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デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

Jアラートが鳴ったとき、Lou Takes Off のジャケットが浮かんだ

2017-10-08 09:36:16 | Weblog
 「テポドン」や「ノドン」、「北極星」といった将軍様の玩具ではない。Jアラートが鳴る昨今、何かとニュースで目にするものだから、ついこのジャケットもミサイルに結びつくが、1957年に打ち上げに成功した人工衛星スプートニクである。宇宙開発、即ちミサイル研究のリーダーと信じていたアメリカが、ソ連に先を越された衝撃と危機感から「スプートニク・ショック」という言葉も生まれた程の歴史的快挙だった。

 ルー・ドナルドソンの「Lou Takes Off」は、この人類初の人工衛星からヒントを得たアルバムだ。ルーといえばアーゴ盤や「Alligator Bogaloo」、「Midnight Creeper」のポップス・ヒットで硬派のジャズファンからはB級扱いされている。また、60年代中期のソウル・ジャズへの路線変更後のレコードは一切置かないというジャズ喫茶も珍しくなかった。だが、54年にバードランドでクリフォード・ブラウンと繰り広げた「ハード・バップの幕開け」と呼ばれるパーカー直系の熱いソロは一級品と誰しも認めるところだ。このアルバムはそのスタイルに磨きをかけアルトサックス界を牽引していた57年の作品である。

 ドナルド・バードとカーティス・フラーをフロントに据えたブルーノートお得意の3管編成で、ゴリゴリ感を前面に出した好作品だ。ルーの自作曲「Sputnik」と「Strollin' In」に加え「Dewey Square」と「Groovin' High」というパーカー・ナンバーを入れていることからも「パーカーより他に神はなし」という姿勢がみえる。圧巻は急速調のバップナンバー「Groovin' High」で、お馴染みのテーマから抜け出すルーのソロの美しいことこの上ない。続くバードとフラー、そしてソニー・クラークのソロも何気ない中に閃きがあるし、ジョージ・ジョイナーとアート・テイラーのメリハリあるバックキングも気持ちがいい。

 暗殺を恐れ同じ形の寝室を複数作ったスターリンをはじめ、地下壕で自殺したヒトラー、毒殺された後、古タイヤと一緒に焼かれたポル・ポト、絞首刑になったフセイン、殺害後、生存説を払拭するために遺体が一般公開されたカダフィー大佐、何の影響力も効力のない命令書を書き続けたアントニオ・サラザール、葬列は群衆のブーイングを浴び、棺に唾を吐きかけられたレオポルド2世等々、独裁者の末路はみえている。