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デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

世界は日の出を待っている

2007-01-07 07:51:32 | Weblog
 あけましておめでとうございます。昨年は多くの方にご覧頂き、またコメントも多数お寄せ頂き楽しい1年でした。2年目に入ったアドリブ帖ですが、今年も毎週日曜日更新を目標にしておりますので引き続きご覧頂ければ幸いです。

 ここ数十年、年明けの音出しは「世界は日の出を待っている」に決めている。レス・ポール&メリー・フォードのヒットで知られるこの曲の決定的名演は、ジョージ・ルイスの「ジャズ・アット・オハイオ・ユニオン」に収められていて、「マレロのサンライズ」と呼ばれているものだ。ニュー・オーリンズ・ジャズに欠かせないバンジョーをそう多くは聴いていないが、ローレンス・マレロの6分を超えるバンジョーソロを上回る演奏には出会ったことがない。2枚組のアルバムとはいえ、この一曲、いやこのソロを聴くだけでも傍に置いておく価値がある。

 このアルバムは54年のオハイオ州立大学のライブ盤で、ディスク・ジョッキーという海賊まがいのレーベルで発売された。真偽は定かではないが、隠し録りされたとも云われ、何らかのトラブルで発売後2ヶ月でシュワンのカタログから消えている。当然発売枚数は少なく、100セットを超すと税金の対象になることからオリジナル・プレスは100セット以下ともいわれている超が付く幻の名盤である。日本に入ってきている枚数は僅かで、コレクター間では誰が持っているかに就いては詳細な情報が交換されていたという。

 ニュー・オーリンズ・ジャズに造詣が深い河野隆次さんの尽力によって徳間音楽工業から再発されたのは74年のことであった。再発のニュースが流れたとき制作部に、発売したら会社を灰にするぞという脅迫紛いの電話もあったという。オリジナル盤所有者のコレクター心理も分からぬわけではないが、名演は広く聴かれて初めて名盤になる。20年間、マレロのサンライズは陽の目を待っていた。