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デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

ニカの夢、栗山監督の正夢

2012-10-07 08:21:44 | Weblog
 北海道日本ハムファイターズが3年ぶり6度目となるリーグ優勝を決めた。優勝どころかAクラスすら予想した解説者が一人もいなかっただけにファンの喜びは倍増だ。斎藤佑樹を開幕投手に指名したり、打てない中田翔を4番に固定したり、リリーフを出したばかりに負け試合になったりと、指導者経験のない栗山英樹監督には批判もあったが、就任1年目の優勝で采配に間違いがないことを証明した。

 その監督の座右の銘は「夢は正夢」だが、ジャズの楽曲で夢といえば「ニカの夢」を思い出す。ホレス・シルヴァーが56年に書いた曲で、モンクの「パノニカ」やジジ・グライスの「ニカズ・テンポ」と同じくジャズ界のパトロンとして知られるニカ男爵夫人に捧げたものだ。世界的な大富豪であるロスチャイルド家の一族ということもあって生活に不自由がなかった夫人だが、大金持には小生のような貧乏人には想像もつかない窮屈や退屈があったようで、それを満たしてくれたのがジャズだと語っていた。ニカはミュージシャンから3つの願いを聞いているが、それを叶えるのが夢だったのかもしれない。

 ニカが抱いた夢のように大きなスケールを持った曲で、シルヴァー自身が詞を付けたものをディー・ディー・ブリッジウォーターが歌うほどメロディアスでもある。初演はシルヴァーが参加したジャズ・メッセンジャーズのアルバムになるが、以降多くのカヴァーが生まれた。なかでもメロディの美しさを前面に押し出したのはカル・ジェイダーで、ライトハウスのライブながら完成度は高い。ジェイダーといえばウエストコースト・ジャズにラテン・リズムを強調したスタイルで一般市場に受けたことからコマーシャルのイメージが強いが、ヴァイヴ奏者としても一流でここでも華麗なマレットさばきが見られる。

 「北海道が一番になりました」と熱く語った新人監督にはまだ日本シリーズ制覇という大きな夢が残っている。それは2004年に巨人ファンしかいないと言われた北海道に本拠地を移転して以来、応援してきた北海道のファンの夢でもあるだろう。そういえば家人が優勝記念セールや感動ありがとうセールの紙袋を抱えて嬉しそうにしていた。野球のルールを知らない人にまで栗山監督は夢を与えてくれた。