デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

限りなく響くマックス・ローチのドラム

2007-08-19 07:33:24 | Weblog
 一、十、百から始まる数の単位は果てしなく続き、どなたが考えたのかは知らぬが、10の64乗が不可思議、68乗は無量大数という。せいぜい財布の中は万であり、その上の億、兆となると数字の上では理解できても現実的でないだけに、その単位に円が付いても桁違いというものだ。数は全く不可思議な世界で単位は無限に続いている。

 無限とは限りがないことだが、「限りなきドラム」というマックス・ローチのアルバムがある。ドラムはリズム楽器だと思っていたが、このアルバムの「ドラム・オルソー・ワルツ」という無伴奏ドラム・ソロではメロディ楽器の機能をも発揮しているのだ。時に優しく、時に激しく、起伏のある展開はコンボ演奏のドラムのソロパートで、素晴らしいものを幾つも聴いているが、それはアドリブとして発展したリズムであり、メロディまでは刻んでいない。この曲は実験的な作品なのだろうが確実にメロディックな響が聴こえる。

 モダンジャズ・ドラムの開祖とも言われるローチは、パーカーをはじめマイルス、クリフォード・ブラウンというビッグネイムが話題になる度必ずその名が挙がる。そして今でこそ珍しくないジャズワルツなのだが、最初に4分の3拍子でスウィングできることを示したのもローチであった。音楽に政治的主張を持ち込むのには異論があるものの、黒人開放運動に呼応する「ウィ・インシスト」でプロテスト・ジャズを拡大したのもまたローチである。限りないジャズの発展を実践した数少ないドラマーであろう。

 15日、ローチが83歳で亡くなった。嘗ての盟友ディジー・ガレスピー、バド・パウエル、チャーリー・ミンガス、そしてパーカーとまた限りないセッションをやるのだろうか。マッセイホールのように・・・合掌。
コメント (21)
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