Beyond のベーシスト
でしたかね?
②「Red Clay」(CTI)
'70年の作品で、全曲フレディのオリジナルという意欲作。
サイドは、ジョー・ヘンダーソン(ts)、
ハービー・ハンコック(el-p)、ロン・カーター(b)、レニー・ホワイト(ds).
ハンコックのエレ・ピは、もちろん当時としては
斬新だったでしょうが、今聴くと曲によっては
アコースティックの方が良かったかな?と思うものもあります。
③「Out Post」(Enja)
うーん、だれからも挙がりませんでしたね。
70年代後半に、中途半端にフュージョン・アルバム出したりして
「それ、違うんじゃない?」なんて思っていた矢先の'81年に出た、
メチャStraight Ahead な作品。
それだきに、インパクトが強い。
ケニー・バロン(p)、バスター・ウィリアムズ(b)、アル・フォスター(ds)と
サイドメンも申し分なし。
当時は、「バラの刺青」を聴いていなかったんですが、
今なら、これを3枚目にしてもいいかも。
サイド作品では、
「Undercurrent/ Kenny Drew」や、「処女航海/ Herbie Hancock」
での演奏が、印象に残っていますね。
しかしフレディという人は、話題性という点で、
50年代にはブラウニーやマイルス、
60年代ではモーガン、バード、ドン・チェリー、
70年代に入るとウッディ・ショウやハンニバル、
そして80年代はマルサリスと、
常にライバルの後塵を拝してNo.2 に甘んじている印象を
持つのは、私だけでしょうか?
マルサリスが飛ぶ鳥を落とす勢いだったころ、
ロリンズが「フレディだって、悪くないぜ。」と、
チクリを寸評していたのを、よく覚えています。
暮れにとどいたフレディ・ハバードの訃報・・・悲しいものがあります。
ロールコールで初めてハバードを聴き、イカシテルなと思った事を思い出しました。
ハバードはどのアルバムも良い出来なので3枚選ぶのが結構難しいですね。
と言う訳で、得意のエイヤーで・・・
「オープン・セサミ」
「ボディ・アンド・ソウル」
「レッド・クレイ」
ついでにサイドものベスト3
「ロールコール」モブレイ
「スリー・ブラインド・マイス」ブレイキー
「アウト・トゥ・ランチ」ドルフィー
では、では、
私も挙げた「Breaking Point」と「Red Clay」の詳細な内容紹介ありがとうございます。この2枚はハバードを聴くうえで絶対外せないアルバムと思います。前者は「バックラッシュ」にも参加しているジェームズ・スポールディングのホールディングが素晴らしいですね。(笑)エディ・カーンは、マクリーンのOne Step Beyond のベーシストです。
後者はおっしゃるように全曲オリジナルでして、曲作りにも長けているのがよくわかります。ハンコックのエレピは時代性からみると極自然に聴こえますし、「処女航海」で目指した最後の港なのでしょう。
「Out Post」は、おそらくここでも挙がらないでしょう。(笑) You Don't Know What Love Is はよく歌っており基本に帰ったいい演奏ですが、エンヤというレーベルの音がハバードの個性を殺しているように思います。
ご指摘のようにNo.2の印象は免れません。メジャーデビューしたメッセンジャーズが、モーガンの後釜ということもあり、モーガンの天才性とよく比較されました。モーガンのフレーズは閃きがあっても荒削りだとか、ハバードのテクは完璧だが練習のし過ぎでフレーズが固まっている云々、どんなに優れたプレイヤーであっても批判は付きものようです。No.2で如何なる批判があったにせよ、常に第一線に立っていたのは事実です。
ハバードを聴いたのはロールコールが最初でしたか。私は処女航海でした。ジャズを聴き出した高校生のころでしたので、マイルスと違うトランペットの印象は強いですね。
ハバードは駄作がありませんので選ぶのが難しいようですが、初リーダー作「オープン・セサミ」がきましたか。いかにもブルーノートというジャケがいいですし、ティナ・ブルックス作曲のタイトル・ナンバーが強烈でした。
インパルスの「ボディ・アンド・ソウル」は、ブルーノートやアトランティック、CTIというレーベルに隠れたアルバムですが、ドルフィー参加もありホーン・アンサンブルを強調した魅力的な1枚です。ショーター色が強いのが難といえば難ですね。
サイドものベスト3もありがとうございます。それぞれに主役を立て、サイドメンとしての役割を果たした3枚が並びましたが、処女航海がみえませんね。あっ、こちらは主役を食っていました。(笑)
ちょっと大味という印象ですが、好きなトランペッターです。
リーダー作で好きなのは、オープン・セサミだったのですが、最近改めて聴き直したら、ブレーキング・ポイントの方が新鮮で意欲的な感じがして、こちらの方がいいかなあ、なんて思っています。
Breaking Point
Open Sesami
Hub Cap
ハバードはブルーノートでリーダー作はもとより、サイドメンとしても八面六臂の大活躍をしておりますね。60年代ブルーノートの顔ですし、4000番台の名アルバムには必ずハバードがクレジットされております。
そのブルーノート盤が3枚並びましたが、トップが私と同じブレーキング・ポイントとは今年も気が合いそうですね。「Hub Cap」は久しく聴いておりませんが、ジミー・ヒースやフィリー・ジョーも好演でした。ブルーノート盤はジャケで見ると少年ですが、完成された技巧に驚きます。
薔薇の刺青
Red Clay (CTI)
以上三点です。
特に薔薇の刺青はハーマンミュートの妙が聴け、亡くなった事を知った年末にはこれを先ず聴きました。
1963年1月、j&Mが二度目の来日をしました。
当然、行きました、サンケイホールの最前席!
幕が開いて驚いた、三管編成の大迫力で始まった、「SUMIT」。
ハーバート+ショーター+フラーが三人並んでいるのですよ!
特にハーバートの切れ味鋭いペットとショーターの低音の迫力、フラーの音の大きさ・・・今でも蘇ります。
ハーバートのサイドものとしては、スリー・ブラインド・マイス・・・のブルームーンは一世一代の名演。
アウト・トゥ・ランチのドロフィーとのコントラスト、オレのトレーンとの対比・・・どれもハーバート無しには考えられないもの・・。
CTIに移籍後もカリフォルニア・コンサートでの存在感、VSOPでの斬新な音楽観・・・ハーバートは単なるバッパーでは無い、ファンキーから前衛までの大きな自分の世界観をもったアーティストであったと思うのです。
ハバードの代表作でもありブルーノートを象徴する Breaking Point に続いて、25-25 さんも挙げられた「バラの刺青」がきましたね。いつもオープントランペットで豪快に吹いているハバードですが、全編ミュートでバラードを歌い上げた作品は円熟の極みを感じさせます。「星に願いを」や「タイム・アフター・タイム」、お馴染みの選曲は長いジャズ人生をスタンダードに託し原点回帰したものでしょう。ケニー・バロンの好演も光ります。
伝説の1963年三管メッセンジャーズの来日公園を聴いているのは凄いですね。その迫力たるや想像もつきませんが、おそらくサンケイホールも波動で揺れたことでしょう。万一の場合、最前席ですと避難するのが大変です。あっ、野外ライブで雷が鳴ってもひとりで聴いていた方ですから、そんな心配は無用でした。(笑)
サイドもので挙げられた「アウト・トゥ・ランチ」や「オレ」の前衛志向も自然発生的なもので、ドルフィーやトレーンにひけをとりません。むしろオレの出番だという意気込みさえ感じます。(笑)
どれにしようかと迷いつつ個人的なところも加えて
①Breking Point (Blue Note)
②Red Clay (CTI)
③Blue Sprits (Blue Note)
③だけ個人的嗜好でいれました。
斑尾高原のジャズフェスで聴いたハバードの音は山の中に吸い込まれるようで美しかったです。いろんなスタイルに対応できた巨人だと思いますが、基本の音が本当素晴らしかったです。そのときの「ミスティ」はいまも思い出されます。